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「Global Digicon Salon 029 ITday Japan 2024 世界の『1984(ディストピア)化』にどう立ち向かうか?」報告

日本時間(JST)で2024年12月8日(日)10:00〜12:00、米国西海岸時間(UTC-7)で2024年12月7日(土)17:00〜19:00、Global Digicon Salon 029 ITday Japan 2024 世界の『1984(ディストピア)化』にどう立ち向かうか?」を開催しました。
記録映像はこちらにあります。

冒頭、髙木利弘が、「トランプが米国大統領に再選された背景には、中間層や労働者階級の困窮がある。IT革命がオフィスワークや工場労働を合理化、効率化し、グローバル化したことで、仕事を失い、未来に希望を持てない人が増えている。欧州で右傾化が著しいのも同様である。今後、生成AIやロボットの発達が進めば、さらに多くの人々の仕事を奪い、新たな雇用を生み出す目処は立っていない。では、どうすればいいか? 「Think different」である。ダグラス・エンゲルバート、アラン・ケイ、スティーブ・ジョブズ。IT革命で世界を変えたこの3人の偉人に共通するのは、「システム」と「増幅」という考え方である。アラン・ケイは、「これからの子どもは、宇宙・地球・社会・テクノロジー・人体・頭脳がいずれもシステムであり、私たちがシステムの中で生きているということ、私たち自身がシステムであるということを理解しなければいけない」(「IT25・50」シンポジウム基調講演 )と言っている。つまり、人間社会もシステムであり、国家・宗教・軍隊・企業・学校・家庭・言語・文字・マネー、いずれも「CAS(Communication Amplifier System)」としての人間社会の増幅装置である考え方である。私たちが直面しているのは、五百年前のIT革命、グーテンベルグ印刷革命が生み出した西洋近代国家、資本主義・議会制民主主義システムの終焉である。西洋近代思想(個人主義・利己主義・自然支配)による右肩上がりの成長神話、マネー神話の時代は終わった。現代のビッグブラザー、トランプの登場は、西洋近代の終焉なのであり、未来社会のヒントは、実はジョブズが発見し、現代日本人の多くが忘れている「日本文化・禅」にある。八百万の神という自然崇拝。呼吸、五感を大切にし、マネーではなく、職人芸・マンガ・アニメ・オタクを極めることに価値があるとする文化。アフガニスタンで米国は膨大な軍事費を無駄に使い、何も貢献しなかった。本当の貢献をし、人々に尊敬されているのは灌漑工事で農地を広げた日本人医師の中村哲さんであり、彼を資金面で支えたボランティアである。日本政府ではない。パレスチナとイスラエルの和解、そして世界平和のヒントは、抗議デモに参加したパレスチナの女の子が掲げていた『涼宮ハルヒ』のプラカードにあり、ミッキーマウスにはない」といった話をしました。
続いて小平尚典さんが、ダグラス・エンゲルバート、アラン・ケイ、スティーブ・ジョブズ、テッド・ネルソン、ポール・サッフォー、スチュアート・ブラントなどITビジョナリーの写真を紹介しながら、歴史を大切にしない米国アメリカンドリームの薄っぺらさと大切にする日本のオタク文化の素晴らしさ。ジョブズがアートとテクノロジーを融合したこと、それらをこれからの若い人たちにどう伝えていったらいいか考えなければならない」といった話をしました。
そして、大谷和利さんが、「建築ラッシュで仕事が豊富にあり、出稼ぎ労働者も働けば収入を得られるドバイでは犯罪がないという。自分自身にとっても社会にとっても意味がない、やりがいがないという仕事が多い。社会にとっても自分にとっても意味があり、やりがいがあって収入もある仕事が望ましい(『ブルシット・ジョブ〜クソどうでもいい仕事』)。社会に不可欠な仕事なのに安く使われている仕事が多い(『エッセンシャルワーカー』)。(スウェーデン発祥の世界的家具製造販売会社)イケアは、パートタイムをなくし、短時間働く人も正社員にし、福利厚生も受けられるようにした。社会貢献をするのではなく、この社会が嫌だから火星に行きたいという富裕層。セレブがセレブぶりを見せびらかせるだけのインフルエンサーや、スキャンダルな動画がアクセス数を稼いでしまうソーシャルメディアの問題。人が技術を利用するのではなく、技術で人をコントロールするような使い方をしているイーロン・マスクの問題。生成AIには、技術の悪用を抑止する可能性があるが、日本ではまだ1割の人しか利用していない。電動自転車というテクノロジーがルールを守らない人を増やしている(『デジタル生存競争』)」といった話をしました。
五百年前のIT革命、グーテンベルグ印刷革命から始まった西洋近代思想、議会制民主主義、資本主義マネーゲームは、それ全体がセットになった古い錆びついた社会システムです。一方、現代のIT革命から生まれる未来社会は、それら全てを「Think different」した先にあるでしょう。「仕事」を再定義し、本当に必要なエッセシャルワーク、社会貢献が正当に評価される持続可能社会。アラン・ケイが指摘したとおり、そうした未来社会をシステム設計できる子どもたちを、ひとりでも多く育てることが大切なのではないでしょうか?
■「IT25・50」シンポジウム アラン・ケイ基調講演


2024年12月8日(日)開催「Global Digicon Salon 029 ITday Japan 2024  世界の『1984(ディストピア)化』にどう立ち向かうか?」

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