(積読リストの一部紹介)言語に対する理解を深める
前回、積読していた文章読本を5つ取り上げた。途中で他の本に浮気しつつも、ようやく読了。
読んだ結果、私としては三島由紀夫の『文章読本』と井上ひさしの『文章読本』の2冊から、予想以上の学びと気付きを得られた。読む前は丸谷才一の『文章読本』がダントツかと思っていたが、正論を高々と掲げられて、少しついていけない部分があった。読んでみないと分からないものである。結果、三島氏、井上氏、丸谷氏の3冊の『文章読本』が私の中で★4つの評価となった。折を見て読み返したい。
他の『文章読本』の感想を少し。谷崎潤一郎の『文章読本』は、文章読本と言うよりエッセイに近い。谷崎氏の嗜好が分かって興味深い。しかし谷崎氏の文章作成の趣向を開陳いただいても、文学全般への適用はちょいと難しい。もう一冊、『論文から恋文まで』もエッセイ集で、色んな人が色んな事を言っていて楽しいのだが、「楽しいひととき」で終わった感じがする。
こうして一連の文章読本を読んで理解したことは、文学を深く味わうには、その文学作品が持つ文体から「美」や「芸」をどこまで深く読み取るかに掛かっていると言うこと。文学に対する審美眼を磨く上で、文学の前に言語に対する理解を深める必要がありそう。
そして、実は言語に対する関心は以前から持っていた。何年か前にソシュールを読んで、言語に対する興味が湧いた事があった。いくつかは興味深く読んだのだが、何冊かは今も積読されている。
吉本隆明『言語にとって美とはなにかⅠ』角川ソフィア文庫
吉本隆明『言語にとって美とはなにかⅡ』角川ソフィア文庫
宇田亮一『吉本隆明「言語にとって美とはなにか」の読み方』アルファベータブックス
金谷武洋『日本語に主語はいらない』講談社
國分功一郎『中動態の世界』医学書院
当時はソシュールを読んで気になって購入したのだが、今は文章読本の流れから言語理解を一段深めたいと思っている。実のところ、読みやすい本は読んでしまい、手強い本が残った形となっている。こういった手強い本は、気分が乗っている時に取り掛かるのが良かろう。手強い本ほど、読む前と読んだ後で見える世界を変えてくれるもの。と言うわけで、吉本隆明の『言語にとって美とはなにか』から取り掛かることにする。
まあどう云う工合になるか、試しに一冊を手にしてみることだ。