不登校先生 (54)
※今回の54話には、ドラマ【ひきこもり先生】のネタバレが含まれます。ご了解ください。
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のりちゃん先生との久しぶりの電話の中で、
のりちゃん先生にもダビングして送るね、と伝えたドラマがある。
今年の五月ごろにNHKで放送された【ひきこもり先生】というドラマだ。
うつになってから7月まで。ほとんど、エンタメに触れていなかった僕が、
辛うじて、つながって元気を少し取り戻した作品、
音楽『ラブソング(上野大樹さん)』と、
アニメ『スーパーカブ(原作トネ・コーケンさん)』ついては、
以前に触れさせてもらったのだが、
一方で、〈教育〉〈学校〉〈先生〉などのワードの入るものは、
意識して目に入らないように、興味を持たないようにしていた。
そんな中、5月の末、最後の病休申請について考え始めて、
眠れなくなった、誕生日間近の、深夜。
ザッピングしていたら、忘れもしない、忌々しい映像が流れてきた。
「全国すべての小学校、中学校、高等学校、特別支援学校については、
来週3月2日から春休みまで、臨時休業を行うよう要請します。」
あの、何の根拠も示されていないのに、子どもたちから卒業式を奪い、
保護者や、子どもを預かる学童、給食に関わる業者さんなど、
多くの人を巻き込んで、日常をめちゃくちゃにした、
責任を持たない要請の映像が目に飛び込んできた。
ザッピングする手が止まり、観ていると、ドラマ【ひきこもり先生】
最終回の、最後の15分だった。
学校や、教育に関わるものは、観ていなかったが、そのたった15分に
涙を持って行かれたのを覚えていた。その【ひきこもり先生】が、
八月の終わり、のりちゃん先生と電話をする数日前の深夜に、
全5話一挙再放送があったのだった。
最終回のたった15分のラストシーンだけで、込み上げる感情が
涙を必要とせずにはいられなかったそのドラマを全話視聴したい。
その気持ちが、大きくなっていたので、全話視聴しながら、
録画もして観ることができた。
【ひきこもり先生】今の自分がそうだよなと思いながら。
見てみたドラマに一晩中涙を流させられ、
涙が出なくなっても泣きたい気持ちが抑えられず、
終いには、眼の下の頬の部分が痛くてたまらなくなるほどまでに、
心を揺さぶられた。
一人一人の登場人物の心が突き刺さる。宝物のような言葉たちは、
病んだ心の底に洪水のように水を流し込み、
ふたを閉じたような暗闇に、いくつも穴をあけて流れ出て、
僕の心を、流した涙の分だけ、癒してくれた。
中でも、初見で一番響いた言葉は、
佐藤二朗さん演じる主人公の「やきとり」こと上嶋陽平さんが、
先生になった後、もう一度、ひきこもることになり、
そこからまた学校に出勤する気持ちになって学校に来て、
校長先生に言った言葉だった。
「いいえ、無理をします。しなくちゃいけないんです。僕はもう逃げません。僕は子どもたちのために戻ってきました。学校を、子どもたちが安心していられるところにしたいんです。」
穏やかに、でも確たる意思をもって、子どものために戻った上嶋先生。
誰よりも優しく、人が傷つくくらいなら、自分だけが傷ついて、
ひきこもりになった彼の、大きくて穏やかな向き合い方に、
今の自分が小さい人間に感じ、彼の様になって戻りたいと感じ、
自分は、先生という仕事が好きなんだと、再確認させられた。
【ひきこもり先生】は、5話で完結の物語だけど、その全話で、
止めどない涙を、コントロールできないほどだった。
不登校先生になった僕が、
もう一度自分を見つめなおすことができたこのドラマを、
もうしばらく、話してみようと思う。
↓次話
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