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海外企業からの賢明な買収提案

 先月末だっただろうか大変なことが起きた。セブン&アイホールディングスに対してカナダの投資会社アリマンタション・クシュタールが買収提案を行った。クシュタールのアレックス・ミラー社長によると、単にコンビニ事業の買収を狙っているのではない。セブン&アイ傘下の多様な事業を一括して取得したいと考えているというのだ。

 ここ最近、セブン&アイはアクティビスト(物言う株主)たちから強い圧力を受けている。彼らは、収益性の低いスーパー事業などの売却を求めている。しかし、クシュタールはまさにその逆の提案をしてきたのである。つまり、赤字事業も含めた統合を志向しているということだ。

 セブン&アイの事業ポートフォリオを見ると、コンビニ事業が大きな収益を上げている一方で、スーパー事業などは赤字が続いている。アクティビストたちは、この不採算部門の売却を強く主張していた。しかし、クシュタールは逆に、それらの事業も含めて一括して買収したいとしているのだ。

 クシュタールがターゲットにしているのは、コンビニ事業はもちろんのこと、スーパーのイトーヨーカドーや外食チェーンのデニーズ、専門店のロフトなど、セブン&アイ傘下の多岐にわたる事業であり、さらにかつて経営破綻したタワーレコードの国内店舗や、食品製造のピースデリ、コンテンツ事業のぴあにも着目している。

 これらの事業のうち、一部はコンビニ事業ほど収益性が高くない。しかし、クシュタールはそれでもなお、セブン&アイ全体としての再編に意欲を示しているのだ。つまり、赤字事業も含めて一括して手に入れ、自らの経営手法で立て直していきたいというわけだ。まさに“賢明な提案”と言えるだろう。

 だが、昨日だろうか?その後の展開としてセブン&アイ・ホールディングスが自社の経営陣による買収(MBO)計画を検討していることが明らかになった。このMBO計画は、創業家である伊藤家や伊藤忠商事、そして主力銀行が総額9兆円の資金を用意して、セブン&アイの全株式を取得しようというものである。クシュタールの提案に対する防衛策として検討したのだろう。

 一方のセブン&アイは、アクティビストの要求に応える形で不採算事業の売却を検討していた。ところが、クシュタールのこの買収提案と、創業家によるMBO計画の登場によって、状況は一変することになりそうだ。セブン&アイ側も、安易に事業の切り売りに走るのではなく、双方の提案を真剣に検討せざるを得なくなったといえる。

 セブン&アイの経営陣がどのように判断するのかは想像がつかないが、正直MBOでファミマを既に持っている伊藤忠に主要二つのコンビニ事業を託したり、金融機関から巨額の利子を払うのは決して賢明とは言い難い。そう考えると、クシュタールの"賢明な提案"に応じた方が良いと思うのが個人的な意見だ。しかし、海外からの企業に買収されるのはどうかみたいな世の中の風潮等がおじさんたちの今のもがきに繋がっているのだろう。まぁ企業買収というのは、敵対的買収であってもその企業、事業の今後を考えた上でプラスとなる価値があるのであればどんな提案も受けるべきであると思うのだ。

 風潮や文化そんなものは正直事業活動に関係がないので、無視して社会がより良い方向に向かっていけるよう企業の戦略を考えるべきではないだろうか。

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倉岡利樹(Toshiki Kuraoka)
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