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デザイナーが教える人間工学 使いやすさの正体 ~ユーザビリティの定義を読み解く~

こんにちは。東芝共創センターCreative Circuit®担当の池田Sです。
グラフィックデザインをバックグラウンドに、現在は東芝の共創センターの運営に携わっています。

みなさんは日々の生活の中で、何かをスムーズに使えなくて煩わしさを感じたという経験はありませんか?

それはどんなものでしたか?
逆に、「使いやすい」ってどういうことなのでしょう?

今回はISO(国際標準化機構)の規格を読み解き、ユーザビリティについて考えていきたいと思います。ISOってとっつきにくい印象ありますが、使いやすさの正体が書かれているとか…というわけで、早速ISOの定義をみていきましょう。

ちなみに今回のお話のISOについて少しご紹介しますと、ISOにはISO9241シリーズという「人とシステムのインタラクション」に関わる規格群があります。コンピュータを用いた作業の増加や機器の操作複雑化が問題となった1990年代に整備が進み、これら一連の規格の中でユーザビリティについては1998年に発行されたISO9241-11にてその定義がなされました。2018年に改訂されましたが大枠は今でも変わっていません。当該ISOの翻訳規格であるJIS Z 8521も2020年に発行されています。


1.      ISOにおける使いやすさ(ユーザビリティ)の定義

※ユーザビリティの定義 ISO 9241-11(2018) / JIS Z 8521(2020)

これが「使いやすさの正体」!らしいのですが…
意味がわかるような、わからないような…???
…混乱してきたので、ちょっと冷静になって深堀してみましょう。


ポイント 特定のユーザー、特定の利用状況、特定の目標

「特定の…」が並んでいますね。規格なのに何も規定していないようにも見えますが、これは誰が・どんな環境で・何を目的にそれを利用しようとしているのかということを特定しましょう、つまり「製品やサービスの利用状況を決めましょう」ということです。

押しボタンを一つデザインする場合でも、「こういうサイズなら使いやすい」という何にでも当てはまるような汎用的なデータは残念ながらありません。ユーザーや環境などを含めた利用状況が決まらないと、適切なボタンサイズも決められなければ、色も、仕様も決められないからです。

たとえば、手袋をして作業するような機器の場合は通常よりも大きなボタンサイズが求められることがあります。逆にテレビリモコンのように手に持って使う製品であれば小さ目のボタンのほうが多くの機能がてのひらの中で操作でき、リモコンのデザインとしては望ましいとされるでしょう。

また暗いところで扱う製品であればそのボタンが光ることが最も重要かもしれません。目の不自由な人が使う製品であれば触ってそのボタンが識別できるというデザインが求められます。

このように、ユーザーや利用状況を特定するということで使いやすさを検討ことができるのですね。

ポイント デザインの対象

考えるべきデザインの対象は「システム、製品に加えてサービス」と書かれているように、サービスデザイン、ひいてはビジネスのデザイン等、広義のデザイン領域も包含しています。実はこのISOの初版にはサービスという言葉はなかったのですが、2018年の改定時にここに書き足されました。現代のビジネスにおいては製品だけでなくサービス全体のデザインが重要であると叫ばれる中、時代に則した記述になっていきました。使いやすさ(ユーザビリティ)の考え方は、サービスという無形のものにも適用できるのですね。

ポイント 3つの観点
続いて3つの観点、効果、効率、満足。これらが使いやすさの正体の核心です。

まず3つの観点をこのようなモデルで見て見ましょう。

私たちは、ある目標となる状態になりたくて、製品やサービスを利用します。その目標を達成できたかどうかという観点が「効果」で、これは最も大切です。

そして、目標状態に至るまでの道のりはできるだけスムーズでありたいですよね。その道のりの長さや困難さが「効率」という観点で表されます。

そして、モノやサービスを利用して得られた結果はユーザーの期待を満たすものだったかという主観的観点として「満足」があります。このような主観的な観点も人間が扱う製品やサービスをデザインするためには重要なんですね。確かに、目標は達成できたけれど、何をしているのかがわからないまま進んだり、なんとなく不安が残ったりするような製品は、人にやさしくはないですよね。

そして、3つの観点は、作業の成功率や作業時間、主観評価(アンケート)などで計測することで「尺度化」することが出来ます。これらの尺度でデザインレビューを繰り返すことで、使いやすい(ユーザビリティの高い)製品やサービスを作ることができるようになります。

生活のあらゆるものがデザインされ、改善が行われている現代においては、「効果」や「効率」をもってタスクが達成できることは大前提、ある意味「当たり前」となっています。そのため現代の企業デザインにおいては、ユーザーの「満足」の重要度が増していると言えるでしょう。私たちも製品やサービスを使ったときの心地よさや、期待以上の満足が提案できるように日々、デザインに向き合っています。

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講師の紹介
講師の井戸健二は東芝で人間工学の知識や技術を活用して25年以上にわたって多くの製品やサービスのデザインを担当してきたデザイナーです。現在、東芝共創センターCreative Circuit®の運営チームに所属し活動しています。さらに、こうした専門知見で、東芝のデザインの土台を支えるだけではなく、東京工芸大学、多摩美術大学で教鞭をとるなど、アカデミアでのキャリアもあります。今回のウェビナーも、大学の講義と仕事の経験をミックスした語り口でお届けしますので、大学生にも、ビジネスパーソンにもおススメです! 


第7弾の「使いやすさの正体」では、「使いやすさ」ってどういうこと?をテーマに、人間工学の詳しい理論をご紹介予定です。これまでのウェビナーを視聴していなくても今回の内容だけで十分にわかるようになっていますので、是非ご参加ください。

皆さまのご参加をお待ちしております!

 

3.      さいごに

みなさん「使いやすさ」の正体、掴めてきましたでしょうか?

是非、日常でもこれはなぜ使いやすいのだろう?(または使いにくいのだろう?)と
使いやすさの正体を探ってみてください。きっと面白い発見があるのではないでしょうか。
 
今後も「デザイナーが教える人間工学」について、noteでの発信やウェビナー配信をしていけたらいいな、と思っています。最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました!
 

過去の記事も是非ご覧ください! 

[第1弾] デザイナーが教える人間工学 眼のしくみから、文字の読みやすさを考える
[第2弾] デザイナーが教える人間工学 眼のしくみから、文字の読みやすさを考える コントラスト編
[第3弾] デザイナーが教える人間工学 少しの工夫で見やすさが大きく変わる!カラーユニバーサルデザイン編
[第4弾] デザイナーが教える人間工学 記憶のしくみを使ってわかりやすいデザインをつくる! 記憶のしくみと認知の働き
[第5弾] デザイナーが教える人間工学 記憶のしくみと認知の働き 認知特性に基づくデザインのコツ!
[第6弾]デザイナーが教える人間工学 ヒューマンエラーを防ぐ!デザインのひみつ
 
 
ライター:池田S


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