[散文詩]完全卒業読本
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卒業したい、その気持ちに嘘はありません。
古い世界にはさよならを言って、新しい世界に飛び込んでみたいんです。
でも、この馴染みのある世界を手放すのは、もったいない気がするし、怖いじゃないですか。
知らない世界で何が待ってるのか。楽しいことばかりじゃないはずで、しんどいことも一杯あるはずで。
卒業したい、でもしたくない。右へ左へ振り子が揺れます。
一生こうして迷っていたら、卒業できずに終わりでしょうか。
だから、とにかく、卒業することにしたんです。
宙ぶらりんの状態からは、すっきり足を洗うことにしたんです。
足を洗って、さっぱりしましたね。新しい世界は刺激に満ちていた。大変な目にも遭ったけど、自分が変わることで、世界は拡がりました。
ところが、時間が経って、ふと気がつくと、なんだか昔と大して違わない世界にいるんですよね。
いや、ここは確かに昔の世界とは違います。ぼく自身、前のぼくとは違います。
なんだけど。
なんだけど、やっぱり……。
卒業すれば、それだけでいいなんて、そんなわけもないですもんね。
卒業だけが目的なら、そんなに難しいことじゃないはずですし。
誰かが決めた仕組みを卒業したって、卒業証書がもらえるだけです。
証書もなにかの役には立つでしょうけど、ほんとうに大事なのは、結局じぶんの心のあり方ってことで。
どこそこを卒業したなんてことに、いつまでもしがみついていたら、そんなの全然卒業になってないわけで。
あちこちで学んだことが、経験を通して自分の血肉になったとき、ついに卒業のときがやってくるわけで。
おめでとう。
人の目を気にする自分から、ついに卒業できましたね。
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