席は離れても、心は一つに(1)
仲良しさんクラスの子ども達の最後の試練がやってきた。
それは卒業式。
儀式的な行事は、仲良しさんクラスの子ども達にとって、
大きなストレスがかかる時間であり、その上孤独との闘いでもある。
この一年間の中で、最大の試練が修学旅行だったとすると、
最後の試練こそ、この卒業式と言っていいだろう。
というのも卒業式は、それぞれの交流学級の集団に入っての参加になり、
1人ないし二人ずつで席が遠くに離れた状態で、2時間近い時間を、
じっと耐え続けなければならないからだ。
その上、今回は在校生として座っているだけの立場でなく、
自分の卒業証書を、受け取りに行くために壇上に上がったり、
お別れの言葉で、一人一言のセリフを、大きな声で言ったりするのである。
仲良しさんクラスの子ども達にとっては、
孤独と大きなストレスとの闘いとなることが予想された。
僕が彼らの横に直接座ってあげることができない中で、
彼らがこの最後の試練を乗り越えられるように、
してあげられることは何だろう、と考えてみた。
考えた結果、僕にできることは、
これまでの卒業生に伝えてきたことと同じように、
卒業式に、子ども達にとっての価値づけをはっきり示して、
そこに向けて頑張る姿勢を認めながら励ましながら、
乗り切れるように見守る。
それしかない。
「いよいよ卒業式も、練習の時間が入ってくるようになりました。みんなが言うセリフについては、それぞれ、先に決めてもらっていいと言う事で、一言ずつのセリフを決めていこうと思います。」
「卒業式か、嫌だなぁ。俺できるかな。」
「去年は出れなかったから、今年は頑張らないと、頑張らないと。」
「セリフも言わなきゃいけないのかぁ。無理そう。」
子ども達からは、不安が言葉になって出てきている。
「うん、去年の卒業式で、5年生で参加していたみんなの様子は先生も覚えているよ。先生は6年生の担任だったからね。そして今不安な気持ちなのも共感できるところもある。だけど、頑張ってほしい。」
改めて子ども達としっかり目を合わせる。
「今度の卒業式は、去年と大きく違うところがあります。それはみんなが卒業生だと言う事です。なので、先生は、卒業生に話す話を、まずはきちんと話します。きいてくれる?」
みんなじっとこちらを向いて聞く姿勢を作ってくれた。
「うん、ありがとう。先生はね、今年のみんなとの卒業式には、二つの願いをもって、みんなと参加しようと思っています。1つ目は、この一年で、みんながほんとにすごく成長した姿が、最後の日に一番カッコよく表れてほしいという願い。もう1つは、そのカッコいい姿で、みんなのおうちの人たちが、本当によく成長したと、安心して嬉しい気持ちになって、みんなを見守れますようにという願い。この2つです。」
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