娯楽映画研究所ダイアリー 2022年3月21日(月)〜3月27日(日)
月曜更新!毎月「阿佐ヶ谷ネオ書房」で開催している僕のイベント「娯楽映画の昭和」で実践している「映画時層探検のススメ」であります。3月27日(日)には「東京映画地図」開催!【佐藤利明の娯楽映画研究所】娯楽映画の昭和〜東京映画地図の楽しみ
3月21日(月)『街は春風』(1937年・パラマウント・ミッチェル・ライゼン)
『街は春風』(1937年・パラマウント・ミッチェル・ライゼン)。プレストン・スタージェス脚本!ミッチェル・ライゼン監督作品。ハリウッド黄金時代のコメディの面白さが堪能できる才気あふれるスクリューボール・コメディの傑作! 僕はこの映画を観る前から、ビリー・ホリディやエラ・フィッツジェラルドが歌ったスタンダード”Easy Living”(作詞・作曲・レオ・ロビン、ラルフ・レインジャー)に親しんできた。レコードに映画『街は春風』主題歌とクレジットされていて、いつかは観たいと思っていた。
3月22日(火)『花の咲く家』(1963年・松竹・番匠義彰)・『クレージーの花嫁と七人の仲間』(1962年・松竹・番匠義彰)・『お人好しの仙女』(1935年・ユニバーサル・ウイリアム・ワイラー)
佐藤忠男先生には、いまから27年ほど前、斎藤寅次郎監督の「東京五人男」について、電話で1時間ほど、お話を伺いました。敗戦後、焼け跡で上映された喜劇映画のインパクトについて、想い出を伺いました。「貴君は、こんなに古い映画に興味があるんだね」と。あれからずっと喜劇映画の研究をしております。心からご冥福をお祈りします。
打合せを終えてラピュタ阿佐ヶ谷へ。みぞれ混じりの冷たい雨に。これからインドネシア、バリ島のウブドまで、佐田啓二さん、岡田茉莉子さんの旅にタイムスリップ。番匠義彰『花の咲く家』(1963年・松竹)を観ます。
番匠義彰『花の咲く家』は、バリ島で出会った佐田啓二さんと岡田茉莉子さんのメロドラマ。クライマックスの笠智衆さんの「善意」にいつも泣かされる。しかし渡辺文雄さんのクズっぷりを観るにつけ、男たるものあゝはなりたくないのお手本。
続きましては、みんな大好き「花嫁シリーズ」とクレイジーキャッツの夢のコラボ! 番匠義彰『クレージーの花嫁と7人の仲間』(1962年4月15日)。スクリーンで味わう喜び!本作の植木等さんは、「スーダラ節」の歌詞イメージのスーダラ男。無責任男誕生誕生は3ヶ月後。東宝が「お姐ちゃんトリオ」とクレイジーを組み合わせたのは、「花嫁シリーズ」とのコラボの前例に倣ったのかと。渡辺プロ映画としても眼福。
プレストン・スタージェス研究。1935年、ユニバーサルでスタージェスがシナリオを執筆したウイリアム・ワイラー監督のロマンチック・コメディ『お人好しの仙女』The Good Fairy(1935年)を堪能した。
3月23日(水)『独身者と女学生』(1947年・RKO・アーヴィング・レイス)・『空の大怪獣ラドン』(1957年・東宝・本多猪四郎)
東京都現代美術館「井上泰幸展」。東宝特撮映画黄金時代を支えた井上さんの美術を、たくさんの図面、スケッチ、デザイン画で辿る夢のような展示。いくら観ても見飽きることはない。申し合わせたかのように、昔からの友人、知人にバッタリ。懇談もたのしく、井上さんのお引き合わせと感謝。最高の展示です!この展示の立役者・三池敏夫さんともお話しが出来て、改めて井上泰幸さんが創り出した素晴らしき特撮の世界に触れて、大興奮しました! 図録も素晴らしく、家宝になること必至です。6月までの開催期間、何度か足を運びます。
東京都現代美術館で開催中の「井上泰幸展」。東宝特撮のヴィジュアルを生み出した、井上さんの「再現する力」。「撮影することよりも、撮影するものを作ることが重要」と、徹底的にミニチュアで空間を創り上げるための努力をしてきた方です。
広い会場いっぱいに、井上さんが手がけてきた「特撮映画の文字通りデッサンが展示されています。1954年の「ゴジラ」から1984年の「ゴジラ」に至るまで、昭和の時代と風景をミニチュアで再現し続けた井上泰幸さんの「仕事」は本当に素晴らしいです。
「三大怪獣地球最大の決戦」のゴジラ上陸シーンのわずか30秒のために、緻密に作り込まれた横浜の街並み。その図面を見つめながら、イマジネーションが果てしなく拡がりました。
井上泰幸さんが設計した特撮映画の「結果としての作品」は、ぼくたちは繰り返し観ることが出来ます。破壊されるための創造。「空の大怪獣ラドン」の岩田屋を破壊するラドンに、驚き、もっともっと観ていたい、と思った少年時代。ミニチュア特撮の尽きせぬ魅力は「よくぞ、ここまで!」の驚嘆と賞賛とともに、あります。
ぼくが「空の大怪獣ラドン」をBlu-rayで再見して、そのディティールに驚嘆している間に、その創造の背景を、カミさんが、星よみ「佐藤星」として読んでくれました。井上泰幸さんの仕事への取り組み方が、ちゃんと出ているのは、すごいなぁと関心しました。
ラピュタ阿佐ヶ谷で番匠義彰の面白さを堪能する日々。「なぜ、こんなに面白いのだろう?」で、連夜、1930年代から40年代ハリウッドのスクリューボール・コメディを見直している。やはり、面白さの質が同じなのだ。「あれよあれよ」と収束していくラストの快感。ぼくにとっては同質の魅力を感るのです。
『独身者と女学生』(1947年・RKO・アーヴィング・レイス)
番匠喜劇研究からの発展。瀬川昌治監督が「旅行シリーズ」のヒントにした傑作コメディ! この『独身者と女学生』は、瀬川昌治監督が若い頃、ロードショーで観て「これは面白かった」といつも話してくれた。若くて可愛い高校生のシャーリー・テンプルに、猛アタックされて、逃げ回るケイリー・グラントがおかしかったと。それが松竹の「喜劇旅行シリーズ」のフランキー堺さんを追い回す倍賞千恵子さんのキャラクターのヒントになったそうである。
井上泰幸展の興奮覚めやらず、深夜に「空の大怪獣ラドン」Blu-rayをスクリーン投影。年末の4K版まで観ないでおこうと思っていたけど、やはり岩田屋襲撃を観ないわけには行かない。
で、そこだけ観る訳にもいかない。ハリウッドの怪獣映画のセオリーで、怪事件→メガヌロンの来襲→退治作戦中の主人公行方不明→記憶喪失→その克服→いよいよラドン大暴れ。この手数が大事。怪獣はいきなり出てきちゃいけないのです。
僕らは、その出現までのプロセスを我慢して観る事で「映画を観る、楽しむ」チカラを身につけたのです。そこから、ラストまでの一気呵成。福岡襲撃シーンは特撮映画美術の極みであります。イーストマンカラーの色彩美。ミニチュア破壊のカタルシス。もう、なにもかも、素晴らしい!
3月24日(木)『特急二十世紀』(1934年・コロムビア・ハワード・ホークス)・『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』(1966年・東宝・本多猪四郎)
番匠義彰作品の面白さの源流(と勝手に思っている)ハリウッドのスクリューボール・コメディを連日観ている。昨夜は、ハワード・ホークス監督のエポックメイキングとなった傑作『特急二十世紀』(1934年・コロムビア)を久しぶりにスクリーン投影。タイトルのTwentieth Century「20世紀特急」とは、ニューヨーク・セントラル鉄道のニューヨーク〜シカゴ間の特急列車で、1902年〜1967年に運行されていた。
井上泰幸展の興奮覚めやらず、Blu-ray「フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ」(1966年・本多猪四郎)をスクリーン投影。わが幼き日、母親の故郷、高知東宝で「ジャングル大帝」と二本立てで観て、しばらく悪夢に悩まされた怪獣映画の最高峰。
改めて見直すと、トップシーンの漁船を襲う大ダコ! 操舵するは「ゴジラ」(1954年)で被害者となった山本廉さん! 嵐の中、海中から登場するガイラ! 怖いねぇ。で、この映画がすごいのは、ガイラが最初から出ずっぱりで大暴れすること。これぞ怪獣映画!三浦海岸に来襲し、羽田空港でおねーさんを喰らう。さらに屋上ビアガーデンで歌姫を鷲掴み。見せ場見せ場の連続で、殺人光線!を発射するメーサー車が登場してからは、テンション上がりまくり。
山のフランケンシュタイン・サンダが、不肖の弟を助けにくる。なんたって「ウルトラマン」放映開始直後だしね。そこからラストまで一気呵成。やっぱり、すごい映画!
3月25日(金)『はだしの花嫁』(1962年・松竹・番匠義彰)・『太陽を抱く女』(1964年・松竹・番匠義彰)・”The Women ”(1939年・MGM・ジョージ・キューカー)
本日のPR Timesで4月15日からのNHK文化センター青山「クレイジーキャッツの音楽史」リリースが紹介されました!
今日は番匠デー! ラピュタ阿佐ヶ谷で番匠義彰監督「はだしの花嫁」「太陽を抱く女」を観ますよ。楽しみ!
番匠義彰『はだしの花嫁』(1962年・松竹)。小説家・南原宏治さんの「海を渡る花嫁」の筋書きを越え、倍賞千恵子さん、鰐淵晴子さん、寺島達夫さん、早川保さん、山本豊三さんの五角関係が大混戦。クライマックスの畳み掛けは、スクリューボール・コメディ的であり、大船調の情感がプラスされての心地良さ。
ラピュタ阿佐ヶ谷で番匠義彰監督『太陽を抱く女』(1964年・松竹)。真理明美さんをフューチャーした「大家族お手伝いさんもの」なのだけど、「花嫁シリーズ」などの番匠喜劇の集大成とも言うべき快作!
父・佐野周二さん、長男・柳沢慎一さん、その妻・久保菜穂子さん、長女・三ツ矢歌子さん、次女・清水まゆみさん、その夫・菅原文太さん、次男・小坂一也さん、その恋人・岩本多代さん、三男・山本豊三さん。さらに、三ツ矢歌子さんのお見合い相手・杉浦直樹さん。
これだけの人物が出たり入ったり。それぞれのドラマを描きつつ、この「南家」にお手伝いさんとして入った真理明美さんが、巻き起こす「幸福の旋風」が素晴らしいのです。
お見事、見事な作劇。鮮やかな人物さばき。クライマックスからラストにかけての展開は、何度見ても心地よい!
「幸せの連鎖」を観客にお裾分けしてくれる、最高のホームドラマ! これが番匠クオリティ!
浮気がバレた後の菅原文太さんが、とにかく最高におかしい。清水まゆみさんも、腰が据わった女将さんぶりが頼もしい。
今日の番匠義彰映画『はだしの花嫁』と『太陽を抱く女』は、上野と赤坂の「天八」が舞台。つまり天麩羅とビールが欲しくなる映画。さらに『明日の夢があふれてる』(1964年)を観ると完全に「天麩羅と麦酒」が欲しくなる仕組みになっております^_^
ラピュタ阿佐ヶ谷「番匠義彰:松竹娯楽映画のマエストロ」もいよいよラストウィークに! あっという間でしたが、番匠映画の面白さ、巧みさが、多くの映画ファンに届いて嬉しいです! 最終日の4月2日(土)には鰐淵晴子さんをゲストにお迎えしてトークショーです!
昨夜の娯楽映画研究所シアターは、ジョージ・キューカー監督”The Women”(1939年・MGM)。原作は、ブロードウェイの戯曲。三度映画化されいずれも日本未公開。これは面白いハリウッド女優の夢の饗宴。男性が一人も出てこない「女性映画」の佳作!
スクリューボール・コメディ研究から派生してハリウッドのコメディ映画のあれこれを考えている。昨夜はジョージ・キューカーの代表作の一つにして、長らく日本未公開だったMGM女優饗宴の佳作”The Women ”(1939年・MGM)をスクリーン投影。DVDでは『女たち』と邦題が付けられている。確かアテネフランセの上映では『ザ・ウィメン』だった。
3月26日(土)『素晴らしき休日』(1938年・コロムビア・ジョージ・キューカー)
スクリューボール・コメディ研究からその源流、派生したものを考えつつ、先週の土曜日、ジョージー・キューカーの傑作『素晴らしき休日』(1938年・コロムビア)を久しぶりに観た。
こうしたコメディのエポック作品を連日楽しめるのは、コズミック出版のDVD BOXのおかげ。「一度は観たい!名作映画コレクション 夢のひととき」(10枚組)に収録されている。
3月27日(日)「佐藤利明の娯楽映画研究所SP 2022 娯楽映画の昭和VOL.3 東京映画地図」
本日のネオ書房イベント「佐藤利明の娯楽映画研究所SP 2022 娯楽映画の昭和VOL.3 東京映画地図」。おかげさまで完売、とのこと。ありがとうございます!次回も決定しましたので、よろしくお願い申し上げます。
今回は「数寄屋橋・西銀座」「銀座」「勝鬨橋」「警視庁物語の東京」「上野・御徒町界隈」の映画時層探検へ、参加者の皆さまとご一緒しました。次回「娯楽映画の昭和 VOL.4 夢淡き東京」は、4月24日(日)開催です!詳しくは阿佐ヶ谷ネオ書房のTwitterで!