【ショート・ショート】昼顔の黄昏

終業時間間際、突然電話が鳴った。

「企画戦略室　橋本です」

「久しぶり。大隅だよ」

「おお。今、社長室だってな」

「先月からな。ところで、変なこと聞くけど、お前ってバイトの麻実と付き合ってたか？」

「付き合ってないよ。告られたのは確かだな。でも、断ったよ。俺、相手いるし」

「そうだよな。彼女いるって言ってたよな。実は、麻美って社長の娘らしくてな」

「え？そうなの？」

「さっき、社長からお前と娘が付き合っているようだがって聞かれてな。お前の気持ちを聞いてくれって言われたんだ。でも、それなら無理だな」

「無理じゃないよ」

「付き合ってる彼女いるんだろ？」

「いるよ。現在進行形」

「なら、だめだろ」

「大丈夫だよ」

「んなわけあるか」

「だって、俺の彼女、社長の奥さんだから。話したら身を引いてくれるよ」

（終わり）