著作権2

ICOというゲームについて語るはずが引くほどどうでもいい陰キャの想い出語りになっていたので続きやります。

ヒロインをエグい鳥かごから無事救出した少年。ヒロインは不思議な能力を持っており、閉ざされた扉を謎の力で開けたりする。謎解きに詰まっていると少年を呼んでヒントになる箇所を指を差して教えてくれたりもする。白い。大変美人。ヨルダという名前が判明するのはここからかなり後だったと思う。

前回記述した通り、このゲームはざっくり言えば城から脱出する事だけを目的としている。やり込み要素が無いわけではないが、それもごく僅かである。極論を言えば、ゲームと呼ぶには少し破綻しているのかもしれない。

それでも私は心からこのゲームにのめり込んだ。ステージのギミックが分からず苦しんだn時間すら至福に思えた。何故なら、2恒河沙回目になるが、目に映る全ての景色が本当に綺麗だったからだ。
城の内部、外観、高い所から見下ろすクリア済みのギミック、遠く向こうに見える地上の景色、空の色、そこに溶け込む言葉の通じないヒロイン。何もしていなくても楽しかった。
セーブは各所にある石のソファに二人で腰掛けて行われる。ゲームを再開すると二人がソファで目を覚ます所から始まる。何かキーを入力するまでは目を覚まさないので、毎回眠っている二人をしばらく眺めていた。
常にヒロインと行動を共にするが、動き回る少年の後を彼女が勝手に付いてくる訳ではない。このゲームには「手を繋ぐ」操作がある。R1ボタンを押すと、少年とヒロインが手を繋ぐ。その瞬間、コントローラーが僅かに振動する。たったそれだけの演出だが、とても感動した要素の一つである。

少年は脱出の為にヒロインの手を引いてそこら中に連れ回すが、言葉は一切介さない。つまり、ヒロインが城から出る事を本当に望んでいるのか分からないまま物語が進んでいく。ヒロインはどんどん弱っていき、唯一の敵と言っていいヒロインの「母親」がここから出させまいと行く手を阻む。引き離された少年は崖を越え、自分の容姿に似た黒い影を次々と倒し、そして最後の敵に打ち勝つ。エンディングと共に流れるラストシーンは壮絶だった。

人によっては、ICOは非常に退屈かもしれない。アクションや謎解きが得意な人なら10時間も掛からずクリア出来てしまうだろう。ストーリーも抽象的で感動要素など何一つ無いと言われても可笑しくない。いわゆる雰囲気ゲーだ。それでも、私は、クリアして、泣いた。2周目のある条件下で最後に数秒だけ流れるあのシーンでも、大いに泣いた。あれ以上に美しいラストシーンに見える事はもう無いかもしれないとすら思う。

あれから12年経った。私の中でこのゲームが風化していく感覚は一切なく、当時の感動がほぼそのまま体内に残っている。それほど衝撃的な体験だったのだと思う。関連コンテンツは一通り買った。サントラ、攻略本、宮部みゆきの小説。同制作チームの「ワンダと巨像」「人喰いの大鷲トリコ」もプレイした(後者はクリアしたく無さで途中で止まっている)。これらを生み出した上田文人というゲームデザイナーは私が心から敬愛する人物の一人である。

初プレイから1年経った2009年、友達から誘われたmixiのハンドルネームを決めるのに時間は掛からなかった。開発元からの訴訟に震えながら現在に至る。

振り返ったらプレイしたくなったので、
今度久しぶりにまたあの城に、二人に会いに行こうと思う。

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