こちらの本を読了しました。
著者はクレイア・コンサルティングという組織人事コンサルティングファー出身で、現在は独立してスタートアップ向けに人事制度のコンサルティングをされている方のようです。
こんなに公開していいんだろうかと思うくらい、実践的なナレッジが紹介されていました。スタートアップに限らず制度設計において大切なことが書かれており、とても学びが多かったです。
簡単に内容をまとめました。
スタートアップにおける人事制度の目的
根本的なところはスタートアップだろうが、中小企業だろうが、大企業であろうが、同じではないかと思います。しかしスタートアップの流動性の高さや少人数で経営されていることを踏まえると、「リテンション」の部分が経営リスクに直結してくるのだと理解しました。
スタートアップに人事制度が必要な理由
「これから人事制度を作る」というフェーズのスタートアップは多いでしょうが、山のようにイシューがある中で「なぜ作るのか」を合意しておくことが重要だと思います。制度がないことでの問題点を洗い出しておけるといいかもしれないですね。
人事制度は、スタートアップの採用活動を後押しする
私は転職エージェント時代にスタートアップの採用支援も行っていたこともあり、とても共感できました。
等級の基準は「能力」
等級制度は一般的に能力を基準とした「職能等級制度」、役割を基準とした「役割等級制度」、職務を基準とした「職務等級制度」があるとされています。本書ではスタートアップは「能力」を基準とすべき、と主張されています。
人事にリソースを割けない事情も踏まえると、運用のしやすさの観点でも能力は良さそうです。一方で、年功的な運用になりやすいリスクも孕んでいるため、さらに組織が成長し、安定期に入ったタイミングで役割等級や職務等級への改定を検討するのもアリだと思いました。
人事制度の導入タイミングは、社員数で「20人前後」が目安
早いタイミングで人事制度を導入する3つのメリットとしては、
とされていました。
評価期間の設計
製造系やバイオ系といった、成果が出るのに時間のかかる研究開発型のスタートアップの人事制度では、もっと長い評価期間でも良いのでは?と感じました。戦略や事業環境踏まえた議論の余地はありそうです。
人事制度のトライアル運用
本書ではトライアル運用にはかなりのスペースが割かれて解説されています。走りながら考えないといけないスタートアップには特にフィットする取り組みなのだろうと感じました。
まとめ
スタートアップの経営者、CFO、コーポレートの方はもちろん、人事制度に関わる大企業の人事やコンサルタントにとっても有用な書籍だと思います。
ロジックと言うより、著者の経験ベースで断言される箇所が多いですが、正解のない人事領域で、経験を積んでいるからこそできることだと感じました。