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一つの作品を長く届け続ける

皆さん、こんにちは。小説家の川井利彦です。

今回は「一つの作品を長く届け続ける」ことについて私の考えをお伝えします。


▼重版と増刷の違い

作家のようなクリエイティブな現場では「新作至上主義」みたいものがあって「どんどん新しいもの、新作を出していかなければいけない」という空気が流れています。

もちろん新作を出すことは悪いことではありませんし、創作活動を続けていく意欲を高め続けるためにも必要なことだと思います。

その一方で「一つの作品を長く届け続けること」も大切だと感じています。

出版業界で言えば、いわゆる重版、増刷と呼ばれるものです。

「重版出来!!」というドラマが流行ったこともありましたが、出版業界では「重版(じゅうはん)」「増刷(ぞうさつ)」と呼ばれ、長く売れ続けることが重要であると位置づけられています。

そんな出版業界の中で、どうやって一つの作品を長く届け続けていけばよいのでしょうか。
正直私も「これだ!」という答えが見つかってはいないのですが、一つ可能性は感じたものがあります。

それは……『重版』

先ほどお伝えした「重版」と「増刷」は同じ意味だと思っている人も多いと思いますが、実は違います。

▼増刷
「本の内容を変えずに再販すること」

多くの人がこのことを「重版」と思っていたのではないでしょうか。

増刷のメリットは、人件費やデザイン費など余計な費用がかからないこと。同じ内容を刷って再販しているので、どんどん利益率は上がっていきます。
出版社も「増刷」「増刷」と繰り返していくことを望んでいます。

一方の重版は……

▼重版
「本の内容を変えて再販すること」

例えば、辞書。
時代によって、新しい言葉や使わなくなった言葉が出てくるので、都度内容を変えて販売しています。

重版の場合は、内容を変えているので人件費やデザイン費など諸経費がかかってきます。


▼一つの作品を長く届け続けるための1つの答え

このように『重版』と『増刷』で内容が違います。

ここまで読んでもうお分かりでしょうか?

「この『重版』を小説で行う」

ようするに、同じタイトルで内容を少しずつ変えながら、何度も再販する。
これができれば、一つの作品を長く届け続けることができるのではないか。

自分の書き上げた小説を読んで……

「ここの表現はもっとこうしたかった」

「この場面も追加したかった」

こんなふうに思ったことがある人は、大勢いると思います。

それは『重版』という形で実現する!!

小説は一度で完成するものではないと思います。何度も書き直し、ブラッシュアップしていくもの。当然文章力だって、昔よりも上がっているはずなので、よりクオリティの高い作品に仕上げることができるはず。

これまでは「それは次回作、新作で発揮する」というのが定番だったと思いますが、今後は違います!!

「一度書き上げた作品を書き直して何度も発表する」

さらに現代は出版社を通さず個人で本を出版することができます。
昔は『重版』したいと思っても、出版社が首を縦に振らなければ実現することはほぼ不可能です。

ですが、今は出版社を通さず出版できるので、出版社の許可を得る必要はありません。自分だけの意志で何度も『重版』することができます。

まさに時代ともマッチした考え方なのです!

これが私が考える「一つの作品を長く届け続ける」の一つの答えです。


▼人は答え合わせを求めている

ここで「一つの作品を長く届け続けること」のメリットをお伝えします。

・メリット
「人は答え合わせを求めている」

何度も書き直すにしても、結末や大まかなストーリー展開まで変える必要はありません。
なぜなら、人は「答え合わせ」を求めているからです。

映画「鬼滅の刃 無限列車編」や「THE FIRST SLAM DUNK」が大ヒットした理由の一つはこの「答え合わせ」です。

結末やストーリー展開がわかっているから、人は安心してそのコンテンツを楽しむことができます。
ネットの普及によって情報が民主化され、誰でもいつでもどこでも情報を得られるようになりました。
その社会において、情報を隠すことはあまり意味がありません。

あえて情報を出し、知ってもらい「答え合わせ」で人々に楽しんでもらう。

今後は映画だけでなく、小説もこういった面が必要になってきます。

そういった意味で『重版』(一つの作品の内容を変えて、何度も再販すること)は、読者のニーズに合っていると思います。


いかがでしたか?

まだ何の確証もありませんし、上手くいくのかどうかもわかりません。

ですが、この「一つの作品を長く届け続ける」という考え方は今後とても重要になってきます。

ぜひあなたもその方法を考えてみてください。


最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回の記事でお会いしましょう。

小説家の川井利彦でした。


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