
日本は狭いか、広いか? 車の「利便性と自由」の有難み再発見
■日本は狭いか、広いか?
これは何を基準にするかの地理的な広さと、感覚的な広さにより異なるだろう。感覚的とは、同じ10分でも苦しい時はとても長く感じ、楽しい時はアッという間と感じる違いのことである。
私は、今年の8月、北海道を旅した。北海道だけでもスイスの約2倍あり、その時は広く感じた。一方、9月に太平洋側の東京から、日本海側の富山までの1都5県を走ったが、狭く感じた。

重ねて見ると、容易に比較ができる
ただ共通して感じたのは、「車は便利で自由」ということだった。今回はその旅のエピソートを通じて感じたことを書いてみたい。
■広いと感じた、北海道の旅
この夏、私は北海道のほぼ中央部に近い歌志内(うたしない)市かもい岳スキー場にあるロッジ・「かもいホッフ」に14日間滞在した。
当初10日間の予定だったが、台風の影響で4日間も足止めを食ってしまった。
ならば天から降って湧いたような時間だから、一度は行って見たいと思っていた「襟裳岬」へ行ってみたいと思い、現地在住の斉藤君に提案。「よし、2人で行こう」となったが、さて地図を見ると、襟裳岬は遠い。
その距離片道約300㎞。平均50㎞/hで走っても6時間はかかる。すると往復600㎞。時間は12時間。これを日帰りで行くとなると少々きついが、早朝に出て、1時間交代で運転すれば可能との結論に至った。車はスバルレガシーワゴン2,000㏄のターボ付きだから、力もあるし、乗り心地も良いので長距離にも全く問題ない。
私は職業としてラリーのコース設定をして来たことから、必然的にルートは私が作成。途中に平取町二風(にぶ)谷(だに)というところにアイヌ資料館があるので、そこに立ち寄り、その後襟裳岬へと進む行程とした。
これらも、全ては何時でも自由に使える「自家用車」があるから出来ることで、もし鉄道やバスを使おうとすると、不可能ではないが、時間とお金が掛かる。時間にも縛られる。だからとても日帰りなどは出来ないだろうし、行きたいとも思わなかった。でも自家用車なら可能だ。
我々2人は、早朝に歌志内を出発した。まず驚いたのは、富良野から占冠(しむかっぷ)を目指し237号線に入った時だ。カーナビが「この先、道なりで55㎞進め」という。日高町の海岸線の国道では「100㎞以上道なり」という。関東だとせいぜい「10㎞以上、道なり」というから、およそスケールが違う。
これはカーナビ個体の特性なのか、地域別に表現を変えているのかは分からないが、とにかく北海道は広い。日本の面積の約22%を占める北海道は、面積的にも人口的にも、もはや一つの国とも思える。そこで走りながら「日本は本当に狭いのか?」との思いを再考してみる。
義務教育で、「日本は狭い。国土の7割は山だ。残り3割の平地に人が密集している。だから住宅も狭い」と教えられ、先生の言うことをそのまま信じた。おまけに1973年には「せまい日本 そんなに急いで どこへ行く」という交通標語まで出たものだから、ますます「日本は狭い」というイメージが植え付けられた。
だが1970年後半からヨーロッパを旅するようになって、「待てよ、それは単なる思い込みじゃないのかな?」と思うようになった。ヨーロッパには面積の小さい国が沢山ある。
国連でいうヨーロッパ54か国の内、日本より広いのは5か国だけで、ロシアの45倍は特別としても、フランスは日本約1.5倍、スペインは1.3倍、スェーデンは1.2倍。
そこに日本を当てはめると、日本は6番目の広さになる。
逆にドイツは日本の0.95倍、イタリアは0.8倍、イギリスは0.6倍しかない。だから日本は決して狭くはないのである。


北海道の宗谷岬をデンマークに合わせると、
石垣島島の南西諸島はアフリカのモロッコ沖に達する。
日本は広い。
転じて、今度は北海道をベースに考えると、北海道だけでスイスの2倍も広い。だから今回の日帰り襟裳岬への往復600㎞の旅は、スイス国を東西に一日で往復したことになる。襟裳岬から本拠地の歌志内に帰ったのは夜10:30分だった。こうして14時間半の旅は終わった。

それは、一日でスイス国を左右に往復したことに匹敵する。
こう比較すると、日本は広い。決して狭くはないのである。
「日本は狭いから、住宅も狭い。だからしょうがないよね・・・」と思いがちだが、日本にあるアメリカン・ビレッジの住宅は広い。だからこれは考え方の問題だと思う。
狭い、狭い、と言われ続けると、卑屈になり、視野も狭くなりがちだが、「狭いからしょうがない」の考え方を捨て、視野と心を広く持って思考することが肝要だと、今回の旅で改めて思った。
■狭いと感じた東京~富山の旅
北海道から帰り、今度は郷里の富山に用事があり、9月中旬に愛車のカローラフィルダー4WDで向かった。
その時、北海道の話しとは矛盾するようだが、日本列島横断は、感覚的には決して広くないと思った。

距離は300㎞余りしかなく、カーナビにルートを入れると所用時間は5時間10分と出る。実際には途中で2回ほど休憩や仮眠をとるので、7時間ほどかかるのだが、夜中の12時に出れば朝の7時に着く。するとその日一日(いちにち)が有効に使える。
夜中の12時には太平洋側の東京にいて、朝には日本海側にいると思うと、感覚的には「ちょっと走ればすぐじゃないか」と思うようになった。
昔は高速道路は無かった。そして今回のルートにある上高地と平湯温泉の間にある難所、安房峠は冬季通行止めだから、長野から新潟に出て日本海側の8号線を南西に向かうしかなかった。だから故郷は遠かった。そんなとき金沢の詩人・室生犀星の「故郷は遠くに在りて思うもの」の言葉浮かんだ。
でも今は安房峠の下に安房トンネルが出来、通年通行できるようになった。高速道路も延びた。だから走り続ければ5時間余りで着く。道路の発達により、地形は全く変わっていないのに、狭くなったと感じるのである。
■車の「利便性と自由」の有難み再発見
8月の北海道襟裳岬への旅と、9月の郷里富山への旅で、改めて思ったのは、「車の利便性」と「自由」である。
北海道襟裳岬への旅は、車が無かったら、行こうとは思わなかった。車があったからこそ、行こうと思ったし、途中の二風谷にあるアイヌ資料館にも立ち寄れた。所用時間を計算し、出発時間も自由に決められるから、少々きついが日帰りも出来た。しかも2人で行ったから、帰路の一部高速道路料金を入れても一人当たりの交通費は4,900円で済んだ。
尚、北海道の高速道路には、小泉政権下で始まった国と自治体が道路建設費用を負担する新直轄方式の高速道路があり、そこは永久に無料なのである。新直轄道路は他県にもあるが、とにかくそんな区間がどんどん増えて、ますます移動が便利になることを願っている。
富山行は、毎度一人旅だが、車を使う理由は、現地で6件もの用事を済ますために、①動き回るのに車が必要だからである。②そして安くて、自由が効き、便利だからである。
今回の往復での経費は、ガソリン代が7,500円、通行料が約7.500円(深夜の3割引き含む)、合計15,000円。
仮に新幹線を使うとすると往復だけで約26,000円。飛行機だと約60,000円かかる。さらには時間に縛られる。それに加えて現地でレンタカーが必要となる。
それが自家用車なら、自由に計画を立てられるし、都合の良い時刻に出発、到着ができる。しかも便利で安いとくれば、まさに一石三鳥の「自由の翼」だと思った。