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応援団は燃えて萌えて全力で(8)
その日の昼休み、僕も久々の応援団のない昼休みで、
テストの丸付けなど、溜まっている仕事をやっつけておこうと、
こどもたちの出払った教室で、一息ついたところだった。
「ととろん先生、今いいですか?」
いいですよ、と返事をして入り口の方へ目をむけると、
そこには応援団の子たち。赤組も白組も。
「えっと、今日明日は休みだけど、どうした?」
「いや、あのですね、休みなんだけど、休みなんだけど、あと3日しかないし休みたくないというか。」
先日のH君の件もあるし、子ども達も中休みの解散時には、
「やったぁ!」と言っていたので、今日は間違いなく休めるだろう。
僕の方も実は、ここらで一息入れたい。そんな気分だったのだが、
「応援団はもうあと3日で、本番が終わったら一生できないじゃないですか。だからですね。練習したいねって話になって。」
子ども達の気持ちの燃え方は、とどまることを知らないようだった。
「うん、なるほど、その気持ちは一番嬉しい。嬉しいよ。だからこそね、本番で、やり切ったぞ!と思ってもらうためにも、休みも大事かなと思う。けど、、、もう集まっちゃってるもんね。」
ちょっと苦笑いで応える僕だが、子ども達はそれでも!と、下がる気持ちは見えない。
ちょっとだけ考えた僕は、それなら、と切り出した。
「じゃあ、今日の昼休みは、体や声を休めながらの練習にしよう。これを見てごらん。」
そう言って僕は、演技係と用具係のテントにだけ置かれる、
演技配置図を応援団の子ども達の前に拡げて見せた。
「みんなの応援の出番は、開会式後のエール交換、昼食後の応援合戦。大きくその二つしかない。」
みんな食い入るように、頷きながら聞いている。
「でもね、プログラムをよく見ると、運動場の使わないところがあるのよ。演目ごとに。例えば、1・2・3・4年生の競争競技は、運動場の中しか使わなかったりとか。」
「そうですね。でもそれが何かあるんですか。」
「うん、ということはだよ。入場から退場まで、使わない場所がある競技の合間は、応援の場所があるってことなんだよ。」
おおおおと、子ども達。僕が何を言うのかをすかさず掴んだようだった。
「ということは?」
「ということは?」
「応援で盛り上げられるチャンスは2回だけじゃないってことじゃない?」
「ですね!」
「ただ、応援団はそれだけで十分他の子達より活躍のチャンスは多いので、あくまで『応援』で盛り上げる黒子としての頑張り方が大事。だからね。いくつか自分たちでルールは決めよう。例えば、応援は入場が始まるまでの時間でササっと手際よくとか、今から演技、競技で使うところには絶対に入らないとか。」
「それを今から考えるんですね。」
「うん、演技配置図を見ながら、どのプログラムのときにはどんな応援ができるか。それを考えて計画してごらん。」
子ども達の顔には、頑張ってきた応援団が、
もっと楽しくなりそうな予感に、ワクワクした気持ちが表れていた。