邦楽『花言葉』(Dragon Ash) ボーナストラックの妙
「CDが売れない」と耳にするようになって久しい。実際どれくらい落ち込んでいるのかはわからないけど、僕も買わなくなった。(ほとんど)全てがサブスクでまかなえて、聴きたい時に聴きたい曲が聴ける。こんなに便利で幸せなことはない。
ただ、CDはCDで「ならでは」の楽しみがあった。
例えば歌詞カード。かっこいいアーティスト写真が載っていたり、何かギミックが施されていたり、寝っ転がりながら眺めたり…あの手この手で工夫されていた。CDを買って、初めて歌詞カードを開くときのワクワク感は、言い表せない。
そしてもうひとつの楽しみ、それはボーナストラックだ。
CDをトレイにセットしてディスプレイに目をやると、ふと気付く。
「あれ、やけに総再生時間が長いな」とか
「なんか歌詞カードに乗ってるよりも曲数が多い?」とか。
それこそがボーナストラックが収録されている証である。こうなるとワクワクは最高潮だ。
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ボーナストラックと聞けば、僕はDragon Ashの『花言葉』がパッと浮かぶ。
初めて聴いたときは、アルバムに収録されている他の曲と比べると印象は薄かった。とはいえ「いい曲だな」とは思っていた(他の曲が持つ凶暴性やメロディックさの方が印象的だったのだ)。あとずいぶんと後の方に収録されているので、辿り着くのが大変だった(前後にミニコントを挟む)。
だけど時が経った今でも、この『花言葉』を聴き続けている。なんなら、この曲だけを聴いたりもする。この曲はもはやボーナストラック(=オマケ)ではない。
静かなアレンジに、不穏さも見え隠れする歌詞。そしてどことなく物悲しいメロディ。当時のDragon Ashの「かなりイケイケでカッコいい兄ちゃんたち」というイメージからは少し離れている。
だけど、この曲が彼らの本質でもあったのだ。彼らはイケイケなイメージとは対照的に、儚さを歌う歌も多かった。その後の数年間は陰鬱な雰囲気を漂わせる作品を残している。ちなみに僕はその頃の彼らの音楽が大好きである。異国情緒漂うあの感じが最高だし、唯一無二の音楽をやっている。
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これを「便利さのおかげで失ったもの」と言ってしまうのは大袈裟だし少し違う。だけど、あの頃のようにCDを買って、ワクワクしながら急いで家に帰って、プレーヤーに乗せて、再生ボタンを押すあの感触は、しばらく味わっていない。
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