【FF16】この物語を語りたい! ストーリーの考察や妄想など。
始めに
これは、「FINALFANTASY XVI」を軽い気持ちで遊んでしまい、80時間の末に情緒がぶっ壊された物語。
つまり何が言いたいかというと、FF16の感想とか、考察とか、その他妄想をたくさん含んだ書き散らしである。特にストーリー全般に関してめちゃくちゃネタバレしていくので、未プレイだったりこれから遊ぼう! と思っている方は読まないでいただきたい。
なお、未プレイだったりこれからFF16を購入するか悩んでいる方向けには、下記にネタバレ配慮バージョンの記事リンクを載せたので、そちらを読んでほしい。
美しいストーリーライン
物語の構成、「時代と立ち位置」そして「人」
喋りたいことは山ほどあるのだけど、まずはこれ!
ホントめちゃくちゃストーリーラインがきれい! 非常に整えられた話の流れで、そこに主人公クライヴの成長と変化がこれでもかとぶち込まれている。なによりプレイヤーの体験として落とし込んでいるのが凄い。
物語の大きな塊としては、クライヴの年齢によってこんな風に分けて考えることができると思う。
「少年時代~ロザリア公国の第二王子でありフェニックスのナイト~」
「青年時代~ベアラー兵、そしてシドの一味としてのクライヴ~」
「壮年時代~“二代目シド”として組織を率い、戦い続けるクライヴ~」
大きくこの3構成。実際に主人公のクライヴの成長を見た目で感じることができるし、その時の立ち位置っていうのも明確で分かりやすい。
この3構成……と思ってた。けどクリアしてから見返すと「クライヴに関わる人々」、すなわち彼を構成する人々でさらにこんな風にも分けられるなぁと気が付いた。
「幼年期ジョシュア 守るべきものを守れなかった過去」
「初代シド 目指す世界と託された想い」
「成長したジル 守りたいものと生きるための理由」
「成長したジョシュア 兄弟の絆、託された不死鳥の炎」
クライヴという「人」を作ってくれた仲間たち
最初に書いた3つの時代は、純粋に時間の流れとその時の立ち位置を描いたに過ぎない。クライヴという「器」が徐々に完成していくのを示すならこれで十分だ。(アルテマかな?)
ただ、ストーリーでも触れられていたように「器」の中には「自我」という中身が伴うことで、初めて「人」として「クライヴ」が生まれるのだと私は思う。そして、空っぽの器に、自我という中身を作り、注いでくれたのは主に、上に書いた4つの人物たちなんじゃないだろうか。
この物語では沢山のキャラクターが登場するが、本筋の一番の柱は主人公クライヴと、弟ジョシュアの「兄弟の絆」だと思う。
その二人の関係性をこれでもかと際立たせるために、「最初」と「最後」をジョシュアとの物語で繋げてるのはもうこれ違法でしょ。こんなん絶対感情移入するじゃん!!
クライヴが走り続けた一番の要因であった「ジョシュアの死」が、物語の一番最後にもう一度来るなんてめちゃくちゃ心に刺さるし、正直あの瞬間はコントローラーを持つ手が震えた。アルテマとの最終決戦に挑むまでに多くの人の死や、世界の混乱、絶望に直面し打ちひしがれては来たものの、後にも先にもあんな悲痛な声を上げてジョシュアの声を呼ぶクライヴの姿を見たことはない。あの時の震える声は今でも頭から離れない。
ただそれでも、「最初の死」は「死を受けいれれず復讐を胸に抱く」のだけど「最後の死」は「ジョシュアの死を受け入れて先に進む意志」を感じ取れる。主人公としてのクライヴの大きな成長を感じられる演出にもなっており、《クライヴ・ロズフィールド》の物語としては満点の締め方だったと思う。
シリーズおなじみのキャラクターでもある「シド」についても、「誰かに何かを託していく」というところは過去作のシド達を想起させる。思えばシドはどの作品でもいつだって人々の先を進み、誰かに何かを託して去っていく……
そういうイメージをうまく使いつつ、「自身の正体がジョシュアを殺したイフリートだった」という悲劇的な事実を知り心が折れかけたクライヴを、うまく引っ張り(全裸にはした)、彼が歩みだすための起爆剤として立ち直らせたのだ。「人」の先輩であると同時に、「ドミナント」としても先輩で、多くの苦痛や絶望を乗り越えてきた「渋いオヤジ」というのを、言葉で語ることなくその生きざまと背中で語ったのだ。
めちゃにくい演出じゃん!! ていうかFFに対しての解像度が高すぎるよ~~~!!!!
そもそも私が「飄々としてユーモラスでちょっと手癖の悪そうなイケオジ」に激よわというところは多分にある。あんなキャラ卑怯過ぎるだろ恋に落ちるわ!!!
そしてジルとクライヴの関係。戦いが続くなかで、二人の仲がどんどん深まっていき最終的には恋人となる。ただ上でも述べたように、物語の柱としては「クライヴとジョシュアの絆」がすでに存在している。
極論、ジルの存在がなかったとしても物語としては成立するし、なんだったらフーゴのように敵として登場させて、召喚獣シヴァの力を喰わせた方がシンプルだ。読み手であるプレイヤーを「兄弟の絆」の話にさらに集中させることだってできる。では、なぜそうしなかったのだろう?
自罰的なクライヴと、生きるための理由
ジルとクライヴの関係は、物語のところどころで小さな進展を見せつつもなかなか先に進まないことで有名である。それはもうモニターの前で私は
「クライヴ!!! なにしてるの行きなさい!!! はやく!! ジルこれ待ってるよ!! 敵の攻撃には過敏に反応する癖に何でこういう所で二の足を踏むんだ! 踏むのは敵だけでいいんだよ!!」と毎度唸っていたほどだ。
そして大体あと一歩のところで横やりが入る。超王道。プレシジョン・ガブの発生で遮られたのは記憶に新しい。トルガルだって空気を読んで外で待ってるのに、タルヤもこれには肩をすくめていた。
そんな二人の関係は、みんな大好きバルナバスに襲われ「影の海岸」に漂着することで一気に進展する。
クライヴはジルに「君は俺が 怖くはないのか…」と問いかけ、自身が人ではないかもしれないし、自分自身の存在が多くの人々を死に追いやり、多くを殺してきたのだと心中を吐露する。
それに対して、ジルは
「いつも一人でいるから、一番大切なものを忘れている……あなた自身よクライヴ 今度は自分のために戦って、あなた自身のために」と声をかけるのだ。
これは只の考察というかもはや妄想の域ではあるが、もしこのイベントがなければ、クライヴは自らの罪や、ジルたちが背負っている罪すらも背負い込み、最終決戦の後、自らの意志で帰ろうとせず、消えていってしまったのではないかと思う。
彼の纏うどこか重くシリアスな雰囲気もあるが、自分自身が人ではない「何か」であることに恐怖し、それ以上に「人ではない何か」になったとき大切な人をその手で殺めてしまうのを恐れたのだと思う。結果的にジョシュアは生きていたとはいえ、大切な人を自身の手に掛けてしまうことの恐れや痛みは、きっと誰よりも深く、今も尚トラウマになっていると思うから。
これから来る最終決戦の後、きっとこのままだとクライヴは帰ってこない……そんな雰囲気をジルは感じ取ったのだと私は思った。だからこそ「あなたを守るために、私は生きる」と彼女はクライヴに伝え、自罰的なクライヴが生きていくため、というか「生きていてもいい」理由を与えたんじゃないだろうか。
そうすることで、クライヴ自身も自分自身と向き合い、ジルと一緒に生きる道を自身の手で選べたのだと思う。彼女の罪や想いを全て背負ったうえで、「またこうやって月を見る」ために戦いに赴くのだ。ただ流れに任されて戦うのではなく、戦うために武器をとる。誰かのためではなく、自分自身のために。【主人公クライヴ】としての決意の瞬間だ。
ただ、最後まで共に戦うといったジルの答えに対して、「君の罪も想いも背負って戦う」といい、シヴァの力を喰らったクライヴはすこし卑怯にも見える。今にして思えば、相手のことを尊重しまくるクライヴが唯一と言ってもいいぐらい、始めて見せた「独占欲」のような感情。君そんな重たい一方的な感情出すことできたの!? と驚いた。
初めて、「生きてもいい理由」を手に入れ人として生きるクライヴが、ある種人間らしい生々しい感情を手に入れて、初めてその感情を向けたのがジョシュアではなくジルというところに、なんというか人間臭さというかエモさを感じたのだ(語彙不足)。言外に「俺以外の奴に、君の罪も想いも背負わせたくない」という雰囲気を感じて、本当にジルのことを想っているのだなと思った。
でも普段絶対そんなこと言わないのに、そういう風に言われたらジルは断れないじゃないかクライヴ……!
当然そのことは、後にジョシュアから「兄さんのことを想えば簡単に納得するものか!」とジルの気持ちを代弁したグーパンと共に帰ってくることになった。だが、生真面目で律儀で、なんでも背負い込む不器用な男クライヴは、「それでも俺の出した答えだ」と言い切るのだ。
絶望の末に力を喰らったのでもなく、アルテマの器としての道を選んだわけでもなく、罪と想いを背負った先で一人静かに死んでいくわけでもない。燃え上がるような感情と、一人の「人」として生きるため、大切な人と添い遂げるため……そういう、男の静かで熱い感情がぶつかりあった瞬間だ。
ホントにシーンとしては一瞬で、僅かな時間であったが、その短い答えだけでジョシュアが引き下がり、手を差し伸べたのは彼の決意と覚悟、生きるために戦うことを感じたからだと私は受け取った。
メインの話に「兄と弟の物語」を据え、サブの話に「愛する人との物語」を置きつつ、クライヴが生きるための理由を得てメインの話に戻っていくといった感じで、シンプルながらも非常に美しくまとまった話だと思う。
……しかしまぁ、ジルの「あなたを守るために、私は生きる」とか、ジョシュアの「兄さんはこの僕が守る」とかほんとにもう……このムチムチイケメンは皆に愛されているのに、なんでもかんでも自分一人で背負い込んでよォ!! もっと頼ってよ!!!! ほんとに生真面目というか、律儀な男だよなぁ……だから好きなんですけどね。
守り守られ、兄と弟の絆
生きるために戦う────誰かのためじゃなく自分のために戦うことを改めて決意したクライヴは、灰の大陸に進み物語もいよいよクライマックスに進んでいく。そして、この辺りから色濃くなっていくのがクライヴとジョシュア二人の物語だ。
といっても、先に述べたようにこの物語の主軸は「兄弟の絆」にあると私は思っているので、本筋にもどってきたような感覚だった。そしてここにきて一番最初、物語の冒頭であった「フェニックスのナイト」「幼く無垢」だった時のクライヴと、「“大罪人シド”」「人として成長した」クライヴとの対比が光る物語構成だったと思う。そしてそれはクライヴだけでなく、ジョシュアもまた同じだ。
幼年期は守られる側だったジョシュア。しかしフェニックスゲートの一件ですべてが崩れ去り、ジョシュアもまた大きく成長せざるを得なかった。《不死鳥教団》という当初滅茶苦茶胡散臭い教団に保護されていると知った時は「だいじょうぶ? お兄ちゃんその教団滅ぼそっか?」と思った時期が私にはあったが、宗主としての立場の意味を理解し、立派な指導者として立ち振る舞う姿は、やっぱり“ロズフィールド家”の一員で、ロザリア公国の王の血筋なのだなぁと感心してしまった。同時に、幼いころから自らの責務を全うしようと懸命にもがき、苦しんできた過去が垣間見え胸が苦しくなる。
因みに不死鳥教団もめちゃくちゃいい人たちだったので和解した。
幼かったころのジョシュアを知っている分、「王家とドミナントという責務に縛られた、守られる側の王子」から「使命に縛られるだけでなく、自らの意志で道を切り開く王」の風格を兼ねそろえた人物への成長。というのが私が感じたジョシュア像である。
また、両者とも成長したあとも「お互いを守る」という感情は変わってはいないのだが、その本質的な部分は変わってきているなと思うのがとてもイイ。
少年時代のクライヴは「ドミナントの力が発現しない失敗作」みたいな空気の中で剣の腕を上げ、「フェニックスのナイト」としてジョシュアの側に並ぶことを許されていたと思う。「立場や役割」というものに縛られ、「ジョシュアの兄で、フェニックスのナイトだから彼を守らなければならない」という空気を感じた。だからこそ手柄を上げなければと焦りも見えていたし、やや過保護にも見える一面もあった、と言ってもアナベラほど束縛はきつくないしジョシュアの気持ちを尊重してはいる。
ただ、フェニックスゲートの一件で「彼のためなら命を捨てても構わない」という根底にあるのは「兄であり、ナイトであるから」という部分を大きく感じたのだ。勿論、心の底からジョシュアを愛していたのは間違いないのだが、そのジョシュア(幼)に対しても役割や責務といった言葉を聞かせていたところから、そういう考え方が強かったのかなと思った。
成長後のクライヴは立場こそ「大罪人シド」と変わってしまったが、「フェニックスのナイト」としての矜持は捨ててはいない。相変わらずジョシュアLOVEなのも変わらないのだが、「守るべき存在」から「対等な存在」に変わっていったのを強く感じた。ジョシュアにパンチされたのもそうだが、その直後一人でギャラルホルン砦の探索を行おうとするジョシュアを見送り、自分自身は先に進むという部分は象徴的なシーンだと思う。
少年のクライヴなら絶対についていきそうなものだが、彼の成長を認め、「使命」と向き合っている彼の道を阻むようなことはしない。彼の生き方を認めた瞬間なのだと思う。
なんならクライヴよりもガブの方が狼狽えているのが面白かった……完全にガブ、親戚のおじさんポジションなんだよね。「叔父さん」としてみるともっと強烈なクライヴ・ジョシュアガチ勢がいるので相対的に印象は薄くなるが、ガブから見るとクライヴは長年共にした「兄弟」で、ジョシュアはその兄弟が連れてきた新しい「弟」といった風に映っているのかもしれない。なんにせよキャラが良すぎる……
ただお互い、「ジョシュア・兄さんの為なら命を懸けられる」と思っているところは変わってない。クライヴの生きる理由はジルにあり、クライヴの死ぬ理由はジョシュアにあるといったところか。ジョシュアの生きる理由も死ぬ理由もクライヴに在りそうなところは激重めな兄弟の絆を感じた。
この物語の結末について
Twitterを始めとして各所で散々盛り上がってるこの話題。
「あのエンドはなんなんだ?」「ハッピーエンドじゃないのか?」「あれは二人とも死んでいる!」「いや生きている!」「そもそもジルたちはどうなった?」
と、侃侃諤諤の議論を巻き起こしているようだ。
ただ、これに関しては「明確な答えが示されていない」というのが最も重要な部分で、結末のカテゴライズも生死についても些末な問題に思われる。もちろん、何十時間とゲームをし、クライヴの壮絶すぎる人生を体験してきたのだ『幸せに……みんな幸せになってほしい』なんて、今更言わなくてもわかる!!!
私だって……私だって!! オリジンが消えた後、その事実に喜んだのもつかの間、3人が帰ってこないことに気が付いてお通夜ムードの隠れ家に、「祝賀パーティーの準備一つもないとはな」とか言って胸元ぼろっぼろ無精ヒゲリミットブレイクしたクライヴが二人を支えて戻ってきて、それを見て泣き崩れるジルをさっと支えるジョシュアが「兄さん、こういうのは僕の役目じゃないと思う」って言いながらスマートにクライヴにジルを任せ、ガブが「お前ら……どこに、どこに居たんだよ! めちゃくちゃ探したんだぞ!!」って男泣きしながら拳をクライヴの胸にたたきつけると、「落下する途中目が覚めてな、余の切り札であるドラゴンダイブがなければ全員落下死していたところだ」ってドヤ顔のディオン殿下がそう宣い、「借りは返したぞ、フェニックス」「あぁ、共に空を駆ることができて楽しかったよ。ディオン」と言いながら颯爽と部屋を後にしようとすると「ディオン殿下……これを、お納めください」とハルポクラテスが美しい淡い紫の飛竜草の花を手渡しながら「殿下は立派になられた…見事、大輪を咲かせましたな」「先生、長らくお待たせして申し訳ない」って言いながら胸元に飛竜草の花を挿し、「これで……余も人として生きることが叶う。余も又、多くを待たせている。今はその中の一人に会わねばならんのでな」とイルーシブジャンプで消え、再び昇る太陽にトルガルが遠吠えをする……とかそういうのを何度も夢見たさ!!! もうそういう胡乱な時空じゃないと私の精神は耐えられないんだよ完全生命魔法レイズはまだですか? 息を引き取りそうなんですけど、私が。
……と、気になりすぎる物語たちはいったん置いといて、「明確な答えが示されていない」というのは開発の意図した結末であり、この議論そのもの含めて設計された結末だと思った。
これはかなりの邪推なのだが、このゲームを開発している第三開発事業部のボスこと「吉田直樹」プロデューサーという人物は、プレイヤーの口コミやそこから生じる議論というのを非常に重要視している。実際、これだけストーリーに特化したゲームであるにも関わらず、配信制限は全くなく初日からネタバレ可能な状態にしてあるのは、プレイヤー間・またはそこから発信される情報伝達を重く見ている結果だと思う。
「明確な結果を示さず、実際に遊んだプレイヤーそれぞれに結末を想像させ、それをプレイヤー同士で談義させることでさらにゲーム体験を記憶に刻ませる」というところまで設計してゲームを作っているように思えてならない。
もしその通りだとしたら、このゲームは今までのFF史上、最も挑戦的なナンバリングになるだろう。どんなFFであれ、結末は示されてきた。FFに限らずストーリーに重きを置いてきたゲームのほとんどもそうである。プレイヤーに結末を委ね、考えさせ、共有し議論させるまでをゲーム体験にしているのだとしたら、これほどまでに果敢な挑戦したゲームはそうそう存在しないだろう。
そして《不死鳥教団》シトリの話ではないが、この物語の結末がどんな意味を持つのか、それを決めることができるのは、実際に遊んだプレイヤーだけだ。誰に後ろ指をさされようと、誰に理解されまいと……そこにプレイヤーが感じたものがあるならば、それが全てである。
だから……だから私はこっからめちゃ勝手な考察をするぞ!
果たして彼らは死んだのか?
これについては「NO」、生きていると私は考えている。
描写だが、クライヴはオリジン崩壊後どこかの海岸に流れ着いたものの生きてはいたようだ。ただ疲弊激しく、左手の石化も始まっている。オリジン消滅に伴い《理》も破壊されたのか、最後の描写を見るに魔法が使えなくなっているようだ。途中隠れ家のシーンに切り替わり、ガブたちが映し出され、何かを感じ取った様子のジルとトルガルが付きを眺める。輝く月と、徐々に輝きを失うメティア。涙する面々、トルガルに抱き着くジルと遠吠えするトルガル。そして再び太陽が登り、涙を流すジルは太陽を仰ぎ、ふとほほ笑みのような表情を浮かばせる。その後暗転し……そしてクライヴの声でモノローグが語られる。『こうして、クリスタルを巡る探求の旅は終わった』といったセリフだ。
スタッフロール後のパートでは、魔法のなくなった世界で子どもたちが暮らしており、《ファイナルファンタジー/著:ジョシュア・ロズフィールド》の本が映し出されながら『召喚獣合戦』を遊んでいる。登場するのは『イフリート』『フェニックス』『バハムート』だ(日本語版音声)。こうして平和になった世界で子どもたちが遊び、最後に『そして、新たな物語が紡がれていく───』となって終わりを迎える。
クライヴのその後は?
あの後生き延びて、《ファイナルファンタジー》の作成に関与した……というのが私の考察である。
クライヴについてはオリジンの崩落から生き延びた様子。浜辺に打ち上げれて野垂れ死に……というのも考えられなくはないが、そもそもの話、単純に物語としてそんなオチをつけてくるとは思えない。死はキャラクターの終着点で完成でもある、そしてそれが主人公ならそれほどまでに美味しいイベントは存在しない。あの第三開発事業部がこんな獲物を取りこぼすとは思えない。死亡させるならもっと劇的な演出を仕掛けて殺してくる気がする。……とこれは単なる想像の域を出ない話だ。
もう一つ、このゲームは徹頭徹尾『クライヴ・ロズフィールド』の物語である。これに異論を唱える人はそういないと思う。物語の最後は、クライヴのモノローグで締められており、エンディングには《ファイナルファンタジー》という古い本が出てくることで、今までのゲーム体験はこの本の中の物語として語られている風に受け取ることができる。
彼の物語なのに、彼以外の誰が語れるというのか? モノローグの声がクライヴ本人であったことからも、クライヴはあの後、再び隠れ家に戻り(もしくは戻れなかったとしても)生きてこの物語の作成に関わったのではないだろうか?
また、《ファイナルファンタジー》の記述について。エンディングの子どもたちの遊ぶ『召喚獣合戦』は《ファイナルファンタジー》内に記載されていたエピソードの一つだと推測される。しかも登場人物は「イフリート・フェニックス・バハムート」とオリジン突撃三人組である。ヴァリスゼアでの召喚獣としての知名度はタイタンやオーディンの方が上であるにもかかわらずだ。フェニックスやバハムートはともかく、イフリートが出てくる以上それなりに正しくクライヴたちの冒険が書かれていると思われる。オリジンに突撃した召喚獣のことを知っていそうなのは隠れ家のメンツ+αだが、勝手にジョシュアの名前を借りて本を出版したとは考えにくい。
ハルポクラテスのセリフからジョシュアの才能を高く評価していたため、ハルポクラテスが彼の死を惜しんで代筆した可能性もなくはない。ただ、サブクエを進めるともらえるストラスの羽ペンから、クライヴの書く物語を楽しみにしている…といった意味合いのセリフも確認できるため、やはり積極的に書くとは思えない。
メティアの輝きが失われた件は?
《メティア》が輝きを失ったのはどうだろうか? 《メティア》はゲーム中の文章から、「願い事をするとそれが叶うという伝承がある」ことがわかる。「願い星が輝きを失う=願いは叶わない」と捉えれるからクライヴは死んでしまった。と解釈する人もいるようだ。筋が通っており、なるほど納得もできる。
が、私は生きていてほしいので、別の解釈方法を提案してみる。
オリジンでの決戦により、既存世界の『神』は失われ、《理》も破壊された。つまり神の支配する世界は終わり、新たに「人」が自らの力で生きる世界が到来したわけだ。
《メティア》が輝きを失ったのは、「神」の時代の終わりを告げ、神に頼らず、自らの力で道を切り開いていくことを暗示しているのではないだろうか?
ただ神に祈りを捧げ願いを託すのではなく、自らの力で願いを叶えにいく。またこのメティアの描写の後、新しい世界の夜明けを示すように太陽が登る。さらにエンディングの一番最後は『そして、新たな物語が紡がれていく───』とつながっていくのだ。ここの部分にクライヴの声はなく、つまりまだ描かれていない物語を指していると考えることができる。
また、以前海岸に漂着した際のジルとクライヴの会話を思い出してほしい、実はジルはこんなことを言っていた。
全てが終わった後に見ると、意味深な台詞に思えてくる。「クライヴの身に何かあった時の覚悟を言っているのだろうな~」とプレイ中は思っていたが、クライヴとジルが離れ離れになった今この現状を見るに、この状態になることへの伏線にも見えてくる。
ジルもまた、実直で一度立てた誓いを破るような女性ではない。これはこの後、クライヴを探しにいく新たな物語に繋がる、伏線なのかもしれない。トルガルも残されているし、今後DLCが出るとするなら「ジル」を主人公とした「クライヴ」を探しに行く物語になる可能性もある。
例の本の著者とジョシュアのその後は?
エンディングに登場した《ファイナルファンタジー》という本。トレーラーやPVにも登場していたのだが、まさかエンディングに登場するとは思わなかった。しかも著者が《ジョシュア・ロズフィールド》となっている。だがジョシュアについては明確に死亡したシーンが描かれているのだ。誰がこの本を書き、ジョシュアはどうなったのだろうか?
私は、ジョシュアは蘇生されており、クライヴの話を元にこの本の制作にあたったのではないかと考える。ただし願望に近い話である。
生き残ったクライヴが、死んだ弟のことを想い、著者名をジョシュアの名前にしたのでは? という風にも考えたが、オリジンにいる時クライヴはジョシュアの死を受け入れていたように見えた。また、他の誰でもない自分の物語を書いておいて、著者名に弟の名前を起用するのは腑に落ちないように感じる。クライヴが書いているのだとしたら「最愛の弟に、この物語を捧げる」とか最後のページに書きそうなものだし、著者名に入れるとしても「共著」として自分の名前と連名で入れる気がする。それであればまだ、「兄弟の物語」として納得もできるからだ。
ジョシュアの蘇生について。
オリジンでの一件でジョシュアは死亡してしまうわけだが、アルテマを倒しその力を吸収したクライヴは、《理》を破壊する前にジョシュアの身体を再生させている。
エフェクトを見るに《フェニックス》の力を使っているように見える。ただ、いかにフェニックスの力と言えども死者を蘇生させる能力はないとクライヴは言っていた。ただしそれは、《フェニックス》が他者に力を使った時の話である。《フェニックス》自身の蘇生可否については不明瞭な部分が多い。実際、《転生の炎》をつかったフェニックスが復活する様は(あれをHP0=死と捉えていいのかは怪しいが)最初のイフリート戦に存在する。また、肉体の内側にアルテマを閉じ込めた際も、フェニックスの能力で破壊と再生を繰り返しているとのことらしく、生命力が高いことは確かだろう。そもそも「不死鳥」の異名を持つ召喚獣である、他人はともかく自分は蘇生できそうなものだ。
ただ、クライヴが意図的にジョシュアを蘇生させたか。と言われると「NO」だと思う。すでにクライヴは死を受け止めていたように見えるし、最愛の弟の亡骸をあのままにしておきたくない、という気持ちで肉体を再生させたのではないだろうか?
過去サブクエでベアラーの少女が死に、それを受け止められない人間の女の子に対して「死を受け止めよ」と言っているところからも、たとえ蘇生できたとしても手を出さなそうな雰囲気はある。
ここでもう一つ気になってくるのが、わざわざアルテマくんが教えてくれた《完全生命魔法レイズ》の存在だ。なんであのタイミングでそんなこと言いだしたのか、いつの間にそんな格の高い魔法になったのか、普通のレイズと違うのか……性能面は不明ではあるが、少なくとも保存中のアルテマーズを復活させることができるすごい魔法で、使用するにはクライヴの身体が必要らしい。クライヴがこの魔法の使い方を知っているとは思わないが、意図しない形で発動している可能性は否定できない。使用する対象はフェニックスのドミナント、使用する人間は神の力すら取り込み、世界中のエーテルを一挙に握っている男という状況だ、今まで加護としてもらっていたフェニックスの力を返す、あるいは受け取っていた力の一部を戻すなどあの描写にはいろんな解釈ができると思う。
《完全生命魔法レイズ》はどんな魔法なんだろうか?
レイズと言えば、FFシリーズでもおなじみの蘇生魔法だ。白魔法に分類され、ある程度レベルが上がると使えるようになる(作品にもよる)。しかしFF16においては、「完全生命魔法」と謎の枕詞が付く。「完全蘇生魔法」ならわかるが、「完全生命魔法」とはいったいなんぞや? といった感じだ。
ここからは考察だが、《完全生命魔法レイズ》は魔法の対象となるものに命を宿す魔法なのではないだろうか? 「蘇生とおんなじじゃね?」って感じがするかもしれないが、蘇生は「既に失われた命を蘇らせること」であり、完全生命魔法はその名の通り「対象に命を吹き込むことができる」と解釈できるのではないだろうか。例えば肉の塊に命を吹き込み生物とする、ロボットに命を吹き込み意志を以て行動できる存在とする、などだ。
言い換えれば「器」を作る、もしくはその元となるものを作る大魔法であり、かつてアルテマが人間を産み落とした際に使用したものと同じ・近しいものだと思う。
その結果、ジョシュアは蘇生されるがそれは《フェニックスの器》としてのジョシュアであり、中身である自我は希薄な状態で……とか、そんな感じで蘇生されて新たな物語に繋がっていくのではと妄想している。
また、ジョシュアの自我についてはかつてアルテマがこんなことを言って驚いていた描写がある。
これらのことから、器として蘇生されてしまったうつろなジョシュア。その中身を取り戻すための物語というのも想像できて楽しい。
この調子でディオン殿下も無事に勝ってきてほしいのだが、ディオン殿下については描写が少なく、どうなったのか全く想像がつかない。ただ予備動作なしで数十m後ろにある船の甲板にジャンプできる(別にドミナントとか関係なく)人外じみた肉体性能を持つ御方である。空中戦は竜騎士の得意分野だし案外普通に生きていそうな気もする。
あれだけバカスカバハムートの能力を使ったにもかかわらず、石化(とはいえ全身鎧なので肌がわからないのだが)も広がってなさそうに見えるので、颯爽とジャンプして戻ってきてほしい……殿下!!
召喚獣と七つの大罪+1
FF16としてはこれ以外にもまだいくつか、解き明かされていない大きな謎が存在している。その最たる例が《伝説のリヴァイアサン》だ。
なんでリヴァイアサンだけ伝説扱いなのか、本編クリア後にゲットできる伝説のポケモンみたいな立ち位置とでもいうのだろうか? そもそもアルテマは召喚獣の力をクライヴに喰わせ、完全な肉体にすることが目的だったはず。火・水・雷・土・氷・風・光・闇と8体いるはずの召喚獣の内、リヴァイアサンだけは例外的に無視され7体にとどまっている。
また7という数字や先日発売されたサントラの内の一曲「The Se7enth Sin」から「七つの大罪」の存在も頭によぎる。七つの大罪と召喚獣、また大罪に関連する美徳も組み合わせて考察するとこんな組み合わせになるのかなと思った。
傲慢 ⇔ 謙虚 / バハムート(ディオン・ルサージュ)
憤怒 ⇔ 忍耐 / イフリート(クライヴ・ロズフィールド)
嫉妬 ⇔ 感謝・美徳 / シヴァ(ジル・ワーリック)
怠惰 ⇔ 勤勉 / ラムウ(シドルファス・テラモーン)
強欲 ⇔ 慈善・寛容 / タイタン(フーゴ・クプカ)
暴食 ⇔ 節制 / オーディン(バルナバス・ザルム)
色欲 ⇔ 純潔 / ガルーダ(ベネディクタ・ハーマン)
《ドミナント》として力に呑まれていない「人」の部分が右側(美徳)、力に呑まれ始めると左側の悪徳に寄っていくのかなと思った。正直《怠惰》と《暴食》は逆でもいいのかもしれないが、ピンと思いつかなかった。あとシヴァを《暴食》に入れようかとも思った。
リヴァイアサンについては登場していないので除外しているが、本来は《嫉妬》の枠に収まるのが通例である。《嫉妬》と対応関係にある悪魔の名はレヴィアタン、つまりリヴァイアサンであるからだ。
また、フェニックスについてはそもそもカテゴライズすべきか悩んだ。どうもイフリートとニコイチ感がするし、ゲーム中でも若干別枠で扱われているためだ。また、《怠惰》と関連する幻獣はフェニックスと言われているが、どうもしっくりこない。あと単純に7枠しかねぇのである!!(致命的)
一応「八つの概念」というのもあるそうなので、詳しい人には是非考察してもらいたい。
ただこういう考え方もできて面白いなぁと思うし、聖書に関連するワードや物語は世界中どこでも誰にでも通用する、世界最強の物語である。世界で最も売れている本は伊達ではない。
クライヴの成長について、私も聖書の物語から思い浮かんだことがあったので、どこかで記事に纏めたいと思う。
まとめ
いやー語った語った。ここまで書いておいてなんだが、完全に妄想の産物が含まれている部分も多々ある。というかほとんどそうであるため、こういう考え方なんだな、程度にとどめておいていただけると幸いである。
先にも言った通り、この物語は意図的に結末が描かれていないように思える。それは、それぞれのプレイヤーに結末を考え、語ってほしいのだと思うからだ。面白い考え方があれば取り入れてみてもいい。だが、究極的にはこの物語をプレイヤーである貴方が「そう」感じたのであれば、それが貴方にとってのすべての物語だ。それがどのような感情であったとしても……
なので、是非クリアしたあとにはプレイヤーである貴方の考えを語ってほしい。そしてこの書き散らしがその考えを支えるものになってくれれば、とてもうれしく思う。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?