2023年9月20日 山中貞雄『人情紙風船』 溝口健二『西鶴一代女』 成瀬巳喜男『浮雲』。4K リマスターBlu-ray でリリース!
山中貞雄の遺作となった時代劇の名編『人情紙風船』。井原西鶴の浮世草子「好色一代女」を脚色した文芸ド ラマ『西鶴一代女』。林芙美子の同名小説を映画化した恋愛ドラマの傑作『浮雲』。映画史に残る3本タイト ルが、ついに4K リマスターBlu-ray でリリースされます。
『人情紙風船』(1937年2月8日・P .C. L.・山中貞雄)
不世出の名匠山中貞雄、畢竟の感動名篇!
江戸深川の棟割長屋。浪人海野又十郎(河原崎長十郎)は今日も頼みの毛利三左衛 門(橘小三郎)に仕官の途を求めるが、いい返事をもらえない。一方、壁隣に住む 髪結新三(中村翫右衛門)は商売道具を質に入れようと白子屋を訪れるが、こけに されたことから、白子屋の娘お駒(霧立のぼる)を誘拐してしまう...。 シナリオライターを経て、昭和 7 年に監督デビューした山中貞雄の P.C.L 入社第一 回作品。1 カットの為に約 36m の長さの石垣を作り、ステージをブッ通す棟割長屋 のセットを組むなど、リアルな映像にこだわった。山中貞雄は、わずか 5 年半の間 に 26 本の時代劇映画を作り、そのすべてが評判を呼んだが、本作の完成直後に日中 戦争に召集され、中国にて戦病死。本作が遺作となった。
監督:山中貞雄/脚本:三村伸太郎/音楽:太田忠 出演:河原崎長十郎/中村翫右衛門/山岸しづ江/中村鶴蔵/霧立のぼる/橘小三郎
『西鶴一代女』(1952年4月17日・児井プロ=新東宝・溝口健二)
爛熟の浮世絵風俗を再現する芳醇な情緒
凍てつくような冬の夜明け、厚化粧に身をやつした惣嫁(そうか)と呼ばれる街 娼お春(田中絹代)が羅漢堂に入ってゆく。お春は五百羅漢の仏像に自分がかか わりあった男たちの顔を重ねて遠い昔を偲ぶ。不義密通罪で斬首刑に処せられた 勝之助(三船敏郎)、松平の殿様(近藤敏明)、笹屋嘉兵衛(進藤英太郎)、扇屋弥 吉(宇野重吉)...。幾人かの男たちと出会い、そして別れるたびに不幸になって ゆく我が身を振り返るのだった。 スタッフ、キャストにベストを尽くすことを求め続けた溝口健二監督が、戦時中 から温めていた企画を新東宝と児井英生プロダクションの提携で実現したもの。 1952 年ヴェネチア国際映画祭で国際賞を受賞した。その後溝口健二監督は、1953年に『雨月物語』で銀獅子賞を、1954 年には『山椒大夫』で銀獅子賞を受賞し、3 年連続の映画祭受賞を成し遂げた。
原作:井原西鶴/監督:溝口健二/脚本:依田義賢/音楽:斎藤一郎 出演:田中絹代/山根壽子/三船敏郎/宇野重吉/進藤英太郎/近藤敏明
『浮雲』(1955年1月15日・東宝・成瀬巳喜男)
荒野に翳る浮雲の流れ哀しき運命か あわれ女の愛情流転
戦時中のインドシナに赴任したタイピストのゆき子(高峰秀子)は、現地で会っ た農林省技師の富岡(森雅之)に妻が居ることを知りながら、関係を結ぶ。終戦 を迎え、富岡は妻と別れる言って先に帰国した。ゆき子は、後を追って富岡の家 を訪れるが、富岡は離婚していなかった。ゆき子は富岡と別れ、米兵の情婦にな ってしまう。結局、二人はよりを戻すのだが...。 「幸田ゆき子という主人公の生き方の中には人間のいとなみのはかなさ、哀しみ がある。これをしみじみと描きたい。」本作の製作にあたって、こう語る成瀬巳喜 男監督は、本作の前に『めし』『稲妻』『妻』『晩菊』と林芙美子文学を映画化。5作目となる『浮雲』を林芙美子文学の集大成と位置づけていた。1955 年度キネマ旬報ベストテン第 1 位。 1955 年度ブルーリボン賞作品賞。第 10 回毎日映画コンクール日本映画大賞を受賞。
原作:林芙美子/監督:成瀬巳喜男/脚本:水木洋子/音楽:斎藤一郎 高峰秀子/森雅之/岡田茉莉子/中北千枝子/加東大介