お泊りミッションを成功させろ(4)
1日目は熊本城を見た後太刀洗の特攻基地跡を通って、大分まで行く。
子ども達は思っていた通り、いつものメンバーで散策できることから、
安心して旅を満喫している様子だった。
バスの中でも、後ろの左側の一角に固まって座れたので、
車酔いを心配していた子達も、すっかりリラックスできて、
会話をしているうちにそんな心配もどっかにってしまったように、
元気いっぱいで一日目を過ごしていた。
100人ちょっといるうちの学校の6年生。
もしもこの集団の中で、交流学級の中に班組されて、
各々が孤立状態になっていたら、緊張と不安で上手くいかなかっただろう。
当たり前のことだが、100人の6年生、うちの子達も成長過程だが、
通常学級の子ども達も同じで、初めての修学旅行なことには変わりない。
当然テンションが上がって集団での起立が乱れる場面もあるし、
スタンドプレーで全体が止まることもある。
そういったイレギュラーに、敏感で苦手な仲良しさんクラスの子たち。
もし一人きりにしていたら、きつかっただろうなと思う場面でも、
気心触れた友たち同士6人と僕で固まっているので、
トラブルになる場面もなく、無事に宿泊のホテルに到着した。
泊まるのは、修学旅行の受け入れを長年されている、
「THE温泉地のホテル」といった感じのホテルで、
家族旅行などではなかなか来ないだろう、ひなびた感じの宿だ。
しかし、子ども達にとっては、初の修学旅行でのホテル。
「うおー。布団がふかふかだ。」
「座布団もなんか分厚いのが重なってるよ。」
「先生、台に置いてあるお茶は飲んでいいんですか?」
もう、初めて空間にワクワクが止まらない。
1人女子のまなさんは、おうちの人と本人と、事前に話し合って、
男子部屋の横で、保健の先生の真向かいの部屋で寝ることになっている。
男子のわいわいした感じが壁越しに聞こえたのか、
まなさんも男子部屋を覗きに来る。
「なんか、私の部屋と違うの?」
「いや、まなさんの部屋には俺らは入らんから、わからんけど。お茶セットあった?」
「あったあった、でもああいうのは勝手に触っちゃダメなんでしょ。」
「ととろん先生が、こぼさないように気を付けて飲んでいいよだって。」
「え!でも私一人だから。」
「じゃあ、まなさんも、自由時間は一緒にお茶飲みにおいでよ。」
と、みんなでお泊りにもうワックワクしている。
「先生、男子たちの部屋はいっても・・・。」
真面目なまなさんは、ちょっと心配そうに確認してきた。
「いいよ。男子部屋の向かいは先生だから、扉を開けっぱなしにしておけば先生も見守っていられるから。独りで部屋にいても寂しいもんね。」
そう答えると、「はい!」と、かぶせるようにきた返事とともに、
まなさんは、自分の部屋にあった湯飲みをもって、
隣の部屋にかけこんでいったのだった。