【通信講座】 小説「サミダレ町スケッチ」 講評
わずかな枚数で作者独自の世界観を描破したモダニズム風の佳品。
稲垣足穂、内田百閒に比肩する奔放な個性が創造した
無時間、無国籍の小宇宙に魅了される。
ものうげな緊張感、しずかな焦燥、瞑想のような
祈りのような退屈さ。
一貫する奇妙な味の空気が見事。
趣向そのものは
あたらしいわけではないが
厳格な構成、抑制された文体、無駄のない描写に
ひさしく経験しなかった読書のよろこびを感じる。
(作者より)
気になるところとして、適性について考えています。
ずっと純文学らしきものを書いていた身なのですが、
エンタメ、娯楽のほうにもいま手を出していて、
自分がどちらに向いているかがわかっていないところです。
また、書けている部分、書けていない部分などご指摘ください。
これまで、新潮に一度、太宰に三度、それらが一次通過止まりです。
その先に進むために何が足りないのか、やはりわかりません。
現在、「純文学」「エンタメ」の区分など
掲載誌によって判断するしかない。
作者が
川上弘美を意識すれば「純文学」だし
森見登美彦のように書こうとすれば「エンタメ」になる。
あまり深刻に考える必要はない。
新人賞に応募するなら
書きたいように書いて
枚数と〆切で応募先を決めればいい。
興味の範囲が広く、観察が正確で
丁寧に、よく書けているので
なにかたりないものがあるとは思わない。
ただちに新人賞で結果を出したいなら
フェミニズム小説、戦争小説、コロナ小説、リベラル小説にかぎるが
あまりおすすめしない。
私は「つまらない」「長い」「難解な」小説を書こうとしていたとき
もっとも新人賞にひっかかった。
こんなにむなしい創作はない。
私に太鼓判を押されたところで安心はできないかもしれないが
このまま作者の個性をのばしていけばいいと思う。
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