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原理を理解すれば二日酔いは予防できる

 おそらく今年1番長い期間東京に滞在している気がする。だいたい1ヶ月に10日程度しか東京の家に帰ってなかったので、2週間ずっといるのは珍しい(笑)東京にいるとあまり毎晩のように外に出たりはしないのだが、やっぱり期間が長くなり誘われたりする回数が増えるとお酒を飲む機会も増えたりする。私はもともとお酒は強い方なので、基本何でもある程度飲めたりする。

 お酒が強いというのは、一般的にアルコール摂取に対して酔いにくい、あるいは大量に飲める体質を指すが、お酒に強いとされる人が二日酔いになることは珍しくない。私もその一例だ。この矛盾はアルコール代謝における生化学的プロセスと個々の代謝能力に由来する複雑な要因によって説明される。

 まず、アルコール(エタノール)は摂取後、主に肝臓において段階的に分解される。アルコール脱水素酵素(Alcohol Dehydrogenase, ADH)によりエタノールが酸化され、アセトアルデヒドが生成される。このアセトアルデヒドは強い毒性を持ち、頭痛や吐き気、倦怠感など二日酔いの主な原因物質である。それがアセトアルデヒド脱水素酵素(Aldehyde Dehydrogenase, ALDH)によって速やかに酢酸へ分解される。酢酸はエネルギー代謝経路に取り込まれ、最終的に無害な二酸化炭素と水へと代謝される。

 お酒が強いとされる体質は、主にこれらの酵素活性の遺伝的差異に起因すると言われているADHやALDHの遺伝子多型により、代謝速度に個人差が生じる。例えば、ADH1B2を有する人はエタノールをアセトアルデヒドに変換する速度が速く、酔いにくい体質とされる。一方で、ALDH21(活性型)を持つ人はアセトアルデヒドを迅速に酢酸へ分解するため、アセトアルデヒドの蓄積が少ない。しかし、これらの遺伝的要因だけでは“二日酔いになりやすさ“を完全に説明することはできない。

 二日酔いは、単にアセトアルデヒドの蓄積だけでなく、脱水、低血糖、炎症反応、睡眠の質の低下といった多因子による生理的影響が複合的に関与する。アルコール摂取は抗利尿ホルモンであるバソプレシンの分泌を抑制し、多尿を引き起こすことで体内の水分バランスを崩す。要は、アルコールを摂取すると体内の水分が過剰に排出され、脱水状態を招きやすくなるということだ。この脱水症状が進むと、頭痛やめまい、倦怠感などの原因となり、二日酔いの症状を悪化させる。なので寝ている間に過剰に発汗したりエネルギー等を使うことによって二日酔いを発生させている。

 また、アルコールの代謝過程で肝臓のグリコーゲンが消費され、血糖値の低下を招く。これにより、脳のエネルギー供給が不足し、集中力低下や倦怠感が現れる。さらに、アルコールおよびその代謝産物は炎症反応を引き起こし、サイトカイン(IL-6やTNF-α)の分泌を誘発することで二日酔いの症状を悪化させる。

 お酒が強いとされる人々が二日酔いになりやすい理由は、主にその過剰摂取に起因する。私もそうだが、酔いにくい体質の人はアルコールの摂取量が多くなりがちであり、その結果、肝臓の代謝能力を超過してしまうのだ。

 また、アセトアルデヒドの分解能力が十分でも、大量のアルコール摂取によって代謝の一時的な停滞が生じ、翌日までアセトアルデヒドが残存することがある。さらに、過剰なアルコール摂取はビタミンB群(特にチアミン)の欠乏を招き、アルコール代謝を補助する栄養素が不足することで、代謝効率が低下する。飲む前に飲むと良いとされているあのマズイ薬剤もビタミンB群を補い代謝効率の低下を防ぐためのものなのだ。

 このように、お酒に強い体質であっても、摂取量や飲酒後のケア次第で二日酔いが引き起こされる。しかし、この原理がわかっていると、飲む前にビタミンB群、飲みすぎたなと思う睡眠前に大量の水分を、補給することで脱水や栄養バランスの乱れを防ぐことができる。二日酔い予防はノウハウなので、よく年配のおじさんが二日酔いにならないと言っているのは、経験値や知識があるだけで歳に起因していない。

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倉岡利樹(Toshiki Kuraoka)
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