キョウフ。
恐怖には決まり事がある。
そんな体験を書きたい。
時系列があるので、
もし良かったら、こちらも読んで頂きたい。
モロッコに到着した日に、カサブランカを発った。
二度と忘れる事の無い、2つ目の都市。
アル・ジャディーダ。
電車…いや列車に揺られながら、
アラビア表記のただ甘いだけの菓子をほうばり、
窓の外を眺めていた。
そこには果てしなく畑が広がっている。
そしてたまに
何処に向かっているか検討もつかない人が何匹かの羊を従えて、馬車に乗っている。
「いや周りなんも無いけど、家とか帰れるん!?」くらい畑が広がっており、スピードも遅い。
やがて、綺麗な夕焼け色に染まった畑と電車の影に心打たれ、列車内しか見えなくなった。
4列シートの壁側の足元には
隠し扉のようなものがあり、
それを開くとゴミ箱が出現することを
前のシートの人から学び、多少の感動を覚えた。
そこにアラビア表記の菓子のゴミを得意げに入れる。
「っぽかった」ことに少し満足感を感じる。
そんなことをしていると、アルジャディーダに到着した。
ここで、この旅最大の後悔をすることになるとは思っていなかった。
タクシーのぼったくりに心底警戒をしていた僕達は、
駅から街の中心部まで歩くことに決めた。
4キロ。
21:00。
街灯はある。それが逆に怖い。
ビルが半壊している。
馬がゴミを漁っている。
道路は全てひび割れている。
たまに水溜りとかある。
人がいない。
人が見えた。
見えたら見えたで怖い。
もう何が怖いかもわからない。
日本にもあるから安心したのだろうか。
閉店まじかの小さなスーパーに寄った。
そこでパンテーンのshanpooと書かれたものを購入し、
気持ちを落ち着かせる。
パンテーンを片手に恐怖を抑えながら進む。
すると光が賑やかな場所が見えた。
その前には暗闇と街灯に照らされている
道端に佇む、まばらな人達。
進むしかないアジア人2人。
「ニーハオ!」「ニーハオ!」「ニーハオ!」
どこからともなく聞こえてくる。
「ニーハオちゃう!こんにちは、や!」
正す。
3.7キロ歩いた僕達の足ではこれが限界である。
ガシっ!
リュックを掴まれる。
「死」を感じる暇もなく、
防衛本能が働き、振りほどく。
さすがと言わざるを得ない人の身体。
「え!なに!?びっくりしたぁ!」
と言いながら振り返る。
おどけている。
ドラクエのモンスターで1番おどけているやつより
おどけている。
両手はバイバイする時より良く開き
指は奇妙に曲がっているように見えた。
両腕と両足は左右でシーソーのような物理法則があるのだろうか。
顔は子供が親にイタズラをした時のように喜び
弾ける純粋な笑顔である。
いかにもアラビア語を話そうな顔立ち。服装。
そして髪の毛は当然のごとく、アフロであった。
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