チャレンジは子どもにも大人にも(後)
「机の上の広さだと、ぴったりと型紙と布を合わせられないから、床においてやっていいよ。」
あゆ先生に指示で、教室の中を広く使ってのエプロン作りが始まった。
それぞれ自分の縄張りのように分割しても、
型紙と布を大きく広げてそれでも二人三人分余裕が持てるくらいに、
広い床のスペースが使える。これが8人しかいない学級の強みだ。
今日もこうくんとかいくんは来ていないので、6分割したスペースで、
子ども達はエプロンの型紙に合わせて布を裁断していく。
あゆ先生は安全に気を配りながら、子ども達の進み具合を確認しながら、
1人ずつの活動に寄り添うように活動を進めていく。
十分な広さで合わせた型紙通りに、エプロンの形が切り抜けた。
「じゃあ次は、折り重ねのところだよ。見ててね。」
そういうとあゆ先生、てきぱきと布端を折り重ねたところに、
待ち針を付けていく。さすがしっかり学んだ人は違う。
待ち針ってそういう向きで刺してに使うのか。
気が付けば、僕までじっと見入ってしまった。
「・・・こうすれば、この上を縫うときにも、待ち針の先が当たらないからね。じゃあ、自分でつけてみよう。」
一つ一つの工程を丁寧に、丁寧に、子ども達に伝えていくあゆ先生。
普段から、子ども達に寄り添う姿勢が温かいあゆ先生の学習は、
仲良しさんクラスの子ども達にも、心地よい時間になっているようだ。
そんな中で、6人で進んでいくエプロンの作成は、
あっという間に仮縫いまで終わり、2時間で5時間分くらい進んだ。
それでもまだまだ子どもたちは集中力も関心も高いようで、
「先生今日まだエプロン作りやりたいです。」
と、申し出てきた。
やる気のときが、伸びる時。差し当たって特別な行事などもない。
「じゃあ、今日はもう4時間目までエプロン行っちゃうか。」
そう返すと、子ども達は「やったぁ!」と大喜び。
「あゆ先生は大丈夫?」
と、あゆ先生に尋ねると、ニッコリ笑顔で「大丈夫です。」と返事が来た。
子ども達にも、あゆ先生にも、夢中で楽しいときになっているなら。
「じゃあそうと決まれば、みんなでミシン取りに行こう。」
僕は先ほど持ってきた家庭科室のカギを、あゆ先生に渡して、
「あゆ先生が、子ども達に、いいミシンを選んであげて。」
と言葉をかけた。学校には約30台のミシンがある。
と言っても、通常学級の6年生は、家庭科室でのみミシンの活動を行い、
家庭科室では大体班に2台、多くても13・4台しか使わないので、
内のクラスには一人1台ずつ持って行ってお借りしようというわけだ。
かくして子ども達は、あゆ先生に選んでもらった、
エプロン学習中のマイミシンをゲットして大満足。
大満足はやる気をさらに上げて、ミシンの安全な使い方もしっかりと聞き、
それをずっと口ずさみながら、慎重に丁寧にエプロンを縫い上げていく。
これまでの経験では1か月はかかったエプロン作りは、
あゆ先生の抜群の授業と、やる気MAXになった子ども達によって、
4時間通しの授業と次の2時間の6時間で、見事に完成したのだった。
あっという間に完成させた仲良しさんクラスの子ども達は、
エプロンを付けての調理実習が待ち遠しくてたまらないのだった。