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私が「こどものおもちゃ」を何度も読み返す理由

このセリフがすごい

「なんか…大事なもののじゅんばんまちがってるんじゃないの!?」

「こどものおもちゃ」8巻49ページ

「こどものおもちゃ」の記憶に残るフレーズ。これは知人(小森)の母親と警察官の2人に向かって主人公の紗南ちゃんが叫んだセリフです。紗南ちゃんとしては好きな人(羽山)が危篤状態でその手術の結果を待っている状況。そんな病院の廊下ではじまった事情聴取(小森の母が警察官に息子は悪くない責任は羽山にあるとか主張している場面)に違和感を覚え、その気持ちのまま「なんか…大事なもののじゅんばんまちがってるんじゃないの!?」「そんな話はあとにして!!羽山が助かってからにして!」と泣きながら叫びます。

私がこれを初めて読んだのは小学校5年生の時でした。当時、良い子である(大人の言うことをキチンと聞く)ことが正義だと思っていたので、大人達に間違ってる!って大声でキレている紗南ちゃんは衝撃でした。しかも、警察官なんて小学生からしたら、大きくてかっちりした制服をきて威圧感がすごいので萎縮する存在だったはず。それにも構わず意見する態度。

こんな強い人になりたいと思った。

自分の意思をしっかりと持っていないと出来ないことだから。自分が大切にしているものの順番を絶対に間違えないようにしようと。

今も何かを選択する時はこれを意識しています。例えば、パスタを茹でている時とか…私には2人の息子がいるのですが、長男が5歳、次男が1歳とまだまだ甘えん坊な時期です。なので、夕飯に手作りのパスタを食べてもらいたいと思っていても彼らの機嫌が悪いと料理が思うように進みません。そんな時は思い切って冷凍パスタをチンするだけに変更します。私にとって手作りのご飯も大切だけど、それよりも子供達の笑顔の方が大切だと思うからです。料理する手を止めれば子供の機嫌に寄り添ってあげられる「そっか~それはイライラするね~」など、イライラをイライラで返すのではなく共感で返す余裕ができる。機嫌が悪いまま食べるパスタよりも機嫌が少し良くなった状態で一緒に食べるパスタの方が美味しいですしね。料理も共感も同時にできるようになれば良いのですが、私には無理なので料理をやらないという選択をします。

全然、紗南ちゃんと状況は違いますが…日ごろの小さな選択も大切なものの順番を意識することで自分に自信が持てるようになってきます。そうすることで、大きな選択をする時も後悔しない自分になれるんじゃないかな。

大人になるにつれて、大切なものが何か忘れていくような気がします…自分の体調より仕事を優先してしまったり、目の前の人との会話よりSNSのコメントを優先してしまったり…だからなのか「こどものおもちゃ」を定期的に読み返したくなる…大切なものを忘れないようにするために。

あと、この漫画のシーンの良い所は主人公ひとりだけの強い目ではなく、友達全員が同じ目線を大人におくっている所。こどもなら当たり前にわかる事が大人は難しくなっていると比喩されてる。

小花(作者)さんの絵は線が細く綺麗です。少女漫画独特のキラキラした目で力強い眼差し。紗南ちゃん達の強さがこのヒトこまだけで表現されている!リアルに紗南ちゃん達と同じ年齢だったから余計にズッシリと響いたのを覚えています。

「こどものおもちゃ」の概要

作者名:小花 美穂(おばな みほ)
出版社:集英社
掲載誌:りぼん
発売期間:1994年8月号 - 1998年11月号
巻数:全10巻

ざっくりSTORY

芸能活動している小学生の倉田紗南(くらた さな)とクラスメートで問題児の羽山秋人(はやま あきと)の恋物語。

前半はギャグ要素が強く、登場人物の魅力が描かれている。後半はだんだんとシリアスになってくる。全体的にコミカルに描かれているが、主人公達が立ち向かう問題は学級崩壊や家庭崩壊、精神病など実は重たいテーマ。読むときの年齢によって印象が変わってくる漫画。

こどちゃの続編読切▼これも合わせて読んで欲しい!

忘れてしまわないで欲しい、あの強い目を。だから私は何度も読み返す。

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