⭐️星のかんむり 【クリスマス物語(1)】
小学校3年生の時に初めて読んでから、
何度も何度も読み返してきた大好きな本
「星のかんむり」(谷村まち子著 ヨルダン社)
を紹介します。
イギリス、ロンドンに住む
ブラウンさんという
大金持ちのおじいさんが亡くなりました。
教会や、貧しいひとたちのための施設や病院に、
いつもたくさんの献金をしていた
名士のおじいさんでした。
おじいさんはひとりの天使に連れられて
天国にいく途中、
いろいろ考えていました。
「きっと神様から星がたくさんついた冠を
もらえるに違いない。
献金もたくさんしたし、
学校への寄付もしたし、
教会を一度も休んだことはないし、
勉強だって仕事だってなまけたことはないのだから、
一番すごい冠をもらえるだろう」
これまでやってきたことを思い起こして満足でした。
やがて天国の門につきました。
なんだこんなところなのか。
天国はもっとすごいところだと思ったのに…
あたりに青い星と雲しかない門を見て
がっくりしました。
その時、門の中から
ピカピカ光るきれいな冠をつけた天使が
ひとつだけ星のついた冠をもって出てきました。
「おお、マリアさまですな」とブラウンさんがさけぶと、
「いえ、とんでもない、私はルツですよ」
と天使がこたえて、冠を渡しました。
「この冠をおかぶりください」
「ええ?去年の大晦日になくなったルツなのか」
びっくりするブラウンさんにルツははいと答えました。
「なんでお前の冠にはたくさん星がついているのに、
わしの冠にはひとつしかないのか」
不服そうに言うブラウンさんに
最初の天使が言います。
「どうしてなのか説明しましょう」
そしてルツのお話しが始まりました。
ルツは教会の入り口に捨てられていたのを
ブラウンさんに拾われて、
お屋敷で働く、心のやさしい娘でした。
どんなにつらいことがあっても、
神様への感謝を忘れず、
いつも他の人のことを考えていまいした。
けがした子雀をいっしょうけんめい看病したり、
病気のお母さんをかかえた郵便配達の
少年の妹になって励ましたり、
神経痛で困っているおばあさんの
孫娘になってお世話をしたり、
娘を亡くして泣いてばかりいる絵描きさんの
娘の代わりになって支えになってあげたり、
足の障害をもった女の子のお友達になったり…
仕事の合間にこっそりとよいことをしていました。
でも、そのためにいつも怒られてばかりです、
どこに行っていたの!
仕事をさぼっているんだね。
教会にもいかないでどこをほっつき歩いているんだと、
みんなは誰もルツのしていることを知りません。
知っているは神様だけでした。
屋根裏部屋でどれだけルツが祈っていたか、
それを知っているのも神様だけでした。
天使の話を聞いて
「なるほど、ルツはやさしい子だ」
とブラウンさんも認めました。
「しかし、聖書の教えにしたがって、
私はたくさんの献金をしてきました。
わたしのおかげでたくさんの人を幸せにしてきました。
ルツの何倍もね」
とブラウンさんは言います。
「あなたはお金持ちです。
そのお金の中から献金をしてこられ、
世の中の人から尊敬され、感謝され、
よりお金もちになれました。
あなたはこの地上でもう十分に
よい行いへの
ご褒美をいただきましたね。
それに比べるとルツは
少しも人からほめられようという気はなく、
ただ神様を喜ばせたいと思っていました。
人でなく、神様が
ルツのよい行いをほめてくださいました。
だから星がたくさんついています。」
「よくわかりました。
わたしは正しい、立派な人間だとうぬぼれ、
神様からたくさんのご褒美を
いただけるものと思っていました。
いつでも人からほめられたくて、
そればかり考えていました。
いやしい私は星などいただくねうちもありません。
この冠をお返しします。」
そう言って冠を返そうとすると
天使はそれをとめて
「ブラウンさん、その冠はかぶっていらっしゃい。
せっかく神様があなたのためにくださったものです。」
と言いました。
なぜかわからないブラウンさんに天使は
去年のクリスマスにしたことを話してくれました。
神様が喜ばれる良い行いというものは、
自分は忘れているものなのです。
去年のボクシングデーのことです。
ブラウンさんはホームレスになってしまった
かつてのお友達に食べさせ、
着物を与え、
仕事の世話までしてあげたのでした。
愛から出た行いでした。
そのことを神様は記録していました。
そして冠にひとつの星をくださいました。
「神様はまったく公平でいらっしゃる。
神様のなさることにはまちがいはない」
ブラウンさんはひざまずいて
「わたしはこのひとつの星をありがたくちょうだいします」
と言いました。
そのときバーンを花火のような音がしました。
「ごらんなさい。
またひとつ星がうまれましたよ」
天使が言いました。
「地上のどこかで、
誰かが隣人に愛の行いをするとき
星がうまれます。
毎日星が生まれるから
宇宙はこんなに美しいのです」
こうしてブラウンさんは
ルツに手をひかれて天国の門を通っていきました。
海外の児童文学を読んでいると、
たまにでてくるボクシングデー。
子どもの時は「ボクシングをする日」と思って、
腑に落ちない気分で読んでいました。
元々は、教会が貧しい人たちのために寄付を募った
クリスマスプレゼントの箱(box)を開ける日12月26日を“Boxing Day"とよんでいました。
クリスマスも仕事をしなければならなかった使用人達に翌日、
家族と過ごさせるための休日で、
この日は一家の者達は使用人に頼らず
自分で全ての家事をしなければならないそうです。
誰かがどこかで、
こっそりと本当に小さな良い行いをするとき、
宇宙のどこかで星がうまれます。
褒められようとか、
お返しをほしがったりする良いことを神様は喜ばないけれど、
だれも知らないでする良い行いをしたときに星が生まれるので、
あんなに、きらきらと輝くのですね。
わたしは子どもの時からずっと、
このお話が大好きでした。
クリスマスに何をできるか
考えてみるのも楽しいですね。