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親の写真、撮っていますか?今こそ始めるべき理由
最近、親と一緒に写真を撮ったのはいつですか?
半年前? 一年以上前? もしかしたらもうずっと撮っていませんか?
親と会ったり、出かけたりする機会があるなら、その機会を大切に、写真をできるだけ撮ることをお勧めします。
なぜ親の写真を撮りたいのか?
大人になると、家族で撮った写真って少なくなりますよね。
何かの集まりで撮った「記念写真」はあるものの、何気ない表情や日常の姿を撮った「スナップ写真」って、意外となかったりします。
でも、考えてみると親と過ごす時間ってもうこの先限られています。
スマホでいつでもなんでも撮影できるようになったのに、身近な親の写真がほとんどないのって、思えば不思議ですよね。
「親の写真って、撮っていないな……」
「なぜ、きれいな景色や好きな植物や、知人とSNSに上げる写真は撮るのに、親の写真を撮っていないのか?」
考えるて、あれ? と思うようになりました。
また、人物写真は、誰かが撮らないと残りません。
特に、家族が見ている表情は、家族が撮らないと残りません。
ただしそこには、感情的な問題もあります。
赤ちゃんが生まれたとき、親が写真を撮りまくるのは、赤ちゃんは「イヤ」とは言わないからですね。
でも、年をとった親は、一方的にパシャパシャ撮るわけにもいかない。撮るならいい顔を撮りたい。
そのためには、親との関係づくりがポイントになってきます。
撮りたい私、撮られることが苦手な両親
いい大人になった40代の私が、親と同居を始めたのが14年前。
前後して私は写真がもっと上手くなりたくて、ミラーレス一眼レフを購入しました。そして、人物写真を練習したくなったのです。
モデル役と言えば、同居している父と母がうってつけ。
でも、二人とも撮られることが苦手で、照れ屋でした。
「写真なんか、ええよ」
「こんな年寄り撮ったってしょうがないでしょ?」
そう言われると、こちらも遠慮してしまいます。
イヤと言っているのに、無理やり撮るわけにもいきません。
しかし、時間をかけて慣れてもらい、写真を撮れる関係を作り、たくさんの写真が撮れるようになりました。
父の遺影は、私が家の中で撮影した、家族に向けた笑顔の写真です。
そして、今も母と出かけるたびに、一緒に写真を撮ったり、おいしいものを食べる母を料理と一緒に撮ったりしています。
「あんたが送ってくれる写真が、いっぱいたまったねぇ」と、母はスマホを見ながら言っています。
親の写真を撮るためにやったこと、考えたこと
1.撮影者に「撮りたい」気持ちがあることが大事
撮る方に「撮りたい」気持ちがあるのが第一条件です。
写真を撮るということは、親を見つめること。
「写真を撮る」ことは、イコール「対象に興味がある、関心がある」ということです。
そのために、自分が撮りたくなるいい表情、くつろいだ表情をしているのはどんなときか、観察するようになりました。
また、母は「お化粧していないから」と嫌がるので、お出かけでおしゃれしてお化粧してきれいになったタイミングで声をかけています。
2.親に写真を撮る許可を得る
「いいよ、いいよ」みたいな感じで、撮りたくないと言われたら、無理に撮ってもしょうがありません。
写真は正直なので、「撮られるのがイヤだな」という気持ちが、顔に出てしまうためです。
同居しているうちの場合は、私がベランダの植物の写真をよく撮っていたので、そのついでに何回も声かけしていたら、父が消極的に受け入れてくれるようになりました。
「カメラの練習したいから、お願い!」という名目でした。
母の方が、「私はいいわ」と手強かったです……。
3.親に「撮られる」ことに慣れてもらう
親の世代は、スマホでいつでもどこでも写真を撮る体験をしてきていないので、写真を撮られることに慣れていません。
写真を撮ったら、「ほら、こんな写真が撮れたよ」と見せましょう。
これをくりかえすことで、だんだんと「自分の写真を見る」ことに慣れてきます。
親も、もう若くない自分を見るのはあまりうれしくないのです。
だから、写真もあまり見たくない。
でも、自然でくつろいだ笑顔や、楽しい時間を過ごしたときの写真を見ると、だんだんと慣れてきます。
4.写真をできるだけきれいに撮る、補正する
できるだけきれいに写真を撮ることも大事です。
写真の基本ですが、人物をきれいに撮るためには、できるだけ明るい自然光のところで撮りましょう。
直射日光は避けて、明るい日陰、あるいは室内の明るい窓際などがおすすめです。
また、今のスマホの写真アプリには、顔を明るく補正したり、影の部分を明るくしたりする機能がついています。
それをフルに使いましょう。
5.写真を共有し、話題にしてほめる
撮った写真を一緒に見て、いろいろ話しましょう。
「年とっとるね」
「いやいや、笑顔が素敵だよ」
「髪がまっ白じゃない、イヤだわ〜」
「白いけどツヤがあってきれいだよ」
「いかにも家着、って感じやね」
「じゃあ、今度はもっとパリッとした感じで撮ろう!」
できればポジティブにほめましょう。
今の高齢者はたいていスマホやタブレットを持っていますから、メッセージやメールで撮った写真を共有して、自分でもゆっくり見られるようにしています。
6.親が、自分の写った写真を見るのを楽しむようになる
写真に写った自分の姿を見るのに慣れ、写真を撮られることがコミュニケーションであることがわかったら、親の「写真が苦手」もやわらぎます。
そうしたら、もっと気軽に楽しく写真を撮れるようになります。
お出かけ時のスナップ写真を日記のように見る、同居していない家族にも写真を送って見てもらう、などの、一般的な写真の楽しみも感じてもらえるようになるでしょう。
まあ、今でも「そんなに撮ってどうするの」とは言われていますが……。
「親の写真を撮る」ことを、親とのコミュニケーションのきっかけに
「親の自然な表情や、日常の姿を写真に残したい」
そう思ってから自分がやってきたことを考えると、結局のところ、親の写真を撮ることは、親とコミュニケーションをとることと同じだと思えます。
親がこれから衰えていく年代だからこそ、親と機会をとらえてしっかりコミュニケーションすることが大切になってきます。
「親の写真って、撮っていないな……」
「なぜ、きれいな景色や好きな植物や、知人とSNSに上げる写真は撮るのに、親の写真を撮っていないのか?」
「人物写真は、誰かが撮らないと残らない。親の写真は私が撮らないと残らない」
そう考えはじめてから、長い時間が経ちました。
今ではたくさん撮るようになり、日常の写真がたっぷりとあります。撮りはじめてよかったなと思っています。
「親の写真を撮る」ことは、単なる記録以上の意味があります。
それは、親との時間を大切にし、過ぎていく瞬間を記憶に留める行為です。
どんな表情や、どんな姿を覚えておきたいかという、自分の気持ちを確かめる行動でもあります。
子世代が中高年になったら特に、親との時間は、思っている以上に貴重なものかもしれません。
「心が動いたときが、シャッターを切るとき」と、かつて写真教室で教わりました。スマホで撮影できるようになって、今はそれが誰にでも簡単にできます。
あなたにしかできないかけがえのない記録を、ぜひ始めてみてください。