未来のわたしの物語
薄く広がる春の雲が傾いた陽の光を反射し、
サーモンピンクに染まる綺麗な夕暮れ。
気候もちょうど良い。
1年で一番好きな季節だ。
春のそよ風が気持ちよく肌を撫でる。
ここは、私の勤める会社のビルの屋上。
今時にしては珍しく外階段から
普通に上がることができる。
安全対策は大丈夫か...と思えるような
細い鉄の柵でできた隙間だらけの手すりに
少しハラハラするけど、
15階建ての建物の上からの景色は
清々しい気分にしてくれる。
ここが都心のオフィス街であるとはとても思えない。
こんな風に仕事の合間に屋上に上がって
時間を過ごすなんて今までは考えたこともなかった。
目の前に映る景色に心が動くなんてことも
少し前の自分には想像できない。
東京はオフィス街で、働く場所。
よもや感動するようなものに出会うなどありえない。
と勝手に思い込んでいた節さえある。
そんな私がここ最近は変わったと
自分自身でも感じている。
私の日常は小説や物語のような美しさはないけれど、
何気ない一つ一つに刺激を受け、
心が動かされるようになった。
そしてそのたびに心がほぐされているのが感じられる。
そんなことを1人屋上からの夕焼けを眺めながら考えていた。
内省と対話
これは私が最近受講し始めたオンラインの
セルフマネジメントスクールで繰り返し聞く言葉だ。
何気ない日常が違って見えるようになったきっかけは
この内省と対話だな…と心の中で呟いた。
もともと感覚派でヨコモジが苦手な私が
セルフマネジメントなんて、
過去の私が見たら笑われてしまいそうだけど。
いつも相談に乗ってもらっている先輩から勧められ、
話しを聞いてみたらいつの間にか受講を決めていた。
はじめはマネジメントなんてヒラ社員の私には
関係のない話だなって思っていたけど...
「主婦であっても学生であっても、サラリーマンであっても、どんな人であれ自分の人生をマネジメントするのは自分自身です」
という説明会での言葉が妙に頭に残り、
半ば勢いで申し込みをしてしまった。
冷静に文字だけを見れば、
とても当たり前のように思えるけど、
では自分がそのように日々を過ごしているか?
自分の周りにじぶんの人生を
マネジメントしている人がいるだろうか?
なんて問いを投げかけてみると...
途端に言葉に詰まってしまう。
マネジメントという言葉は会社でもよく聞くが、
正直あまりいい印象を持っていなかった。
なんだか管理されているようで、窮屈で、
操作されているような感じさえしてしまう。
でもそのスクールでは、
マネジメントとは管理ではなく創造だという。
はじめてそれを聞いた時は全然ピンとこなかったが、
それなら面白そう!
そんな風に漠然とした期待を抱いたのだ。
今では、管理ではなく創造ということの意味が
自分の言葉で話せるくらい腑に落ちた。
マネジメントの
はじめの一歩としてのセルフマネジメント。
セルフマネジメントの最小単位としての
「瞬間」のマネジメント
「瞬間」のマネジメントとは、
今こうして屋上で空を眺めている私が、
何を感じ、どんなことを考えているのか?
身体はどんな反応なのか?
ということに目を向けていくことだ。
そんな自分と向き合い
対話することが内省だと教わった。
この内省をするようになって
私はたくさんの気づきを得られるようになった。
マネジメントの父と呼ばれるドラッカー曰く、
「企業の目的は顧客の創造である」という。
顧客の創造とはすなわち、顧客の声を拾い、
そのニーズを満たす商品、サービスを提供すること。
そして顧客の声とはつまり「不」である。
不安、不満、不足、不便、不快といった
これらの不が全てのビジネスの原点。
このスクールでは、セルフマネジメントとは
自分の心を顧客にすることだと教えている。
自分の心の「不」に目を向けて、
解決するのでなくまず味わうことだと。
そして、その「不」に直面した私が
どんな身体感覚なのか、
どんな感情を抱いているのか、
どんなことを考えているのかにフォーカスしていく。
ここで得られた情報や私自身の
本当の心の声=望みをクリアにし、満たしていく。
それがセルフマネジメント。
こうやって休憩時間を作って
屋上でのひとときを味わうことも
私がセルフマネジメントで
じぶんを満たすために始めたひとつ。
以前は屋上があることも、
屋上からこんな素敵な眺めがあることも
全く気付くことがなかった。
自分の人生が豊かかどうかは お金があるとか、
高級なブランド品をたくさんもっているとか、
そういうことではなくて
どれだけこの世界が
豊かな資源に溢れるリソースフルなものだと
気づく視点を持っているかどうかではないかと思う。
私を取り巻く環境は
まだ物理的にはほとんど変わっていない。
それでも私の日常の感じ方や充実感は
生まれ変わったかのように別世界に感じる。
この私が住む世界は豊かな資源に溢れている。
そんな世界の一員である
私自身もまたリソースフルな存在なのだ。