【小説の書き方 132】
読者が良き読者になるためには、どうあるべきか、答えを四つ選びなさい──
1 読者は読書クラブに属するべきである。
2 読者はその性格にしたがって、男主人公ないし女主人公と一体にならなければならない。
3 読者は社会・経済的観点に注意を集中すべきである。
4 読者は筋や会話のある物語のほうを、ないよりは好むべきである。
5 読者は小説を映画で観ておくべきである。
6 読者は作家の卵でなければならない。
7 読者は想像力をもたなければならない。
8 読者は記憶力をもたねばならない。
9 読者は辞書をもたなければならない。
10 読者はなんらかの芸術的センスをもっていなければならない。
学生たちの解答は、主人公と情緒的に一体となるとか、筋のある小説とか、社会・経済的観点とか、そっちほうにひどく片寄った傾向のものだった。もちろん、ご推察のように、良き読者とは想像力と記憶力と辞書と、それからなんらかの芸術的センスをもった人のことである──この芸術的センスを、機会あるごとに、わたしは自分自身のなかに、ほかの人々のなかにも、なんとか育もうと思っている次第なのである。
ナボコフ『良き読者と良き作家』
【鑑賞・批評 23】再掲
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