真っ正面から向き合う覚悟はできているか~『やれる限りやる』自分自身が鍛えられた、5の3の子達との綴り語り~(5・了)
「それでは、今年の各学年の配置はこのような形で行きたいと思います。」
新年度初日、異動の挨拶も早々に、各学年の受け持ちについて発表された。
先月末に打診があった通り、僕は真五年生の担任のところに名前があった。
机や、各種道具等の引っ越しがバタバタとはじまる中で、
まず、校長室に呼ばれたのが、5年生の担任を受け持つ3人だった。
「失礼します、よろしくお願いします。」
と校長室に入る。この年の校長室へ入った時の印象ほど、強烈に残っているものはない。
中には自分よりも10以上年配の先輩が座っていたのだが、
リーゼントのビシッと決まったハマの番長のような校長先生、
アントニオ猪木のような鋭い眼光の教務主任の先生、
そして一緒に学年を組むと思われる、
同じタイミングで異動してこられた先生は、ふと腕を硬く組んで鎮座している。
その様は、握りこぶしで何十枚瓦を割れるんだと思わせる格闘家の角田さんのよう。
入室して静かに席に座ったが、内心はドキドキハラハラだった。
沈黙のまま、もう一人の担任の方を待っている間、
(ここは、何だ、アウトレイジ?ハマの番長と猪木さんと角田さんて、もう怖いんだが)
本当は3人とも心底部下想いで、子どもへの愛情も、
教育者としての信念も、指導の技術も最高な先生方だとわかるのは、
仕事が始まってすぐのことなのだが、なんせもうはじめましての第一印象は、
「怖いわ!勝てんわ!」と心の中で突っ込んでしまう状態だった。
最後に入ってきた、明朗な女性の先輩は、気風の良さが感じられる姉御肌の姉さんで、
(これは間違いなく、超アグレッシブな布陣だ)
と思ってしまった。とはいえ、今になって思えば最後に入ってきた女性の先生は、もっと驚いたのかもしれない。
先に述べた3人に加えて、僕は大体大トトロみたいな体型の男なので、
おそらく、番長・レスラー・格闘家に加えて力士までそろったような校長室の状況に、
まじかー!と思ったのではないだろうか。と、こうして振り返ってみて改めて思う。
さて、そんな顔合わせのために集まったのではなく、まず5年生と呼ばれたのは、
3人がどのクラスを受け持つかという打ち合わせだ。
4年生で担任をしていた中で、唯一今年度も異動がなかったS先生も交えながら、
クラス分けの要点と、各クラスの子ども達の特徴を詳しく説明してくださる。
昨年もいらっしゃった教務の先生と教頭先生もそこに付け加えて把握してくださっている情報を一通り話してもらい、
「先生方はどちらがよろしいですか?」
と校長先生がこちらに問いかけた。
「私の受け持つところを、一番元気のいいのが多いクラスにしてもらっていいです。どこでも大丈夫です。」
そう最初に切り出したのは、第一印象が角田さんの学年主任の先生だった。
僕もそれに続いた。
「同じくどこでも受け持ちます。」
去年までの子ども達の実際を知らない、学校の実際を知らない二人が、
「どこでも受け持ちます。」と示したことで、
昨年までを知っている先生たちも、話は進めやすくなり、
「で、あれば、子ども達の性格から、ととろん先生であれば・・・。」
とクラス決めがスムーズに決まっていく。
どんな子ども達と出会うにしても、自分がやれる限りをやるだけだ。
引継ぎの情報を聴きながら僕は小さく拳に力を込めた。
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