Abilene Town『静かなる対決』(1946年・ユナイト・エドウィン・L・マーティン)
6月29日(水)の娯楽映画研究所シアターは、ランドルフ・スコット主演の西部劇Abilene Town『静かなる対決』(1946年・ユナイト・エドウィン・L・マーティン)をアマプラからスクリーン投影。1946年に製作されたギルド・プロダクションの小品かと思いきや、これは面白かった。日本での公開は1952(昭和27)年12月に公開されている。
南北戦争が終結して5年後、カンザスのアビリーンの町の保安官ダン・ミッチェル(ランドルフ・スコット)は、根っからの正義漢。堅物ではなく酒場の歌姫・リタ(アン・ドボラック)に惚れている。しかし荒っぽいカウボーイ相手の商売を是とする酒場のオーナー、チャーリー・フェア(リチャード・ヘイル)とは反目している。
ある日、カウボーイのボスでならず者のライカー(ディック・カーティス)が仲間を殺され「必ず復讐する」と言い残して去っていく。街は戦々恐々。そこへ列車強盗・ジェット・ヤンガー(ジャック・ランバート)一味が現れて、騒然とし始める。
法を守るはずの連邦保安官・ブラボー・トリンブル(エドガー・ブキャナン)は頼りにならない。全てがダンの肩にかかってくる。さらにこの地に住み着きたいと開拓団が入植。それが面白くないカウボーイたちとの争いが絶えない。
この開拓団のリーダー、ヘンリー・ドレッサーを演じているのが若き日のロイド・ブリッジス。さらに、ダンを保安官に命じた街の有力者で商店主の娘・シェリー・バドラー(ロンダ・フレミング)は、ダンに恋するあまり、リタに夢中のダンに反目する。
つまり単純な「勧善懲悪」ではなく、南北戦争終結後、混乱しているテキサスの街を舞台に、カウボーイVS開拓団、銀行強盗、ならずものたちが、それぞれの思惑で対立。一筋縄では行かないドラマが展開する。
南北戦争後の混乱でのカンザス州の「経済の問題」がテーマ。開拓団は西部に移民して新しい生活を始めようとしている。牛飼いの街であるアビリーンは、牛飼いとカウボーイ、街の元締めとの間が一触即発状態。ダンは、アビリーンの街の人々と、牧場主と、カウボーイの不安定な共存を維持しなければならない。そこへ快諾団が入ってきてバランスが崩れていく。
89分に、見せ場がふんだん。のちにジョン・ウェインの刑事映画『マックQ』(1974年)や『ブラニガン』(1975年)、バート・レイノルズの『白熱』(1973年)や『ゲイター』(1976年)を制作するプロデューサー、ジュールス・レヴィの初期作品。このプロデューサーの作風、男騒ぎの映画の作り方、一貫しているんだなぁと感心。
しかもアクション、アクション、またアクションだけでなく、歌姫・リタ(アン・ドボラック)が酒場のステージで、”I Love Out Here in the West”,"All You Gotta Do","Every Time I Give My Heart"の三曲をアン・ドボラックが歌う。ミュージカル映画的な楽しさもある。パブリック・ドメインの素材なので、フイルムの状態も悪く、音声もいまいちだが、綺麗な素材で観てみたい。ランドルフ・スコットのタフガイぶりと、若き日のジェフ・ブリッジスの精悍さ!