みんなで楽しむことは、実はけっこう難しい(13・了)
「先生、でも、今日みんな軍手とか持ってきてないし、大丈夫なんですか?それにこの前の科学クラブで、べっこう飴づくりはしちゃったから材料も足りないんじゃ・・・?」」
科学クラブで活動しているTさんが、尋ねてきた。
「大丈夫だよ。むしろ大丈夫だから、べっこう飴づくりをしようと言ったんだし。じゃあまず科学クラブのTさんたちに、手伝ってもらおうね。」
そう言うと僕は準備室にTさんたちを呼んで材料を教室まで持って行ってもらった。
「え、これ、凄い量あるじゃないですか。こんなに用意していたんですか?」
と、Tさん。手に持ったかごには、科学クラブで使ったべっこう飴セット、
スティックシュガーにアルミのカップ、それからつまようじがぎっしり入っていた。
「うん、これだけで300人分くらいはあるからね。」
自信満々の顔で僕がニヤッとすると、
「なんでそんなに用意しているんですか。」
と、Tさんは笑いながら道具を持って行ってくれた。
すっかりサプライズお楽しみ会も楽しむモードで協力体制が整っている6の4の子ども達は、
科学クラブの子達の指示に従って、各テーブルごとにてきぱきと道具の準備を進めている。
カセットコンロに、金網を敷いて、布巾は濡らして冷却用。
横には大きめのビーカーに水を入れて、万が一のやけどなどの時の対策に。
「さぁでは、始めようか。今日はお楽しみ会のサプライズなので、早いとこやっちゃおう。」
そう声をかけると、各グループにいる科学クラブの子達から、他の子達のお手本にやってみせる。
アルミカップの上で小さな山になっている砂糖に、少しだけ水をたらして、
弱火寄りの中火で熱しながら、くるくるとまわしていくと、
砂糖はあっという間に透明の液体上になり、その直後からじわーっとべっこう色に色を変えていく。
「甘いいい匂いだぁ。」
と、あちこちから聞こえてきたところで、
「さ、焦げないうちに引き上げて。」
さっと冷却布巾の上に移動させて、まぜていたつまようじを置いて待つと、
持ち手のついたべっこう飴がおいしそうに出来上がった。
「次、次、俺にさせて。」
「みんなできるから大丈夫だって。」
「Kさん、ちゃんと監督しててよ。俺焦がしたくないから。」
「わかったって。ちゃんと見てるから。」
それぞれのグループでそんな会話が聞こえてくる。喜んでくれているようだ。
しばらくすると、
「先生、もう一個作りたいです。だめですか?」
と、ちょっと焦げた色になって苦みのあるカラメル飴になってしまった子たちが、
切なそうに声をかけてきた。
「お楽しみ会で楽しめないのは一番悲しいからね。じゃあその焦げた飴と交換で、させてあげよう。」
そう言うと、子ども達、わーいと喜びの声をあげて、二回目の材料を交換していく。
「ちょ、Yくんは失敗してないやろ。」
「失敗しました、しました。」
と飴をもぐもぐさせながら、しれっと並んで二回目をしている子も出てきて、
結局一人二回ずつのべっこう飴づくり(失敗した子は3回チャレンジ)になったが、
子ども達に喜んでもらえた、少し早めのクリスマスプレゼントになったようだった。
まぁいいか、この子達の素敵なお楽しみ会を見せてもらえたし。
焦げたべっこう飴をかじりながら、子ども達の楽しそうな今の状況が、
僕へのクリスマスプレゼントだなと感じたのだった。