【通信講座】 小説「毛の塊」 講評
当然ながらモーパッサン『脂肪の塊』と比較しましたが、特に関係ないようでした。
私小説風の淡色で単調に書かれていますが、ねらったものなのか分かりませんでした。織田作之助の「お茶漬け小説」のようでした。
最後のシーンは色彩的にうつくしく、気持ち悪く書けそうなところなのに、鮮烈なイメージは皆無でした。嗅覚をも動員しようとしていますが、成功していません。
誤字や、わざとかもしれない破格は問わず、あまり傷はないようですが、おもしろくはありません。
イメージの躍動、想像力にみずからブレーキをかけて、日本近代文学的「お茶漬け小説」に近づけようと努力している印象でした。
こんなことを書かれたら、ふつうはさらに過激な結末を期待します。
小説はおもしろく書いていいので、わざとつまらなく書くのをやめてください。
作者より
・今回のような内容や書き方を続けていってもいいのか
20年くらいこの調子で書けば、純文学がんばったで賞の芥川賞をもらえると思いますが、おもしろくはならないでしょう。
語り手の執着が気持ち悪いくらい描写されていないので、ふつうの人が日記を書いたくらいにしか感じませんでした。
個人的には、そのような小説を嫌悪しています。
おもしろく書きたいなら、小説の固定観念、具体的には日本近代文学の固定観念から自由になることです。
・暗い小説を書く時に意識した方がいいことはあるか
別に暗いとは思いませんでした。無色透明、無味無臭の「お茶漬け」でした。
個性的な執着を追求すると、かならずユーモアが生まれます。
しかし、それは結果としてそうなるのであって、はじめからくだらない笑いをねらうのはやめたほうがいいでしょう。
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