わたしの場合 06 - 全力でギャグを唱えた長い夜
わたしの場合のおはなし。
わかりますか、ナナトトさん
手術終わりましたよ
取れましたよ
見えているものは、
取れましたよ
今、何時ですか
夜の10時過ぎです
力強い大きな声で
麻酔から覚めた。
あれはどこだったんだろうか。
手術室だったのか、明るい照明の中だった。
次の記憶は、暗い病室。
消灯時間は過ぎていた。
つながっている機械の音がいろいろ聞こえる。
数人の看護師さんや、主治医の姿も見える。
しばらくして、せん妄がはじまった。
自分の体が変形してしまったり、
看護師さんの表情がどんどん変わったり、
思考の時間がどんどんさかのぼったり。
次々と幻覚が現れるけど、
その時はせん妄とは気づかない。
不安で怖くて、それを伝えるけれど、
伝わらない。
どれくらい時間が過ぎたか、
せん妄はおさまり、
窓から見える夜の空を凝視していた。
痛みを堪えて、歯を食いしばる。
でもどうしようもなく痛い。
痛み止めで多少和らぐけども、
どうにも痛い。
震えるほど痛い。
痛い、痛い、、、痛い。
ふ、っと芸人さんの事が頭に浮かんだ。
痛いのに、芸人さんの笑い声を思い出す。
痛いのに、芸人さんのギャグが浮かんでくる。
心の中で呪文のように、ギャグを繰り返す。
ゴイゴイスーとか、いろいろ。
…痛いの、すこし忘れてる。
ぁ、でもやっぱり、ぃいい…痛い。
あかんあかん、気持ちを逸らそう。
またギャグを繰り返す。
…痛いの、またすこし忘れてる。
ぁ、でもまた、ぃいい…痛いか…。
夜はなかなか開けなくて、
痛みに震えて歯を食いしばって、
眠る事もできないし、
とにかく、全力で、一晩中、
芸人さんのギャグを心の中で唱えていた。
手術の日の長い夜、
そうしてなんとか乗り切った。
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昨夜は病院で眠っていました。
アバスチン投与のため、一泊の入院です。
入院をして、家に帰ると、
いつも気持ちが落ち込みます。
病院にいる時はそうでも無いんですが、
いろいろと考えてしまいます。
いやいや、また、こういう時も、
落ち込みながらも、面白い事考えて、
浮上して行くんだよ。
そう思っています。
来週は母と小旅行。
さー、師走も元気で、生きてますよー!
⭐︎はじめの一枚
この長い夜から2週間後
窓からきれいな月が見えました。