『幻の女』(ウイリアム アイリッシュ)
不思議な読後感。それは読んでいる最中もずっと感じる不安定な気持ち。
「幻の女」という題名どおり、その女は幻覚なのか、それとも実在するのか―。読者はページをめくる度にその思いに囚われます。
様々な人物が現れては消え、また別の人物が現れる。読者も登場人物と同じように「幻の女」を追い、つかまえたと思った途端に、指をすり抜けて消えていくような、歯がゆい思いを感じます。
自分が見たものは本当は存在しなかったとしたら?
あの時の記憶が間違いだったとしたら?
もし自身にも同じことが起こったら不安でたまらないでしょう。
起こった「事実」は一つだとしても、私たちにとって「真実」は一つではなく、人の数だけあるのかもしれません。
どちらかだ嘘をついているのでなければ、きっとどちらもその人にとったら「真実」なのです。
日常で感じる不条理さや、自分に対する不信感に悩んでいるなら、この本を読むことで、真実に立ち向かう勇気をもらえるかもしれません。
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