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インポッシブル・フーズが名前を変えるとき(前編)

2020年、まだ2ヶ月しか経過していないというのに、遥か未来に来てしまった感覚を覚えている。

地球温暖化、南極高温化、森林火災、脱プラスチック、フードロス、新型ウィルスによるパンデミック。ブームのように訪れ「またか」という感情を抱き続けてきたか、こんなにSFワードが毎日身近で耳にすることになるとは想像していなかった。

そう、今は2020年であり、かつての未来であり、描いていた物語はサイエンスノンフィクションとなって、ディストピアな現在を綴り始めているのだ。予期していたはずなの、予知していたはずなのに、いざ目前にするとなす術を失うのは単体で生きることのできない人類の特性なのだろうか。しかしその中でも生きる術を生み出すことができるのもできるのもまた人類の特性だろう。希望を持つこともそうだろう。

僕には考えて綴ることくらいしかできないが、それが自身の行動に繋がり、周囲への行動に影響し、それがバタフライエフェクトとなって未来を救えたら良いと思い、SFという人類の多大なる遺産とともに、希望的未来を綴っていきたいと思う。


今回のテーマは「食品テクノロジー」


昨年、南米アマゾンで大規模な火災があったのは記憶に新しいと思います。人口70億時代、その我々の食物となる家畜は人口の10倍におよび、家畜たちの餌を栽培する土地には大規模な畑が必要となります。この火災はそういった工業型畜産のための畑と化すために引き起こされたと言われ、肉食を続けることは環境破壊に繋がるという意識が少し高まったように感じられました。そのほかにも食品廃棄によるフードロスも話題となり、かつては食糧不足を囁かれましたが、昨今はそもそも現代社会の食生活のシステム自体によりメスが入っているように感じられます。

そんな生きていく上では必要不可欠な食に対し、科学の力で解決しようと取り組んでいるのは「食品テクノロジー」。数々のテクノロジーが既に取り組まれていて、次世代のユニコーンとして多くの期待が寄せられています。

例えば人工肉や乳製品を製造・開発している「インポッシブル・フーズ」。人工肉や代替肉には、小麦で作ったグルテンミートや大豆ミートといったものが以前からありましたが、同社が提供するインポッシブルミートは大豆などを原材料とした食物由来ではありますが、独自製法によって肉独特の食感や味、風味を再現することに成功した人工肉です。偶然にも以前、このインポッシブルミートを食べたのですが、それが何なのかわからずに食べたので、私には肉そのものでした。近々、日本にも進出が噂されており、人工肉が世界的に普及すれば家畜は最低限で良くなり、動物性肉と植物性肉の価格は逆転していくかもしれません。

しかし植物性肉が瞬く間に普及したとした場合、大豆などの栽培需要は変わりません。家畜の餌消費量と人工肉の製造消費量とではどちらが少ないのかはわかりませんが、そんな簡単に動物性肉を絶てるわけもなく、ある時は逆効果を生み出す可能性も考えられますが、我々には植物における遺伝子改良という技術があります。遺伝子改良は交配という長期的な方法ではなく、ゲノム情報の書き換えもあれば、栽培環境のコントロールによって栄養成分も変えることが可能です。目的に適した遺伝子情報の植物を、製造スケジュールやボリュームに合わせて育てていくことも可能でしょう。他にもインポッシブルフーズの場合は、微生物を活用することで植物でありながら肉に近い自然なタンパク質を作り出すことにも成功している。微生物や昆虫を使った食肉タンパク質の代替も注目されています。

いっとき、オーガニック食品が流行し、安全性や健康のためにできるだけオーガニックを選択する人が多くいます。私もそうです。しかしそれは現在社会が抱える食品問題と少々逆行するものを持っており、近い将来、消費という観点においてその取り組みへの評価は変化するでしょう。自身の健康ではなく、地球の健康のために人工食品を選択する未来。そうなったとき、「インポッシブル・フーズ」は自身のインポッシブルという冠を脱ぎ捨て、新たな名前を選択することになるでしょう。そうなったときはきっと、人類は新たな一歩を踏み出すことになるはずです。命を繋ぐために、作り出し、消費するというサイクルの中で、命を奪うというプロセスを取り除くことに成功した初の肉食動物になるかもしれません。

では、この人類の食物革命がさらに未来を描いたとき、どのような未来が待っているでしょうか。それはまた次回。

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