【通信講座】 小説「月下の悪魔」 講評
『【通信講座】 小説「拝み屋雲水の事件簿 拝み屋雲水③ 花鬼」 講評』で
9万字の長編。
冗長すぎる。
10枚で書ける。
読書体験がこんな苦行であっていいだろうか。
14/131 までしか読めなかった。
耽美的文体を志向しているのは分かるが、あまりにもぎこちない。
一挙手一投足をいちいち書くので
遅々としてストーリーらしきものが進まず
非常なストレスを読者に感じさせる。
と書いた。
読書体験がこんな苦行であっていいだろうか。
6/48 までしか読めなかった。
耽美的文体を志向しているのは分かるが、あまりにもぎこちない。
一挙手一投足をいちいち書くので
遅々としてストーリーらしきものが進まず
非常なストレスを読者に感じさせる。
また、安吾とエーコを引用しなければならない。
小説としての散文の上手下手は、所謂文章――名文悪文と俗に言はれるあのこととは凡そ関係がない。所謂名文と呼ばれるものは、右と書くべき場合に、言葉の調子で左と書いたりすることの多いもので、これでは小説にならない。漢文日本には此の弊が多い。
小説としての散文は、人間観察の方法、態度、深浅等に由つて文章が決定づけられ、同時に評価もさるべきものであつて、文章の体裁が纏つてゐたり調子が揃つてゐたところで、小説本来の価値を左右することにはならない。文章の体裁を纏めるよりも、書くべき事柄を完膚なく「書きまくる」べき性質のものである。
坂口安吾『ドストエフスキーとバルザック』
(性行為の描写も含んだ)映画のなかで、登場人物が車やエレベーターに乗り込むとき、言説の時間が物語の時間と一致するかどうか確かめるのです。フローベールはフレデリックが長い旅行をしたと言うために一行を使いますが、普通の映画のなかでは、登場人物が飛行機に乗ったかと思うと次のカットですぐに到着しているのにお目にかかります。ところがポルノ映画では、だれかが一〇ブロック先まで車に乗っていくとなると、車は一〇ブロック—現実の時間で—移動します。だれかが冷蔵庫を開けてテレビをつけてソファで飲むためビールを注いだとすると、みなさんが家でそれをするのにかかるのと同じだけ時間がかかるのです。
ウンベルト・エーコ『小説の森散策』
個性的文章、定型を越えた表現を志向していながら
(未熟な作者の通弊だが)
作者の不正確で稚拙な文体は、まったくの無個性。
小説「拝み屋雲水の事件簿 拝み屋雲水③ 花鬼」とまったく同じ欠点があり
まったく同じように読みすすめるのが苦痛。
読者を感動させるために
作者が感動しながら書く必要はない。
感傷的な筆致で盛りあげることに急でありながら
遅々としてストーリーらしきものが進展しない。
つまらない、長い、古い、くだらない、複雑、難解
という小説への先入観は捨てなさい。
作者が読者として感動した小説のように書けばいいだけなのだが。
あなたが創作をこころざしたきっかけの小説が
このような文章でないことだけは断言できる。
(作者より)
お聞きしたいことは、
①全体的に説明不足ではないか
②流れが冗長ではないか
③文体と題材は合っているか
の3点です。
今後は、ギルドの人間との戦いの中で
①遺品の特徴(強さの順は何で決まるのか、など)
②ギルドなどの組織ができた理由
③サトルが感情を理解し人間らしくなってゆく過程(成長の過程)を描いていく予定です。
①全体的に説明不足ではないか
とにかく冗長。
「序」が絶対的に不要。
説明としてさえ不足で、なんの機能もしていない。
小説以前、説明以前の設定でしかなく
作者のなかだけで意識していればいいのであって
書く必要、読ませる必要がない。
すべては、ひとりの男の死から始まった。
男は形ばかりは人であったが、人の智を超えた力をいくつも持つ化物《バケモノ》であった。
瞬間移動、物体の具現、未来予知……。
ありとあらゆる力を持った男は、それ故に孤独を極めた。
何も見えず、何も聞こえぬ無限の闇。
そこにたったひとりで放り出されたかのような。そのあまりにも深く暗い孤独は、男を苛み、少しずつ狂わせていった。
男は死んだ。
孤独に打ち震える心に、ただ一滴《ひとしずく》の慰めすら受けることがないまま。
男は、死んだ。
②流れが冗長ではないか
冗長すぎる。
エーコに「ポルノ」と言われるだろう。
③文体と題材は合っているか
存在したことのない(「個性的」の意味ではない)日本語、文体で
独創性皆無のキャラクター、ストーリーを書こうとする
きわめて無個性な作品。
今後は、ギルドの人間との戦いの中で
①遺品の特徴(強さの順は何で決まるのか、など)
②ギルドなどの組織ができた理由
③サトルが感情を理解し人間らしくなってゆく過程(成長の過程)を描いていく予定です。
申し訳ないが
なんの興味も持てない。
私はこう思う。
以下、「一文一文を上げて細かい文法のミスを手直ししてあげている」のがどういう意味か
考えてみてほしい。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ガリガリと不快な音を立てる右耳のレシーバーに、意識を集中する。レンガ造りの倉庫に預けた背が冷え切って、浮きすぎている肩甲骨が痛みを訴えるが、そんな些細なことは気にならなかった。
「浮きすぎている肩甲骨が痛みを訴える」
「背中が痛い」と言えばいいところを、こんなにまわりくどく表現する必要があるのか。
そもそも「背中が痛い」ことがここで重要なのか。
『そっちに行った。サトル、やれ』
短い言葉。
それだけで十分だ。
長すぎる。
受信者は当然「サトル」であり
当然「そっち」であり、「行った」に決まっている。
「やれ」以外の合図は不要。
外套の内ポケット。
そこに入れた万年筆が息衝く。
体の内側の何かがゆっくりと吸い込まれ、素より波立つことの少ない心が一層凪ぐ。
吸い込んだ潮風が肺を焼き、喉を突く。込み上げた空気の塊を無理やりと肺に押し戻し、一度ギュッと胸の辺りを握り締めた。
強調すべきは「内ポケット」という場所だろうか。
「体の内側の何かがゆっくりと吸い込まれ」
漠然としすぎていて意味がない。
「吸い込んだ潮風が肺を焼き、喉を突く」
「吸い込んだ潮風」がどのような経路で「喉」「肺」に至るか考えてごらんなさい。
「一度ギュッと胸の辺りを握り締めた」
主語。
呟くほどの僅かな声。
トートロジー。
いにしえの昔の武士のさむらいが山の中なる山中で馬から落ちて落馬して女の婦人に笑われて赤い顔して赤面し家に帰って帰宅して仏の前の仏前で短い刀の短刀で腹を切って切腹した。
100回読み返して暗記しなさい。
闇が震え、凝る。
暗く、昏く、膨れ上がる。
やがて生まれた夜よりも濃い闇が二匹の黒狗の形を成した。生まれた狗がそれぞれ、音もなく倉庫街を疾駆する。バタバタという足音に向かって、真っ直ぐに。 闇の中を風がゆく。
不気味に周囲に横たわる夜を、ふた筋の声が裂いた。
作者自身がなにを強調すべきか
自分の作品について理解していない。
読者を感動させるために
作者が感動しながら書く必要はない。
感傷的な筆致で盛りあげることに急でありながら
遅々としてストーリーらしきものが進展しない。
つまらない、長い、古い、くだらない、複雑、難解
という小説への先入観は捨てなさい。
その頭に手を伸ばし、やわりと触れると同時。彼らは闇に溶け姿を消した。
ひとつ息を吐く。
満月から少しだけ欠けた月が相変わらずこちらを見下ろしている。それがなぜだか笑っているように見えた。
「やわりと触れる」
存在したことのない(「個性的」の意味ではない)日本語、文体。
作者自身がなにを強調すべきか
自分の作品について理解していない。
読者を感動させるために
作者が感動しながら書く必要はない。
感傷的な筆致で盛りあげることに急でありながら
遅々としてストーリーらしきものが進展しない。
つまらない、長い、古い、くだらない、複雑、難解
という小説への先入観は捨てなさい。
生きる理由などない。
ただ死ぬ理由がないから、生きるのだ。
死とはすなわち状態変化。変化には理由がいる。
私にはその理由がない。
だから生きるのだ。
形ばかりが人間の、「心なき野良狗」と笑われようと。
私は、生きるしかないのだ。
読者を感動させるために
作者が感動しながら書く必要はない。
Twitter の文体に影響されるなら
もう Twitter はやめなさい。
先を行く外套の背に月光が明るく跳ね返った。まるでそれ自体が発光しているように見える黒い背に、サトルの中で既視感が生まれる。
「既視感が生まれる」
存在したことのない(「個性的」の意味ではない)日本語、文体。
作者自身がなにを強調すべきか
自分の作品について理解していない。
読者を感動させるために
作者が感動しながら書く必要はない。
感傷的な筆致で盛りあげることに急でありながら
遅々としてストーリーらしきものが進展しない。
つまらない、長い、古い、くだらない、複雑、難解
という小説への先入観は捨てなさい。
乱雑に玩具が詰まった箱をひっくり返すように、頭の中を探す。答えは見つからない。
「ひっくり返す」と「探す」は対応しない。
ついて来なくなった気配を不審に思ったのだろう。マモルが足を止めて振り向いた。一度小さく首を傾げて戻ってくる。サトルの目の前に立つと、小さな子どもにするように少々膝を屈めて目線を合わせた。
エーコに「ポルノ」と言われるだろう。
しかし今回ばかりはそう簡単に答えが見つからないことをサトルは知っていた。何せ自分の記憶の話なのだ。思い出すという行為は、複雑な問題の解決策を考えるよりも、ずっと難しい。思い出そうと意識すればするほど、答えは近づくどころか彼方に逃げて行ってしまうからだ。
あたりまえ。
つまらない、長い、古い、くだらない、複雑、難解
という小説への先入観は捨てなさい。
こんな一般的なことをこむずかしく思索するのが小説だと思っているなら
あなたの読書経験はまずしすぎる。
必要のない嘘を吐くことはいつだって得策ではない。
あたりまえ。
上機嫌に返したマモルに、サトルは「そんなものですか」と首を傾げた。そんな仕草を見て、上司は「お前にはまだ難しいかもな」と言って今度は眉尻を下げて笑う。悲しそうな顔だ。なぜ、そのように笑うのだろう。
エーコに「ポルノ」と言われるだろう。
思考の海にさらに潜っていこうとするサトルを引き留めたのは「ほら、帰るぞ」というマモルの声だった。
「思考の海にさらに潜っていこうとする」
作者自身がなにを強調すべきか
自分の作品について理解していない。
ハイブリッド式の自動車が静かに夜を駆ける。滑るように走る車は、乗っていてもエンジンの音がほとんどしない。静けさがひどく心地良い。
車とは皆、うるさいものだと思っていた。
今にも崩れそうなマチから見える道路。そこを走る車はいつも、耳を突くエンジン音を撒き散らし、ほんの僅かに訪れる穏やかな眠りをも妨げたものだった。
だからマモルの愛車の一台であるこの車に初めて乗ったとき、こんなに静かな車もあるのかと、大層驚いた。音の消えた夜の街を走ってもほとんど音が聞こえないなんて、と。ぼんやりとそんなことを思い出しながら、サトルはゆるりと外を眺めた。
「しずかな音の車である」というごく一般的な内容を
ここまで感傷的に書く必要がない。
つまらない、長い、古い、くだらない、複雑、難解
という小説への先入観は捨てなさい。
こんな一般的なことをこむずかしく思索するのが小説だと思っているなら
あなたの読書経験はまずしすぎる。
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