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桜の雨で卒業を(8)

せっかくの自分たちが祝ってもらえた気分の一日が、

重たい雰囲気のままで終わってしまった。そんな土曜日。

もはや話し合う余地なし。そんな感じで子ども達とさよならをした。

職員室に降りると、僕以外の先生はもう学級を放課していて、

待ってくれていた同学年の先生と一緒に、

在校生の担任の先生方にお礼を伝えに行き、

6年生が書いたメッセージを、週明けに届けさせてもらう了解を頂いた。

その後、職員室で、子ども達の最後の通信簿の所見の直しをして

仕事についていると、「ととろん先生に用があってきました。」

と、Rさんが職員室を訪ねてきたのだった。

時間はもう12時半、放課から30分以上過ぎている。

土曜日は時間厳守で放課させることとなっていたので、

管理職の先生に「すみません、すぐ帰します。」と、

頭を下げてから、職員室から出た。

いたのはRさんだけでなく、Rさんといつも仲良しの4人の女子だった。

MさんとⅠさんとKさんも一緒に、外で待っている。

「今日ははよ帰らんといかんよって言ってたやろ。」

「ととろん、どうしても言いたいことがある。」

「なんね、聞くからどうぞ。」

「ととろん・・・ととろん先生。私たちに桜の計画をさせてください。」

Rさんが真っ直ぐにこちらの目を視て思いをぶつけてくる。

「それは、もう無理だって言ったが、わかった。思いを聞かせて。」

「ととろんは、私たちの担任になってからずっと、私たちを一番に考えてくれているんでしょ?」

「そうだよ。間違いなく。」

「じゃあ、その私たちが、やりたいと言っているのに、ここまで頑固にやらないっていうのは、間違ってると思う。」

「そうだね。僕の6の1の子がRさんだけなら、Rさんの言っていることは正しい。でもさ、今日の送る会の振り返りの時間、お礼のメッセージですら、あんなふうにふざけるものが出る。そんなあの子も6の1なのよ。で、この桜の雨計画だってさ、Rさん以外は、どうでもいいくらいにしか思っていないと思うのよね。」

「そんなことないよ。そんなことない。」

Rさんがそう言うと、Mさん、Ⅰさん、Kさんも、

「私たちもやりたいです。」

と、かぶせるように思いを伝えに来た。

「ととろんが教室から降りてからも、TもOもSも、みんな悔しそうにして帰って行ったんよ。私たちがととろんの提案してくれたことを楽しまなかったことなんてないのに、なんで今回はそんなにやらせないっていうのよ。」

もうまさに、Rさんの言うとおりだった。

Rさんは、6の1の女番長のような立ち位置でみんなに一目置かれていて、

僕にも、「きもいんだけど。」とかツンツンした態度も取るけど、

僕としてはそのツンツンも可愛くて、いじってしまうので、

「私を可愛いとか言うな!」ともう、いつも僕に対しては、

ツンツンしかしない感じなのだけれど、

他の子達よりもずっと、友達への情が深く、気配りができて、

年下にも優しく、周りへの思いやりがある子なのだ。

そんなRさんの見立ては、まさに的を得ていて、

僕がなぜこんなに、頑なにやらせないと言い続けるかは、

この八か月の僕の振る舞いを考えれば、矛盾している点があるのだ。

そこまで見抜くRさんに、もう脱帽な想いを隠しながら、

僕は、自分の思いを口にした。

「最後の日にみんなで楽しめることを、この計画の成功として、先生は望んでいます。だからね。みんながやる気であることが、先生に伝わらない限りは、この計画はやりません。」

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