見出し画像

増加するIT起業家など異業種からの飲食ビジネス参入、寧ろ門外漢の方が良い理由とは?

 飲食ビジネスを始めて準備期間も含め早くも約1年ほどが経つ。もともと私は料理は趣味で偶にするくらいでなんの調理経験もない門外漢だ。しかし、飲食店を始めるとなると面白いように飲食業界関係者の方々とつながるようになった。

 例えば、夜食事に行くとその店のオーナーとお酒を飲みながら別の飲食経営者を紹介してもらったりする。なかなか私が今まで出会ったことのなかったパンチのある方々が多いので興味深くて面白い。しかし、割と飲食ぽくない方々も結構いたりする。例えばここ1年で出会って何回か食事をさせてもらった1人はもともと学生時代にITエンジニアを養成するプラットフォームを立ち上げバイアウトの経験を持つIT起業家だ。

 そんな彼も今や飲食業界の一員だ。IT業界出身者だけではなく、今異業種から飲食業界に参入する経営者が増えているように思う。そして私もそうだが、みんな決まって門外漢なのに頭の中にこの業界での勝利の方程式を持っていたりする。例えば、私はこの業界に入り門外漢だからこそ感じたものが沢山あった。挙げていけばキリがないのだが、コスト管理、接客マインド、SNS戦略、ITシステム、人材活用、投資先等ファイナンス部分、どれを取っても音痴すぎる店が多すぎる。

 異業種から来た経営者は口を揃えて言っているが、昔は飲食業界はオーナーシェフのように10〜20年、最悪な場合3年間包丁を触らせてもらえないような超非効率かつ長期間にわたる弟子制度を経験した経営者がほとんどだった。要は1番経営に重要な経営ノウハウを養うどころか、洗い物や掃除に3年も費やされ、やっと包丁の触り方を養ってきた人間が経営しているのだ。

 そのため経営者が経営の知識に音痴なので、そこに働いているスタッフはビジネス音痴にしかならない。これが日本に無数ある美味しくても小店舗経営であまり儲かっていない店の理由だろう。海外に行くと大して美味しくないのにめちゃくちゃ予約で埋まっている店、長蛇の列ができる店が多いように感じる。

 この話をしていると、横からよく言われるのが2015年〜飲食業界というのはPOS革命(Posを使ってモノを売る時代)から顧客体験時代に変化したのだと異業種からきた経営者たちは言う。これはどう言うことかというと、POS革命の時代に他店との差別化のために経営者はよりニッチなモノ店を出し続けてきた。そのため、もう2015年頃から全て出し尽くされたような状態になり、競争が激化したのだ。これはIT業界の冬の時代から現在まで続く超絶レッドオーシャン市場と似ているだろう。

 そこで飲食経営者は何を考えたかと言うと、家から数分歩いた距離にある美味しい町中華やコンビニ飯との差別化を図った。町中華には無い内装の綺麗さ、コンビニには無いエンターテイメント接客、これらが顧客体験の時代だ。このディナーのこの2時間の体験にお金を払う。そう考えると一つ一つの品に値段をつけて販売する昭和の市場のようなシステムより、コース料理として1人何円と定め全体としての顧客体験を売るほうがビジネスとしては理にかなっているわけだから、コース料理が流行ったのだ。

 つまり、これまで飲食業界で経営をしてきたオーナーシェフみたいな人間は美味しい料理をお客様に届けようとひたすら努力するが、顧客体験にあたる“どのようにしたら顧客が満足して、また行きたくなるか”と言うクリエーターの部分を完全に無視しているケースが多い。

 飲食業界とIT業界の一つの大きな違いは、開発者クリエーターが前に出るか出ないかだと思っている。同じものづくりなのに、レストランはなぜかわからないが開発者のシェフの名前が先頭に来る。しかし、IT企業の開発者エンジニアは有名になることは殆どない。AmazonやGoogleのエンジニアを皆さんご存じだろうか?業界の人間しか知らないだろう。

 これが時代錯誤の飲食業界の一つの要因だと私は思っている。全然クリエーターとして機能していないシェフの名前をクリエーターとしてマーケティングに使ってしまってるので、異業種から来た開発者の名前無しでもうまくマーケティング経営をしてきた経営者がその経営を行うと改善余地がわかるわけだ。

 あともう一つ、異業種から来た人間はだいたい他何かで成功してある程度稼いでから来るので、資金力がある。ITの業界では1ヶ月もしないうちにすぐにプロダクトを模倣されるが、飲食店はその圧倒的な資金力を内装に投入する事でコンセプト世界観の真似ができなくなる。

 そのため、飲食を始めたいが若くて資金もないみたいなという人は、地方にある団塊世代の方々からの事業承継とかは、競争力もないため一つ狙い目ではないだろうか。






いいなと思ったら応援しよう!

倉岡利樹(Toshiki Kuraoka)
宜しければサポートをお願いします😀 いただいたサポートは今後のクリエイターとしての活動費に使わせていただきます。