夏空に元気一杯のPLAYBALL(1)
「じゃあ先生、30日の試合の応援楽しみにしてます。。」
そういうと、Yくんは教室を飛び出すように下校した。1学期の終業式。
何かというと、少年野球の、夏の大会が始まるのだという。
始まりは数日前のお昼休み、みんなの夏休みの予定を聞きながら過ごしていた時だった。
「私は、塾の夏合宿で大分に行くよ。」
「僕は、長崎のおばあちゃんちに家族で行きます。」
という県外イベント派もいれば、
「市民プールに行って毎日プールで遊ぶよね。」
「え、毎日いくん?!いいなぁ。ときどき一緒に行っていい?」
「いいよいいよ、プールは私のものじゃないし。一緒に行こう。」
という、自転車で行ける距離で楽しむ派もいれば、
「花火大会が楽しみ。今年は3つは花火大会に行く予定なんよね。」
「芦屋と、洞海湾と、関門海峡で三つやね。」
など、夏ならではのイベント待ち遠しい派もいる。
そんな中で、一番お祭りが好きそうなYくんに話を振ると、
以外にもイベントごとやお出かけでなく、打ち込んでいる少年野球のことを話してくれたのだ。
「小学校生活最後の夏だから、何としても優勝したいんですよ。」
いつもはどこかお調子者のYくんだが、野球の話になるとキリっとした真剣な眼差しになっている。
「おおお、がんばれ。応援してるぞ。」
と反応すると、にかっと笑って「はい!」と気持ちの良い返事が返ってくる。
「で、実際はどうなの?優勝はいけそうなの?」
と尋ねると、Yくんのチームは優勝候補の一つになるほど強豪チームなのだそうだ。
同学年の他クラスにも、チームメイトはいるようで、
主力の6年生がスタメンのほとんどのポジションを埋めている程に、
Yくんの世代は、6年間の集大成になっているようなメンバー構成で、
春の大会でも、優勝まであと一歩のところまで行ったと言う事だった。
またYくんは、チームのエースで、その年の福岡県の小学六年生の、
最速を投げる記録を持っていると言う事で、
俄然やる気に燃えているのが伝わってきた。
と、そんな風にYくんから話を聞いていると、Mさんが話し始めた。
「そうなんですよ、こいつのチーム、バカ強いから、嫌なんですよ。」
「Mさん何でそんなに嫌なの?」
「だって私のチーム、トーナメントの1回戦がYくんのチームなんです。」
「Mさんも野球してるんだ。え、そしてクラスメイト対決になるん?!」
とちょっとワクワクしてきた僕はさらに聞いてみる。
「はい、もう最悪ですよ。ほんと、Yくんのチームは、ほぼ6年でどこのポジションも穴がないし、そもそもこいつ(Yくん)の球、うつのが大変だし。もう最悪なんです。」
とMさんがぼやくと、Yくんも
「まぁ、試合は全力勝負だからね。」
と冗談抜きのお返事。
これは面白くなってきた。と、ワクワクしだしたのは、子どもたちでなく、
担任の僕の方だったのだ。