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『月の出の決闘』(1947年7月15日・大映京都)

丸根賛太郎監督&阪東妻三郎コンビの快作『月の出の決闘』(1947年7月15日・大映京都)をKADOKAWAから発売中のDVDでスクリーン投影。

 敗戦後初めての阪妻映画にして傑作『狐の呉れた赤ん坊』(1945年10月)のコンビが再び組んだ「GHQ下の時代劇」。つまり、俗にいう「チャンバラ禁止令」のさなかに作られた、剣戟スター・阪妻の滅法強い男のイメージを守りつつ、戦後民主主義の啓蒙というCIEの要請に沿った、ユーモラスかつヒューマニズムあふれる痛快時代劇。チャンバラシーンは少ないが、痛快時代劇の「痛快さ」に溢れていて、阪妻のキャラクターも魅力的。ヒロインで、酒場の若女将・花井蘭子の阪妻への純情が、映画の体温を高めてくれる。

「天保水滸伝」でお馴染みの北関東が舞台。天保十三年、喧嘩っ早くて、人情に厚いヤクザ・天堂小彌太(阪妻)は、農民たちのリーダーである大原幽学(青山杉作)が「博打禁止」を奨励しているために、ヤクザの商売が上がったりと、幽学を斬りに行く。

 小彌太が間借りしている居酒屋の女将・おせん(花井蘭子)は、幽学の素晴らしさを小彌太に説いて、思いとどまらせようとするが、一途な小彌太は、幽学に斬りかかろうとする。しかし、超然とした幽学に圧倒されて、結局は手出しすることができない。

 次第に幽学の人柄に惹かれていく小彌太だったが、長尾主馬之介(東野英治郎)は、小彌太らと敵対するヤクザ・荒川の大八(上田吉二郎)を岡引きに命じて、幽学が幕府転覆を図っているのではと、その生命を狙うが・・・

 クライマックス。幽学と村人たちが盆踊りに興じている月の夜、彼らを守るために、小彌太が長尾主馬之介たち悪役たちと壮絶な斬り合いをする。盆踊りとチャンバラのカットバック。これが映画的な興奮を高めてくれる。悲劇的なラストにも関わらず、幽学と村人・農民たちの勝利のカタルシスがあり、とても心地良い。

 さすが「山中貞雄の再来」と呼ばれただけに、丸根賛太郎の映画は素晴らしく、映画的なエモーションに溢れている。しかし、阪妻は実にかっこよく、愛嬌もあり、そしてみのこなしが鮮やか。スターの中のスターでありますなぁ。

 この大原幽学と小彌太の関係は、のちに山本薩夫が手がけ『座頭市牢破り』(1967年・大映)での大原秋穂(鈴木瑞穂)と座頭市の関係でリフレインされる。勝新は『狐の呉れた赤ん坊』(1971年)もリメイクしており、本作のファンでもあったのだろう。

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佐藤利明(娯楽映画研究家・オトナの歌謡曲プロデューサー)の娯楽映画研究所
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