アマン東京で感じた『もう一つの顧客ロイヤリティ』
先日、とある機会に大手町にあるアマン東京に宿泊しました。僕はコロナ禍でおうち時間に飽きて以降、頻繁にホテルステイをしていたこともあり外資ホテルグループ(ハイアット、ヒルトン、マリオットボンヴォイなど)の上級会員になっています。しかし、今回宿泊したアマン東京はそういった会員システムがほぼありません。そんなホテルで感じた『もう一つの顧客ロイヤリティ』について今回は綴ります。
1.顧客ロイヤリティとは
そもそも『顧客ロイヤリティ』とは何でしょうか。
ロイヤルティ(=Loyalty)とは直訳すれば
“忠誠心”という意味です。そのため、顧客ロイヤルティとは、
“顧客が企業やブランド・商品に対して忠誠心を持つ”
ということになります。
忠誠心と聞くと少し大げさな感じがしますが、一般的にはファンや贔屓にしている、愛着や信頼を感じているといった状態を指します。このロイヤルティの高い顧客を“ロイヤルカスタマー”といい、冒頭でもありましたが“上級会員”もこれにあたります。企業にとっては重要な顧客ということになります。
その『顧客ロイヤリティ』も2種類あるとされています。上の図でもあるように1つ目は“感情面のロイヤリティ”です。この感情面でのロイヤリティが高い顧客はそのブランドや企業に愛着を持っています。例えば、アパレルのハイブランドLouis Vuitton、CHANEL、HERMESなどは愛着を持たせるためにアウトレットなどのセールを行わないようにしています。
一方で、2つ目は”行動面のロイヤリティ”です。これといった愛着は無いけど何故かそのブランドや企業を選んでいる。こういった状態はまさしく行動面のロイヤリティが高いと言えます。
例えば、僕もそうなんですが携帯キャリアにおいて今でこそ格安SIMなどが出てきて乗り換えがありますが、こういった格安SIMが出てくるまではもともと親がDOCOMOやAUのキャリアを使っていたという場合は、よっぽどな理由がない限り親が使っているキャリアを継続しますよね。また、親と子セットで契約するファミリー割などで費用を抑える事もできるためキャリア利用を継続する人もいます。これがまさしく”行動面のロイヤリティ”です。
2.ホテル業界の『顧客ロイヤリティ』
次にホテル業界での主な『顧客ロイヤリティ』戦略をみていきましょう。
冒頭でもお伝えしたように、あらゆるホテルグループには会員システムがあります。例えば、マリオット・インターナショナル(以下、マリオットボンヴォイ)は、30のホテルブランド、110か国で5700軒のホテル、110万の客室を擁する世界最大のホテルチェーンでありますが、僕が取得しているチタンエリートという会員であれば以下のようなサービス優待が受けられます。
他にも段階的にいくつかのエリート会員が存在するのですが、それらを取得するにはマリオットボンヴォイグループのホテルに年間何泊しないといけないという条件があります。
これを獲得する為、もしくはそれに付帯するポイントを稼ぐ為に僕を含め顧客は旅行の宿泊先などでマリオットボンヴォイグループのホテルを選択します。
これがまさしく”行動面のロイヤリティ”です。
別にお洒落で綺麗なホテルなんて東京に山ほどあります。また、その他の旅行先にもたくさん魅力的なホテルがあります。その中で同じグループのホテルを勝手に選ぶ理由はここにあります。
勝手に“行動面のロイヤリティ”が高くなっているのです。
3.アマンを選ぶ理由
こういった会員システムがAman(アマン)グループにはありません。では、何故“アマン東京”はじめ20カ国で31の施設を保有している高級リゾートアマングループは人気を誇っているのでしょうか。
これは、アマングループが掲げている顧客ロイヤリティの目標です。アマンをこよなく愛するゲスト達は自らを“アマンジャンキー(アマン愛好家)”と称します。
そのアマンジャンキーが求めるもの、また僕が実際に宿泊して感じたものを以下に綴ります。
・ 『物質的な豪華さやラグジュアリーより、
感性をより豊かにする旅』
アマンジャンキーやアマングループを利用する顧客はアマンホテルの“飾らないその土地固有の文化、食、ピースフルな雰囲気”に魅了されているように思う。
アマン東京ではロビーやレストラン、客室にも日本を象徴する稲があったり植木があったりする。また、レストランのアラカルトでは島国日本を象徴する数多くの魚🐟をお皿に広げ顧客に披露する。
このようなホスピタリティは数多くある日本のホテルの中でも中々みられないものであると感じた。日本を愛し、日本に旅に来た“外国人が好みそうな”デザインが随所に見られる。
・ 『新しい発見の扉を開き、極上の体験に触れる』
アマングループの数あるリゾートホテルの中でもアマン東京は
“都市型を第2のアマンとして位置付け、新しい需要を喚起する”
といった構想があったという。安らぎの場というリゾートの概念は都市型アマンにも共通しており、東京では超高層ビル大手町タワー33〜38階からの景観を生かし、さまざまなデザイン面でそれを表現したのが“アマン東京”である。
まさに“都市型リゾートという新しい発見の扉を開いている。”
これは“アマン東京”のロビー階にあるアパレルや雑貨などを販売しているAmanブランドのストアである。値段を見るとレザーグッズに関してはハイブランドを超えるほどのびっくりするほど高値である。
ただ販売されている商品は客室に設備されているものであったり実際にそれを着用してホテル内でのアクティビティができるようなものが揃えられている。少し高いが、これが一つ上の“極上の体験に触れる”という事では無いかと感じた。
また、高価なのにも理由がある。Amanブランドのアパレルなど全ての商品は海外の有名な芸術家やクリエイターとコラボをしているらしい。例えば、レザーグッズはイタリアの有名な革工芸デザイナーとコラボしているらしい。たしかにものを見ているとハイブランド同等の素材感とデザインが顕著に見られる。
・ 『自然、歴史が織り成すその場でしか味わえない環境』
その土地の自然や文化、伝統、アートなどの要素。コマーシャル的ではなく、本質的=手つかずの状態のもの。人、社会、そして環境へのサステナビリティ。それらをすごく感じた。
確かに日本で展開する3つのアマンリゾートをみてみると日本それぞれの“capital”を巡るストーリーになっているように思う。
・アマン東京 東京
現在の文化の発信地
・アマン京都 京都
歴史・伝統文化の京都
・アマネム 伊勢志摩・熊野古道
日本人の精神の中心
・ 『心からの、人のあたたかさを感じる、一人一人に合わせた“おもてなし”』
日本はツーリズムの観点において、いずれも世界最高の品質を提供している非常に希有なデスティネーションである。その日本の“おもてなし”をアマンもお手本にしているという。
・世界でも屈指の豊かさで美しい自然。
・国際的に非常に価値の高い歴史的遺産と文化。
・ユニークな文化の集合体である東アジア・東 南アジアへ地理的に近い有利性。
・極めて治安が良く安全である。
・各地で素晴らしいホテルや旅館、また文化的 遺産が点在。
“アマン東京”では、こういった日本の利点を活かしてホスピタリティが充実している。例えば、僕はお祝いの花束💐とホールケーキ🎂を依頼したのだが、お祝いの花束は数100種類を超えるような花や草のカタログ(勿論その時の入荷状況によって出来ないものもあるらしい)の中から、自分でお祝い相手を想像しながらその人に似合うアレンジメントができる。こんなにも拘った花束を用意してくれるホテルは他に聞いたことがない。
4.アマンが作ったバリ島
これらの理由から、アマングループのリピーター率は過去5年の統計で 20%-30%と言われています。
前章で述べたマリオットボンヴォイなど多くのホテルアンドリゾートは会員制度などで
“行動面のロイヤリティ”を重視していますが
アマングループは新しい都市型リゾートや新しいリゾート開発に力を入れ“感情面のロイヤリティ”を重視しています。
元々アマンホテルを運営しているエイドリアン・ゼッカー氏はインドネシア人であり、1987年にアマンリゾーツを開業しました。
翌年、タイのプーケット島に第1号ホテル“アマンプリ”をオープンすると、瞬く間に世界中のセレブリティたちを魅了してしまいました。
ゼッカー氏はその後も次々に個性的なリゾートを誕生させ、どれも決して便利な場所にあるわけでもなく、料金も相当に高額なのに、一度泊まった人はあまりの素晴らしさに魅了され、チェックアウトの際に次の予約を入れてしまうという“アマンマジック”を生み出しました。
こういったアマンの“感情面のロイヤリティ”戦略が生み出した“アマンマジック”が様々な国を発展させていったと言われています。
その先駆けが“バリ島”です。素晴らしいビーチの数々、風光明媚な山々、心癒される田園風景など観光要素がかなりある魅力的な島にアマンは目をつけました。
バリ島のような東南アジアは世界の人口の22%を占め世界で最も人口密度の高い東アジアから少し距離があり、欧米などからも距離をとる。地理要素的には最悪ではある。
その為、2〜30年前のバリ島は何もない島国でした。しかし、いまやインドネシアは観光大国になり、その主要地域として“バリ島”が存在しています。
“アマンの先を見た投資によってバリ島は開花した。”
そう言っても過言では無いでしょう。
そして、バリ島は現在3つのアマングループのリゾートがありますが、アマンらしくそのどれもがその土地や地域に合わせたコンセプトを持っています。
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今回の記事の重要ポイント3点
1. “感情面のロイヤリティ”
2. “都市型リゾートという新しい発見”
3. “極上の体験に触れる”
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