みんなで楽しむことは、実はけっこう難しい(10)
「では今からお楽しみ会1日目を始めます。」
わー、と盛り上がる拍手の中、6の4の子たちがいるのは運動場である。
冬休みまであと一週間を切った12月半ばの木曜日、
先取りで掃除を終わらせた担当の子たちがコートを引きながら、
みんなにチーム分けの発表と、ルール説明を行っている。
45分間ほぼほぼ楽しむらしく、8分ゲームを4セット、
ゲームの間の休憩は3分ずつで、ドッチボールの内容も、
通常のものと、王様ドッチボールと、サバイバルドッチボール(外野からの戻り無し)とするようだ。
話し合いを十分に行っていた6の4の子ども達のお楽しみ会は、
最終的に、木曜の5時間目と金曜の2時間目、もともと6の4が運動場を使える時間を使っての2分割とまとまって、
金曜の3時間目に学級の中でのお楽しみ会3時間目という構成になった。
どうやら子ども達は、二日にまたいでのお楽しみ会が新鮮だったようで、
「二日もお楽しみ会ができるってなんだか得してるよね。」
「今日も明日も楽しいってのは最高だね。」
と、嬉しさが前面に出ているのが見て取れた。
僕は今回、こうすることもできるよ。というアドバイスを、求められたときには提示したものの、
話し合いの一切は子ども達に委ねた。
子ども達は、自分たちだけが楽しむためのお楽しみ会という視点だけでなく、
学級の全員が楽しむ気持ちになれるためにはどうしたらよいのか、
同じ時期にお楽しみ会などを計画するだろう、他のクラスに迷惑にならない範囲で、
自分たちのやりたい内容を最大限実現するためにはどんな工夫をしたらよいか。
そういったことにまで試案を拡げて、今回のお楽しみ会を計画することができた。
僕は驚きと感心の気持ちで胸いっぱいになっていた。
2学期まで、この子達が最上級生として、委員会活動や学校行事、縦割り活動で、
お兄さんお姉さんとして良い手本としての姿を示している場面は、多く見る事が出来た。
それは責任感を持たざる得ない仕事を任されることで、
その責任に応える働きをするというものだが、そういった仕事を、
緊張感をもって臨む場面での立派さは、本当に素晴らしい。
だが、今回のお楽しみ会は、自分たちで演出する自分たちのための会。
やえもすると、周りのことなどどうでもいい、自分たちが楽しければそれでいい、そういったものになってしまう。
けれどこの子達は、そんな心配はあっさり飛び越えて、
全体のこと、全員のことを忘れることなくこのイベントを実現できたのだ。
そんなこと思っていると、コートの方から声が聞こえてくる。
「Hさん、まだ投げてないやろ。はい。」
Yくんが、取ったボールをHさんに渡す。
Hさんが遠慮がちにボールを受け取る。
女の子タイムに入って、どちらのチームでも、
男の子がボールをキャッチして女の子に渡している。
当たり前にそういったことを楽しめている子ども達に、
本当にすごい事だよな。僕は指揮台に腰を下ろしながら、
改めてこの子たちを、尊敬の気持ちで見つめているのだった。
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