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4工場5名に聞いた、アパレル工場で働く若者たちの希望・課題・日常

多くの産業で課題とされている「後継ぎ問題」。日本におけるアパレルの国産比率が3%を切っている今、アパレル業界も例外ではありません。

そんな中、私たちファクトリエが提携している工場に、次世代を担う若者たちが現れはじめています。

彼らがどういう思いで働いているのかを掘り下げるべく、先日開催したイベント『工場サミット2018』のセッションの1つに登場してもらいました。

■ITやSNSは若者の得意分野

5人の年齢は、30歳前後。同僚となる職人は年配の方たちが中心になりますが、彼らはどのようにしてコミュニケーションを取っているのでしょうか。

(フレックスジャパンの若手のお二人)

熊本・長野に工場を構えるオーダーシャツ工場【フレックスジャパン】では、「何か提案するときは、若手みんなで意見をまとめてから持ちかけています」とのこと。
個ではなくチームとして声を上げると、我が強い職人も耳を傾けてくれるそうです。

提案内容の傾向として多いのが、ITを活用したアイデア。実際に【フレックスジャパン】では縫製の工程にタブレットを導入し、ペーパーレス化を推進しています。まだ全工程には浸透していませんが、世代をまたいで意見交換を図り、より良い方向に改善を進めていると話していました。

SNSでの発信に関しても、若者に一日の長があります。年配の職人はSNSをあまり知らないため、「ハッシュタグってなんや?」などと質問されることもよくあるそう。世代ごとの強みを補完し合えるのも、若者が工場にいることのメリットです。

東京のブラウス工場【マーヤ】もITを駆使しています。【マーヤ】には、創業者の代から3世代にわたって職人が在籍していますが、長年蓄積しているノウハウは言葉だけで説明できるものではありません。

(マーヤの菅谷さん)

そこで取り入れたのが、縫製しているシーンの動画撮影。いずれベテランの職人が引退することを考えると、映像は貴重な参考資料になります。

一方、新潟県五泉市のニット工場【フォルツニット】では、家内制手工業ならではの良さを今も大切にしています。パソコンを使えない職人もいますが、15名ほどの規模であれば、メールやチャットを使うよりも直接聞いた方が早いとのこと。

(フォルツニットの斉藤さん)

ITありきではなく、「自分たちの工場がどうあるべきか」を見据えた上で、プラスになるならITを導入する、プラスにならないならITを導入しないという取捨選択が大切だと思いました。

■エンタメ性のある発想を活かす

若者が発信するアイデアは、採用にも良い影響を与えます。大阪の婦人靴工場【インターナショナルシューズ】は、大阪靴メーカー協同組合に加盟している他の企業と共に“シューカレッジおおさか”という靴職人の養成機関を立ち上げました。

(インターナショナルシューズの上田さん)

このスクールは、靴産業が集積する浪速区・西成区の地場産業の振興を目的としており、【インターナショナルシューズ】ではすでに1期生が働いています。

【インターナショナルシューズ】単体での活動も行っており、工場内でのワークショップやツアーの開催もその1つ。若者からすると工場はクローズドな世界であり、中で何が行われているのかは全く見えません。そこで、まずは気軽に足を運んでもらう機会を積極的に設けており、Airbnbと提携した企画も計画しているそう。「工場をテーマパークにしたい」というエンタメ性のある発想は若者ならではです。

■世代を超えて共通する想い

年配の職人とは多少のジェネレーションギャップはあるものの、「ものづくりを残したい」という想いは世代を超えて共通しています。【フォルツニット】が拠点としている新潟県五泉市は、昔から良質な水に恵まれ、その水を贅沢に使うことで特別な風合いのニットを生み出してきました。

(100名近い参加者が集まり、質問にも熱が入っていました)

繊維産業は、一度なくしてしまうと元には戻れません。

なぜなら繊維産業は、1台1千万円以上の大型機械を必要とする装置産業であり、最初の設備投資に多額の費用を要するからです。「ニット産地としてのブランド力が残っている今が勝負」という言葉に、強い決意が表れていました。

セッション全体を通して私が感じたのは、地元やものづくりに対する若者たちの愛着。幼い頃からの暮らしで育まれたものは、大人になってからも個々の中に深く根ざしているのだと思いました。

セッションの中では、海外へのチャレンジや労働環境の改善など、他にも様々なトピックが各々の口から飛び出しました。日本のアパレル工場は厳しい状況に置かれていますが、「若い力で今の流れを変えていきたい」という彼らの言葉に、一筋の希望を感じています。

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