『足にさわった女』(1960年8月24日・大映東京・増村保造)
増村保造監督、市川崑企画『足にさわった女』(1960年・大映)。沢田撫松原作「足にさはつた女」は、日活で1926年、東宝で1952年に越路吹雪さん、池部良さん主演で映画化。三度目は、女・塩沢さや(京マチ子)、刑事・北六平太(ハナ肇)、小説家・五無康佑(船越英二)に、クレイジーキャッツの面々、大辻司郎さん、ジェリー藤尾さんなどなどをキャスティング。
東宝版は洒脱なコメディという味わいだったが、大映版は賑やかな喜劇という感じ。中盤までの大阪→東京間の特急こだまの車内での描写は、増村保造の才気を味わう不思議な空間。京マチ子さんの美しさを眺めているだけでも楽しい。市川崑&和田夏十さんの脚本も、前作を踏襲しているが、「女」が不遇な死を遂げた父のために親戚に復讐を目論む後半が1960年代スタイル。
女の故郷は、前作では「熱海」だったが、今回は「厚木」。復讐するにも親戚たちは、米軍基地のための土地買収で四散、誰も彼もいなくなり、彼女の故郷は米軍の演習場となっている。そのアイロニー。唯一の血縁が、江波杏子さんの若い娘で、彼女がなかなかいい。
テンポ良く展開するのだが、映画にはこれが初主演のハナ肇さんの生真面目さが、少しモッサリしていて、比べてはいけないのだけど池部良さんには敵わない。
フジテレビ「おとなの漫画」ファンの市川崑監督によるキャスティングで、植木等さんが理屈っぽい乗客、谷啓さんが太々しい列車ボーイ、安田伸さんと桜井センリさんが、冒頭の五無康佑作の小説「犯罪日本」劇中のチンピラ。犬塚弘さんが熱海駅の駅員。現在、犬塚さんは熱海在住なで、不思議な気持ちに(笑)
傑作というほどではないが、増村保造監督の技巧の面白さ、京マチ子さんが女優として最も脂が乗っていた時期の肉体のエネルギーを堪能。
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