お泊りミッションを成功させろ(2)
「え、本当に?!交流でひとりずつ班に入るとかしなくていいの?」
4月初めに、「学習での交流は一切なし」と言った時と同じくらいの、
大きな衝撃が子ども達に伝わったのが、こちらにもわかった。
なんせ一年前の宿泊学習では、交流クラスでの班活動という名目のもと、
全員が、単独でどこかしらかの班に組み込まれて、
おまけのその班の子達とも普段から仲がいいと言う事などはなく、
嫌ごとを言わないだけ幾分ましだというだけで、
仲良しさんクラスの子ども側からすれば、
心を許せる相手など一人もいない中、長時間過ごさなきゃいけない苦労を、
全員が強く記憶に残している。その上で、宿泊できずに、
夜は家に帰ったのも、この仲間のうちの半分がそうなのだ。
同じ轍を、何にも配慮なく、踏みに行くなどもってのほかだと思った僕は、
夏休みの間に学年の先生、校長先生とも話し合いを重ねて、
引率の業者さんとも打ち合わせして、修学旅行における全工程を、
僕が引率で、子ども達が1グループとして行動させてもらうように、
調整してきたのだった。想いとしては二つある。
一つは、この子達に『修学旅行最高だったね。』と感じるような、
素敵な時間を思い出として残してあげたいという想い。
もう一つは、昨年の宿泊学習で『宿泊なんて無理』と、
経験できなかったことで獲得できなかった『宿泊への自信』を、
この子達に獲得させたいという想い。
この先の見通せる未来、中学校生活でも宿泊学習は毎年組まれてくる。
小学生最後の、この修学旅行で「宿泊は大丈夫」という、
自信を持たせてあげられるかどうかは、
この子達のこれから先の成長に重要なことになってくる。
そんな想いからの今回の提案、もちかけてみると、
なるほど、前段階として6年生になってからは学習の一切を、
うちのクラスでやっている事情なども功を奏したのか、
交流学級の先生方も校長先生も、すんなりと了承してくださった。
また、観光業者が手配していたバスが45人乗りの大きめのだったため、
バスでの移動の際も、全員が同じバスに乗車して移動できる運びとなった。
それらのことを子ども達にも開示したうえで、しっかりと想いを伝える。
「みんなが、宿泊が無理と思ったまんまで、旅行なんか楽しくないと思ったまんまで、卒業なんかさせないから。小学校生活の中で、一番楽しい行事を、みんなが確かに一番楽しかったと思ってもらえるように、やれる限りやるのが、今年みんなの担任になった、先生の仕事だよ。」
子ども達は、うん、うんと頷きながら笑顔で話を受け止めてくれている。
話し終わった後は、さぁ計画だ。
「じゃあ、班の係決めから。やっていこう。」
こうして、子ども達のトラウマになっていた『宿泊』を伴う修学旅行は、
子ども達の楽しみに感じるものに変換されて、
本番当日を迎えることになったのだった。
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