どうせやるならとことん楽しもう(1)
「うーん、16セットだと…2万、、、、3万かぁ。」
冬休み、僕はパソコンの画面とにらめっこしてぶつぶつつぶやいていた。
画面は、百人一首の取り札の購入画面。さて、購入するかしないか・・・
「ええい!いったれ!」思い切って購入を確定させた。
これで3学期、この札を使う事が無い状況になってしまったら、
とんでもなく無駄な買い物になってしまう。
まぁ、でもそうはなるまい。あの子達の二学期の様子だったら、
きっと全員でもはまってくれるだろう。
そう思いながら、ぼくは、読み札をもって、百人一首を読む練習を始めた。
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僕が受け持たせてもらった子ども達に、
僕との一年間で覚えていることは何かと尋ねることが出来たとして、
おそらく直近五、六年間の子ども達からは、
「百人一首をたくさんした先生」
という声が聞こえてくるだろうと思う。
それくらいにクラス全員で、冬の時期から春になるまでは、
毎日のように百人一首をしていた記憶が自分にも残っている。
そんな百人一首ドはまりクラスはいつから始まったんだっけ。
そう振り返ってみて、最初はここからだったなと記憶がたどり着いたのが、
6の4の時だった。
始まりは給食時間に、静かに食事が進むようにと流していた、
「ちはやふる」の映画からで、一日20分ずつで進む話を、
子ども達は昼ご飯を食べながらも、楽しんでいた。
映画が一通り視聴し終わったころ、何人かの子ども達から、
「先生、私も百人一首やってみたいです。」
という、要望が上がり始めて、とりあえずと3セット購入して、
子ども達に休み時間にやっていいよと、渡してみた。
その時に買ったのが『五色百人一首』。
百首の句をニ十種ずつ赤・青・黄・緑・紫の色に分けて印刷されていて、
いっぺんに百覚えるのは、難しいという子でも、
手始めに二十枚を十枚ずつにしてやってみようだと、
楽しみやすい工夫がされている百人一首札だ。
始めは何人かだった子ども達が、次第に「僕も」「私も」と増えていき、
3セット、6人分などでは足りなくなってしまった。
学校に百人一首の札がないかを探してみたが、どうも見つからず、
そうこうしているうちに、冬休み間近になってしまった。
五色であったことで何とか子ども達も工夫をしているようで、
どこかで二人が赤札で対決しているときには、
別の二人は緑札を持って行って対決するといった具合に、
休み時間に百人一首を楽しむ子たちが増えていた。
そんな学級の状況を見て、それならばと、子ども達にまず用意したのは、
各色ごとに分けてプリントした、百人一首のはや覚え表。
「冬休みの音読の宿題は、百人一首のはや覚え表を読んでいいからね。」
そう言って配ると、子ども達はえらいやる気を出していて、
その様子を見ての冬休みの僕は、最初の場面の状況に至ったのだった。