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「もしもし、生成AIの免許を取得したいのですが、どうすればいいですか?」~もしも生成AIに免許制度が出来たなら~

「お電話ありがとうございます、こちらは生成AI免許センターです。」

「もしもし、生成AIの免許を取得したいのですが、どうすればいいですか?」


――20XX年。とあるデザイン専攻学生の就職活動のお話――。

美紀「綾、就職活動どう? 何かいいところ見つかった?」

「うん、実はあの○×企業のデザイン課に入れるかもって言われてる」

美紀「えっ、すごい! うちもそこ受けてみたかったんだけど、倍率高そうだし、うちじゃ無理そうだから諦めたわぁ」

「そうなんだ……。一緒の所に行きたかったなぁ」

美紀「いやぁ、うちじゃ無理っしょ」

「なんで? 美紀なら行けるんじゃない?」

美紀「うちじゃ免許取れる気がしないもん。その会社、選考説明会行ったことあるんだけど、生成AIのスキルがかなり求められてて……」

「え、そうなの? 選考説明会でそんなこと言ってた?」

美紀「うん。生成AI免許が必須だって言ってたよ。だから、うちも応募しようと思ったんだけど、一度免許取得に挑戦して、全然歯が立たなくて。これ無理っしょって思ったわ」

「えっ、本当? 生成AI免許ってそんなに難しいの?」

美紀「うん、免許取るの結構難しいみたい。特に、法律とか応用的な部分とか、新しいアルゴリズムの理解とかが難しくてね。これデザイン専攻じゃ絶対取れんっしょって思ったわぁ」

「そうなんだ。……えっ? 私も免許取らなきゃマズいって事?」

美紀「……って言うか……綾、……それマズいどころじゃないんじゃない? その会社に入れても、デザイン部署じゃない所にとばされるんじゃないの?」

「えっ!? それは絶対嫌っ! どうすれば免許取れるの?」

美紀「えぇっと、ここのHPでメール送るか、早く知りたいならセンターに直電して……」

――その夜――

プルルルル……プルルル……

オペレーター「お電話ありがとうございます、こちらは生成AI免許センターです」

「もしもし、あの、私、生成AIの免許を取得したいのですが、どうすればいいですか?」

オペレーター「生成AI免許を取得したいということでございますね。ありがとうございます。それでは、まず基本的な情報からご説明させていただきます。免許を取得するためには、いくつかの条件があります。まず、成人であることが必須です。つまり、18歳以上であることが必要です」

「えっ? はい、わかりました」

オペレーター「次に、必要な書類と手続きについてです。氏名、生年月日、住所、連絡先となる電話番号とメールアドレス、現在の職業、又は最終学歴、そしてAI技術や倫理に関する学習・研修履歴が求められます。また、運転免許証やパスポートなど、有効な身分証明書の写しも必要です」

「そ、そうなんですか……。……結構……たくさんありますね」

オペレーター「そうですね、少し多いかもしれませんが、適切な生成AIの使用を確保するために必要な情報です。それに加えて、生成AIに関する筆記試験と実技試験、面接審査も行います。例えば、筆記試験では生成AIの基本理論や倫理と法律に関する問題が出題されます」

「えっ!? そんなに試験があるんですか?」

オペレーター「はい、筆記試験の後には、実技試験もあります。この試験では、小規模な生成AIプロジェクトを構築し、実行していただきます。その後、生成物の評価を行い、トラブルシューティングのスキルもチェックします。そして最後に面接審査があり、審査官と直接話すことで、生成AIに対する理解と実務経験を確認します」

「そ……そうなんですね……。えっと、具体的にそれは、どこで申し込みをすればいいですか?」

オペレーター「申し込み書類は、当センターのウェブサイトからダウンロードできます。また、ご希望の場合はご住所に郵送することも可能です。どちらがよろしいでしょうか?」

「分かりました……。ウェブサイトからダウンロードしてみます」

オペレーター「かしこまりました。それでは、当センターの公式ウェブサイトにアクセスいただき、「生成AI免許申請」のページから書類をダウンロードしてください。もしわからないことがありましたら、いつでもお電話またはメールでお問い合わせください」

「ありがとうございます。他に、申し込みの際に気をつける点はありますか?」

オペレーター「はい、いくつか注意点があります。まず、成年であることを確認するための身分証明書が必要です。そして、申請書の記載事項に不備がないようにしてください。不備があると審査が遅れることがあります。また、違反があった場合には法的な罰則がありますので、適切な使用をお願いします」

「身分証に、不備が無い申請書と……。えっと、わかりました。ありがとうございます」

オペレーター「ありがとうございます。では、申請書をダウンロードしていただき、必要な書類を揃えた上でお手続きください。何かご不明な点がございましたら、遠慮なくお問い合わせくださいね」

「……は、はい、さっそくやってみます。失礼します」

オペレーター:「失礼いたします」

「……………違反したら罰則……かぁ。審査遅れたら、もう無理かも……。とりあえず免許取らなきゃ……。でも免許取るのも結構お金取られちゃうんだなぁ……。卒業旅行、行けないかも……」

――その前年に生成AIは急遽、免許制度になっていたのであった――

「とりあえず、申し込み書類をダウンロードしなきゃ……」

その書類に書かれていた事。

生成AI免許取得案内

甲. 必要事項

  1. 氏名 

  2. 生年月日(成年であることを確認)

  3. 住所

  4. 連絡先(電話番号、メールアドレス)

  5. 現在の職業

  6. 最終学歴

  7. 学習・研修履歴

    • 関連するAI技術・倫理の履修歴

  8. 身分証明書の写し

    • 例:運転免許証、パスポート等

乙. 注意点

  1. 成年であること:免許取得には必ず成年であることが求められます。

  2. 適切な身分証明書を提出してください。身分証明書の偽造は法律で罰せられます。

  3. 必須学習履歴の確認:AI技術および倫理に関する基礎知識を習得していることが前提です。

  4. 違反時のペナルティ:不正使用や無免許使用には厳しい罰則が適用されます。

  5. 申請書の記載事項に不備があった場合、審査が遅れる可能性があります。

丙. 審査内容

  1. 書類審査

    • .提出された書類を確認し、必要事項が全て揃っていることを確認します。

    • .身分証明書の真偽を確認します。

    • .学習・研修履歴が適切かを確認します。

  2. 筆記試験

    • .生成AIの基本理論(機械学習、自然言語処理等)

    • .倫理と法律(プライバシー保護、著作権法、偏見や差別の排除等)

  3. 実技試験

    • .小規模な生成AIプロジェクトの構築と実行

    • .生成物の評価と改善

    • .トラブルシューティング

  4. 面接審査

    • .審査官との面接により、生成AIに対する理解と実務経験を口述で確認します。

    • .倫理観と法的理解に関する質疑応答

丁. 審査の可否

審査結果は以下の基準に基づいて決定されます:

  1. 書類の完全性(必要事項の漏れがないこと)

  2. 筆記試験の合格基準(80%以上の正答率)

  3. 実技試験の合格基準(評価基準に基づき合格点を満たすこと)

  4. 面接審査の評価(倫理観と法的理解、実務経験の確認)

審査結果は申請者に文書にて通知されます。合格の場合、免許証が発行されます。不合格の場合、再度の挑戦が可能です。

戊. 免許の更新

免許は一定期間(例:3年)ごとに更新が必要です。更新には以下の要件を満たす必要があります:

  1. 継続教育の履修証明

  2. 更新講習の受講

  3. 更新試験の合格

己. 免許の取消および罰則

以下の場合、免許が取消されることがあります:

  1. 無免許使用または不適切な使用が発覚した場合

  2. 提出書類に虚偽があった場合

  3. 法令違反が判明した場合

罰則は法的手続きを経て適用され、最大で免許の取消および罰金が科されることがあります。

以上が生成AI免許取得のための案内書類となります。申請者はこれらの要件を充分に理解し、必要な準備を行った上で申請を行ってください。

「もうよくわかんないっ! なんで生成AI使うだけなのに、こんな書類書いたりとか試験とか受けなきゃいけないのっ!?」

――そうして、綾の夜は更けていくのであった。彼女の就活はどうなるのであろうか。それはまた別のお話――


書類を淡々と書く綾ちゃん

まいどです。
はい、上のお話はフィクションです。現実の法律とは異なりますのでご注意ください。

時々、生成AIを巡って、生成AIを免許制度にすべし、ってコメントを見るのですよ。
じゃあ、実際に免許制度にしたらどうなるのかなぁ、と思って書いてたら、なんだかお話になったので、そのままお話にしちゃった感じです。

で、仮にですよ。
生成AIが免許制度になって「生成AI免許センター」なるものが出来たとしましょう。
コレ、どこが運営すると思います?
免許なので、当然免許を持たない人が生成AIを使ったら罰するように取り締まりをしないといけない訳です。
で、場合によっては逮捕しないといけないですね。
そうなると、当然警察が絡んできますよね
となると「生成AI免許センター」を設立するとしたら、それは当然「政府機関」が設立しなきゃならない訳ですよ。
総務省、経産省、文部科学省あたりが絡んでくるでしょう。
であるならば、当然ですが「生成AI免許センター」は最初は全て税金で設立やらなにやらを行う訳です。
幾らかかると思います?

ざっくりですが、考えられる費用。

【合計】

  • 免許センターの設立・運営費:年間約182億円

  • 試験運営費:年間約78億円

  • 監視・監督費:年間約35億円

  • 取り締まり費:年間約25億円

  • 教育・啓発活動費:年間約12億円

  • 国際インターネット監視と取り締まり:初年度:30億円 + 年間運用費:25億円 = 初年度55億円、次年度以降:25億円/年

  • 未成年者の義務教育への生成AI教育取り入れ:初年度:30億円 + 年間運用費:20億円 = 初年度50億円、次年度以降:20億円/年

  • 企業の捜査・取り締まり費用:年間30億円

  • その他の費用(予備費):年間約10億円

年間総費用(初年度リスク考慮後):約477億円
年間総費用(次年度以降):約392億円

こんな感じになると思われます。
初年度は全て税金で賄わないといけません。
次年度からは、受益者負担を原則とする手数料の徴収、民間からの協賛や寄付、他の政府の補助金や助成金の活用などで、軽減はされるかもしれません。
ですが、政府機関である限り、赤字でも税金で補って続けなきゃいけない訳で。

更にですが、これを早急に行え、なんてコメントも見た事があります。
じゃあこれを一年でやってみましょうか。

【合計】

  • 免許センターの設立・運営費:年間約260億円

  • 試験運営費:年間約104億円

  • 監視・監督費:年間約50億円

  • 取り締まり費:年間約35億円

  • 教育・啓発活動費:年間約20億円

  • 国際インターネット監視と取り締まり:初年度:50億円 + 年間運用費:25億円 = 初年度75億円、次年度以降:25億円/年

  • 未成年者の義務教育への生成AI教育取り入れ:初年度:50億円 + 年間運用費:30億円 = 初年度80億円、次年度以降:30億円/年

  • 企業の捜査・取り締まり費用:年間45億円

  • その他の費用(予備費):年間約15億円

年間総費用(初年度、プレミア考慮後):約684億円
年間総費用(次年度以降、プレミア考慮後):約492億円

迅速な設立には緊急対応のプレミアムコスト、急速なインフラ整備が必要になる訳です。
当然それだけ金額も上がります。
全部税金で賄われます。

本当にそれで良いのですか?

まぁ、現実的に考えると「生成AIの免許化」自体が無理っしょ、ってすぐ分かると思いますけどね。
実際に生成AIの免許制度を導入する際には、以下の問題点が予見されます。

  1. 技術的な問題

    • 技術の急速な進化に対応する更新の遅れ

    • 適切な技術識別と管理の困難

  2. 法的・行政的な問題

    • 包括的な法整備の遅れ

    • 国際調整の困難

  3. 経済的な問題

    • 運営コストの増大

    • 技術革新の阻害

  4. 社会的な問題

    • デジタルディバイドの拡大

    • 教育・訓練の負担増大

  5. 適用範囲と実行の問題

    • 免許の範囲と基準設定の難しさ

    • 違反の取り締まりの困難

うん、絶対無理。
と言うか、そこまでしてやる意味ないし。
で、もしやるなら誰が旗振りやるのコレ?
行政に丸投げ?
私は生成AIに免許制度とか要らないと思ってますから、やらないし手伝わないですよ。

生成AI完全規制の場合

あと、「生成AIは全て規制」とかのコメントも見かけますね。
それ、幾らかかるか分かって言ってのでしょうか?
概算。

【合計】

  • 取締機関の設立・運営費:年間約376億円

  • 取り締まり活動費:年間約200億円

  • システムおよびインフラの整備:初年度:80億円 + 年間運用費:30億円 = 初年度110億円、次年度以降:30億円/年

  • 企業対応および教育活動費:年間約50億円

  • 国際協力費:年間約20億円

  • 法的手続きおよび裁判関連費:年間約50億円

  • その他の費用(予備費):年間約30億円

年間総費用(初年度、プレミア考慮後):約836億円
年間総費用(次年度以降):約756億円

免許制度を設立するより高いんですよ。
しかも、免許制度と違って「受益者負担を原則とする手数料の徴収」とかが無いから、オール税金なのです。
私、そんな税金払いたくないなぁ。
で、ここで終わりではないのが「生成AIの完全規制」。

まず、PCやスマホを完全日本仕様にしないといけなくなります。

  • ソフトウェアの制限:生成AI技術が利用されているアプリケーション(Microsoft Officeの一部機能、Creative Cloudの一部機能など)が利用できなくなる。

  • クラウドサービスの制限:生成AIを利用しているクラウドサービス(Google Cloud, Microsoft Azure, Amazon AWSなど)の一部機能が利用不可になる。

これだけでも頭が痛くなりますね。

さらに生成AIを完全規制した際の日本の損失金額。

初年度の総損失:
[ 1兆円(技術投資減少) + 5000億円(売上減少) + 1000億円(部品調達コスト) + 1.5兆円(労働生産性低下) + 1兆円(輸出減少) + 5000億円(法人税減少) + 3000億円(消費税減少) + 836億円(規制管理コスト) = 約5.72兆円 ]

次年度以降の総損失:
[ 1兆円(技術投資減少) + 5000億円(売上減少) + 1000億円(部品調達コスト) + 1.5兆円(労働生産性低下) + 1兆円(輸出減少) + 5000億円(法人税減少) + 3000億円(消費税減少) + 756億円(規制管理コスト) = 約5.64兆円 ]

合計

生成AIを完全に規制した場合、初年度には約5.72兆円、次年度以降には約5.64兆円の損失が見込まれます。
この損失には、産業全体の競争力低下、税収減少、規制管理のためのコストが含まれます。
また、一般市民や中小企業への直接的な影響も大きく、日本経済全体に深刻な影響を与えることは避けられません。

毎年約6兆円の損失です。

この金額は誰が補填するのでしょう?

世界各国全てが「生成AIの完全規制」をすれば、ここまでの損失は起きないかもしれませんが、まず無いです。

あと、この「生成AIの完全規制」って、「インターネットを完全規制」するくらいの難しさがある訳です。技術的に。

ちなみにインターネットを完全規制した時の損失概算。

少なくとも188兆円。

だれが補填するのこれ?

当然、若い人やこれから生まれてくる子供たちとかなんですがね。
ただ、いくら生成AIに規制をかけたいって人でも、流石にネット規制は言わないと思いますけど。
それでもまず、「生成AIの完全規制」が現実的ではないです。

と、まぁ、極端な事を言っている人の通りに、本当にしようと思うと、こうなるってお話です。

結論として、生成AIの免許制度、生成AIの完全規制は現実的ではありません。ほぼ不可能です。


生成AIを上手く活用し、適切に規制するためには、生成AIの研究を持続的に行うことが最良のアプローチです。
研究し続ける事によって、生成AIのポテンシャルを最大限に引き出しつつ、リスクを適切に管理できるようになります。
日本が遅れているのは法規制ではなく、まず研究と論文などです。
そこが遅れていたら、適切な法の制定も出来ないです。
今の生成AIに何の問題も無い、とは言いません。
問題はあります。
でも、何がどう問題で、どこをどうすればその問題を解消できるか、ブラックボックスじゃなくて見える化できるように、持続的に研究をしなきゃいけないんです。
そして、どのような法規制をするか、適切なアプローチは何か、それを考えなければいけません。

問題点だけピックアップして、簡単に「免許制度にするべきだ」「生成AIは全て規制するべきだ」等と声を上げても、では実際にそれを行った未来の展望が見えていないと、ただ無意味に次世代の子供達に増税や規制などの負担を掛ける事になりかねません。
そうした場合の考え得る限りの可能性を考慮し、慎重に法規制などを考えるべきでしょう。

最後に

さて、ここまでなんだかネガティブな内容だらけになっちゃったので、前向きな視点で生成AIの未来の展望を考えてみましょう。

生成AIを上手く活用することで、生まれる新しい事業および展望される利益や国益は次のようにまとめられます。

  1. 新しい事業分野

    • ヘルスケアと医療

    • 教育

    • クリエイティブ産業

    • 金融サービス

    • エンタープライズソリューション

    • カスタマーサービス

  2. 年間利益の試算:これらの分野で見込まれる合計年間利益は約9.525兆円となります。

  3. 国益への影響

    • 雇用創出

    • 技術革新と競争力向上

    • 社会的利便性の向上

生成AI技術の適切な利用と発展によって、これらの新しい事業や利益を実現し、国全体の経済発展と社会福祉の向上に貢献することが期待されます。

うん、こういう考えの方が良いですよね。
上手く活用できれば、約10兆円規模の利益が見込めるのです。


まぁ、なんだかんだ書きましたが、リスクを適切に管理して、上手く生成AIとつきあっていきましょうね、と言う事で、本記事は終了致します。

※尚、概算等については、仮説的なシナリオに基づいている為、正確性はありません。

それでは、また。

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