編集後記④:ひとりじゃ何もできない出版社『Go to Togo 一着の服を旅してつくる』
いよいよ嶋田くんによる最後の編集後記。これまでに増して、気合いを入れて書いてくれたらしい。気合い入れすぎて、自分で気持ちよくなっていたらしい。なにかに挑戦するとき、ぼくが大切にしていることを嶋田くんは実践していた。自分で自分を奮い立たせるということ。
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ぼくはわりとなんでもやりたがりで、悔しがりです。なので本をつくったり、いろんなものを制作するときには「企画も僕です、執筆もぼくです。なんだったら撮影もデザインもぼくです」なんて調子に乗ったことを言います。
予算の都合上、そのように取り組んでいることも時にはあるわけですけど、これは「そういったことができる能力があります」という話ではなくて「そういったことにも挑戦しています」というような意味合いだと思ってほしいです。
とはいえ昔は「自分には何もできっこない」と、自分がつくったものを人に見せることがとても恥ずかしかったので、成長したとも言えます。……、でも、やっぱり基本的にはぼくは「ひとりじゃ何もできない」と思っています。
近頃は「(運営母体が一人であるという意味で)ひとり出版社」という出版社さんも結構ありますが、それをもじってぼくは「ひとり(じゃ何もできない)出版社」と名乗っています。『Go to Togo』も何もできないぼくだけれどたくさんの人の力を借りながら、一冊の本にまとめました。今回は、ぼくが一緒に制作をしてもらった人たちを紹介します。
<著者>
中須俊治くんです。彼の凄さは、ぜひ本著を読んで感じて欲しいという意味もあって、あえて多くは語ってこなかったのですが、本当に凄いです。わかりやすく例を挙げれば、このnoteのコール&レスポンスで著者と編集者として記事をアップしあっているときに、彼は自分の苦労や凄さは一切語らず、僕のことを凄いと思ってくれたとか、素敵なことがあったとか、人のことを話します。中途半端な状態で宙ぶらりんであったぼくをここまで導いてくれたのはきっと中須くんです。にも関わらず彼は「嶋田くんが凄い」と言うのです。
本著に関わるところでいえば、これまたわかりやすい例でいえば、彼のトーゴでの共同事業者です。彼はなんとたまたまタクシー(バイクタクシー)の運転をしてくれた人の人柄に惚れ込み、「一緒に仕事をしたい」と言って口説き落としました。偶然、トーゴで乗せてもらった運転手の人にです。こんな風に、彼の凄さがたくさん『Go to Togo』では語られているので、ぜひ読んで欲しいです。
<デザイナー>
トモクサデザインの友草さん。ぼくはわりと発明好きでアイデア好きで、みたこともないことや他の人がしていないことが大好きなのですが、当然、無茶ぶりをしてしまうこともあります。「まあ、とりあえず発明ですかね」とか。もしくは急にアイデアを思いついて、全てをひっくり返してしまうこともあります。「全然いままでとアイデア違うんですけど、クラフト紙って面白くないですか?」とか。こんな僕のアイデアを受け止めて、毎回真剣に案出しをしてデザインにしてくれるのがトモクサさんでした。
<イラストレーター>
表紙の装画をしてくださった、さかもとみなこさんです。突然の依頼で、一筆書きをされていることで、お願いをしました。「こんな感じと、あんな感じと、そんな感じとを混ぜた感じでお願いします」みたいな無茶なイラスト注文にも関わらず、見事に「一筆書き」というもので、この書籍の全ての価値を象徴する表紙イラストを制作してくださいました。良くも悪くも、表紙というのは、その書籍の価値が、そこに集約されます。紙やタイトル、本としての重みなどいろんな要素に左右される装画ですが、柔軟に対応いただき、一緒にとても良い一冊に仕上げてもらうことができました。
<印刷所>
昨年工場見学させていただいて、お願いすることになった丸山印刷さん。紹介してくださったのはetomojiの清川さんというデザイナーさん。そして丸山印刷さんは、姫路あたりにある印刷所さんです。印刷については僕もものすごく詳しいわけではないのですが、仕様変更や終盤の詰め作業で、丁寧にご対応いただき、最終的にとても良い仕上がりにしていただきました。紙や印刷方法など、相談すれば、最適な方法を教えてくださいました。
<表紙の紙屋さん>
大和板紙さんの「エースボール」という紙を使用しています。実は以前制作した「のろし」というリトルプレスでもお世話になったところで、「美しい本の為の装丁用」という見本帳をつくられていて、カラーボールに対する印刷の仕上がりを見ることができます。カラーボールは、もともと下地に色がついているので、色の発色が難しいのですが、この見本帳では、カラーのさらに下に白インクを印刷した場合としていない場合が載っていて、とても参考になります。
<校正>
矢吹編集室の矢吹恵理子さん。うちの母親と同じ高校で、前職の同僚?でもあります。「息子みたいな感じ」と言ってもらった記憶がありますが、今回は校正で色々なことを指摘してもらえました。校正は本当に細かい部分ですが、一気に書籍が引き締まっていく印象があります。
<あらゆるアドバイス>
実はぼくには一人のブレーンがいます。京都・美山で椅子ばりという聞きなれない仕事をしているTosstoの大矢くんです。彼は、本業は椅子ばりといって、アンティークや中古の椅子の座面のクッション部分を中心に張り替える仕事をしている職人です。ただ器用なので、椅子ばり以外にも、什器の制作やデザイン仕事もしています。実は烽火書房のロゴも彼の手によります。今回の本のデザインやコンセプトについても、たいてい雑談がてら相談をして、意見をもらっています。
<出版とは何かを教えてくれた>
ぼくは編集の仕事はずっとしてきましたが「商業出版」はしたことがありませんでした。僕は小鳥書房の落合さんのもとでインターンを経験させてもらい、編集とはなにか、出版とは何かを、出版社・書店など色んな角度で勉強させてもらい、この本をつくることができました。「発明」ということへのこだわりを教えてくれたのも落合さんだったりします。ものすごくパワフルで、かつ面白い本を作られています。
紹介したい人はたくさんいます。それはなんだったら、ぼくが「ひとりじゃ何もできない」ことを暴いていくことでもあるのですが、書籍はもとより、様々な商品が作られていく過程があまりにも不透明であることに違和感があったので、今回、きっちり紹介させてもらいました。
実は『Go to Togo』という本はそういった「過程」にどれだけ想像力を働かせてきたかという本でもあります。目の前に一着の安い服があります。ぼくたちは思わずそれに飛びつきます。「安い、嬉しい」。でも実はその服ができるまでの道のりをたどると、その服の安さの「しわ寄せ」を誰かが支払っています。それは誰なのか、何故なのか。制作、流通、生産。『Go to Togo』は今一度僕たちが誰かに払わせつづけた何かを、想像しなおすための機会でもあると思っています。
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AFURIKADOGS×Deabalocouture
(アフリカドッグス×デアバロクチュール)
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