悪ふざけの代償は(4)
「え!ととろん先生、パソコンの電源が切れました。」
全員がざわざわしている。
「はい、今こちらで全員のパソコンの電源を落としました。調べ学習はここまでです。全員教室に帰ります。」
「は?意味わからんのやけど。」
「先生まだ、調べ終わっていません。」
「うん、ほとんどのみんながよく頑張っていたのは分かるんだけど、最初に行っていたルール違反が発覚したので、ここまでです。」
そう話すと、TくんとDくんが、
「先生すみません。ついふざけて検索したら関連動画につながって。」
と言いながらも、いつものととろん学級での叱られルールで、
素直に自分で謝りに行けば大丈夫、
くらいの軽い感じでごめんなさいをしてきた。
しかし今回は、そんな軽さで許されないと事前に伝えていたので、
ドガン!と雷を落とそうとしたけれども、考えた。
これはこの二人は怒鳴り声で叱られても、身に染みていかないだろうと。
ドカンと怒鳴られるだけの指導の方がよっぽど良かったと思うくらいの、
二度と冗談半分でやっちゃいけないことをやらないようにせねば。
これまでの話で紹介したとおり、面白ことにもこだわっちゃうこの担任は、
叱り方、指導の仕方についても、実に意地悪でしつこくて許さない事には、
徹底的にやり込める。僕は煮えくり返る怒りを、
3度の大きな深呼吸で抑えて、二人に声をかけた。
「うん、これね、もう二人が謝って先生がど説教くらわしてっていう問題じゃないんだわ。もしかしたら先生、今日で首かもしれんから。だからひとまずもう全員教室に戻ります。」
((え?!そんなに大問題なの?!あの二人何したん。))
そんな空気が全員に伝播していく。
二人以外は、どうしよう、どうしよう。そんな雰囲気になって、
さっとパソコン室の後ろに列を作る。
そしてその言葉を聞いた二人は、少しへらッとしながら謝りに来た顔は、
すっかり蒼白な顔に変わっていて、
「先生ごめんなさい。僕らそんなつもりじゃなくて。」
「いや、そんなつもりもこんなつもりもなく、この学校のパソコン室からそういうサイトにアクセスがあったログは残っているから、何にせよ担任の先生の責任だから。とりあえず二人も並んで。」
「先生、もうしませんから、もうしませんから。」
「だからもうしないじゃなくて、もうしちゃったのだから消せないやろ。」
並んでいるクラスメイトからは、無言の𠮟責の視線が二人を見つめている。
このクラスで、僕が担任に入る前、何度も悪ふざけで授業をとめたり、
全員で叱られる時間を取られることになったりしても、
へらへらとしていた二人であることを、子ども達の方がよくわかっている。
それがときには二人でなく6人に増えたり、
10人になったりという事になったりしてたのが、
この6の1が落ち着かない学習態度とみられた原因ではあるのだが、
「ととろん先生があんなに注意していた事でもそんな態度とるのかよ。」
さすがにクラスメイトも怒りの色が空気に見えるようだった。
二人も列の後ろに並んで、全員がそろったところで指示を出す。
「Ⅰくん、Oさん、このまま教室に戻っておいて。先生はひとまず、校長先生か教頭先生に報告してから上がるから。」
頷くⅠくんとOさん。
全員が神妙な表情で、教室に戻っていくのを横目に、
僕は職員室に急いだのだった。