クラス全員で節分鬼祭り(3)
「ととろん、これなん?」
「みたまんまさ、鬼グッズです。」
「いやいやいやいや、これどうするの?」
「これを君ら6人が着て鬼になって、節分の日の5時間目に1年生のクラスに行ってもらいます。」
「まじかぁ!え、、、まじか!?」
「いや、無理無理無理無理。できないできない。」
「できないじゃなくて、罰なのでやってもらう。拒否権はない。」
「うわ、出たよ。こんなのいやだし。」
「あ、でもととろん先生、これ1セットしかないやん。誰か一人来たら他の人できんやん。」
「そこは大丈夫だよ。ほら。」
紙袋に残っていた6人分のセットを、全部出していくと・・・・
「ヤバ、これマジのやつやん。」
「これどうしたの?先生買ったん?」
後ろにいたクラスの全員がざわざわざわざわ、
「ということで、まず、この全身タイツを着て・・・」
どっと笑いが起きる。6人はもうやるしかないんかとがっくり肩を落とす。
「いやもう、まじでこれ最初からやらせる気のやつやん」
「はめられた!はめられた!」
騒ぐ6人、クラスの友達からは大盛り上がりで、引き下がれない雰囲気。
「ということで、まずはこれそれぞれ自分のつける分を選んで。」
どうぞどうぞと彼らの前にグッズを差し出すと、
6種類違うお面の中からそれぞれこれがいいかなというのを選び、
タイツの色を選び、寅柄のトランクスを手に取る。
「よし、まずは着替えておいで。」
うへぇ、という顔で文句を言いながら、隣の校舎の角の図工室で着替える。
そして戻ってきて、またクラスの子達は爆笑で。
もうすっかり着ているのに、
「やっぱ無理だぁ。」
とはいうものの、6人で着てみて、まんざらでもなさそう。
こういう時に6の1が素敵なのが、残りの30人が
「似合っとる!いいやん!」
と盛り上げてくれるところだ。
「さて、来てみたところで、今日からのスケジュールだけど。」
「どういうこと?」
「うん、盛り上げるための鬼がただ騒ぎ倒して、怪我やら物が壊れたりやらしたら困る。なので今日から休み時間には、図工室で毎日鬼のふるまいの練習です。」
「ちょ、じゃあ昼休み遊べんやん。」
「1週間以上、練習なん?マジか…。」
「いや、そうはいうけどね。ととろん的には10日しかない、ギリギリとおもってるんよ。」
「え、だって鬼でしょ?」
「鬼を馬鹿にしてたら大変なことになるからね。じゃあ、鬼の鉄則を言っておくよ。まず第1に。」
「そんなのあるんか!」
「あるある。まず第1に一年生が全員泣くように頑張る。いつも可愛がっている一年生だと気持ちは揺らぐかもだけど、しっかり一年生を必死にさせる事。次に暴れるけど物は絶対に壊さない。そして最後に、これが一番大事だけど、誰もケガをしないように気を付ける。一年生も自分たちも絶対ケガをしないように暴れるにはどうしたらいいか、毎日動きを練習するからね。」
6人とも鬼の格好で真剣に聞いている。
たしかに、難しいミッションだ。暴れて泣かすけど、ケガはさせない。
ノリだけでやっていい事ではないな。
そんなスイッチの切り替えをすぐにしてくれた顔になっていた。
その話を6人以外の全員も聞いている。
「さぁ、そうと決まれば、今日の昼休みから、練習するからね。」
するとN君
「ちょっと、楽しみになってきた。」
同調するように、残りの5人も、真剣な表情に笑顔を含ませた。