『踊りたい夜』(1963年・松竹大船・井上梅次)
ラピュタ阿佐ヶ谷「蔵出し!松竹レアもの祭」で、井上梅次監督『踊りたい夜』(1963年・松竹大船)を久々にスクリーン鑑賞。
7月3日(土)14時30分から本作の上映前に、三女を演じた鰐淵晴子さんとトークをご一緒します。「ピンクタイツ」の裏話もお伺い出来たらと思っています。
さて『踊りたい夜』ですが、もうアタマからシッポまで、井上梅次節が満載のサービス精神の塊のようなショウビジネス讃歌。長女・水谷良重さん、次女・倍賞千恵子さん、三女・鰐淵晴子さん。ピンクタイツ三人姉妹が、芸に生き、愛に泣き、家族の絆を確かめていく。ショーマストゴーオンの精神に貫かれた傑作和製ミュージカル。
三人姉妹のステージをサポートするのは、Mr.ショービジネス、藤木孝さん! 作詞・井上梅次監督、作曲・広瀬健次郎さんによるミュージカル・ナンバーのわかりやすさ!
歌詞は決して「粋」ではないけど「粋な恋の盗人」と歌い踊る藤木孝さんの姿は粋! そのカッコ良さ! 決して「セクシー」な詞ではないけど「ピンクタイツの歌」を歌う三人姉妹の素晴らしさ!
何より、ダメダメなお父さんを演じた有島一郎さんが最高。売れない手品師が、素晴らしく成長した娘たちのマネージメントをして、我が世の春を愉しんでいるが…の展開。本当は憎まれ役なのに、有島一郎さんのおかしさで、しょうがないなぁと、許せてしまう。
関門のナイトクラブ「海峡」(笑)で、サックスを吹いているジャズ・ジャイアンツに佐田啓二さん。これまたカッコいい。歯の浮くようなキザなセリフが、見事に決まってる! 井上梅次監督の「脳内洋画」に見事に応える佐田啓二さん、素晴らしい。
クライマックス、父娘の感動的な再会は、ブロードウェイ・ミュージカル「ショウボート」のマグノリアとお父さんの再会シーンなんだけど、いつ観ても泣かされる。ここからの、ラストにかけてのドラマの畳みかけるような展開に、毎度ながらグッときてしまう。そしてグランドフィナーレ!
映画を観終わると「♪飛んで跳ねても メシは食えないのは 昔のこと〜」と主題歌を口ずさんでしまうこと請け合い!
で、井上梅次監督のすごいのは、これをそのまま香港でリメイク『香港ノクターン/香江花月夜』(1966年)という大ヒット作を撮ってしまったことでもあります! こちらも傑作。日本でもDVD化されていますが、肝心の『踊りたい夜』はいまだにソフト化されていないのが残念! これを機にぜひ、ソフト化を切望します。